投資信託選びはリスク許容度を考えて みんかぶ編集室 2022.01.17 はじめての投資信託 投資を始める前に必ず考えておきたいのが「リスクの許容範囲」です。 投資というと「投資先を選んでお金を用意していざ準備完了!」というイメージがあるかもしれませんが、自分が耐えられるリスクを超えた投資先を選んでしまうと、大損失を招くことも考えられます。 そこで今回は、思いがけない損失を避けるためにも、自分は「どれくらいの利益を狙い、そのためにはどれくらいの損失を許容できるのか」その見極め方について分かりやすく紹介していきます。 今回は投資初心者でも比較的始めやすい「投資信託」を選ぶという前提で記事を進めていきます。投信運用を考えている方は一度目を通してみると新たな気づきが得られるかもしれません。 目次投資信託の種類は様々!自分のリスク許容度と比較して投資先を決めよう投資信託のリスクリスク許容度の測り方リスク許容度に応じた投資信託の選び方まとめ 投資信託の種類は様々!自分のリスク許容度と比較して投資先を決めよう まず、リスク許容度の説明に入る前に「投資信託」の種類について紹介していきたいと思います。一口に投資信託といってもその種類は様々で「一般社団法人 投資信託協会」の調査データによると、2020年12月末時点で「約6,000本」もの投資信託があるとされています。 これだけの数があれば、ローリスクで安定した運用を目指す投信もあれば、ハイリスクハイリターンで大きな利益を追求する投信があるのも頷けますよね。 一般的に金融商品のリスク分布は以下のような図で表されることが多いです。 みての通り、投資信託は株式よりは、投資先が分散されることもありリスクは抑えられますが、リスクの幅がかなり大きいことが分かりますよね。 こうしたリスクに幅がある投資信託だからこそ、しっかりと各々の投資信託のもつリスクと、自分の運用方針やリスクの許容度としっかり照らし合わせて投信選びをすることが肝要なんです。 ひとことまとめ! 投資信託の種類は6000本以上投資信託ごとに固有のリスクがありその大小は様々 投資信託のリスク 投資信託には多くの種類があり、それぞれリスクが異なるという話を前節ではしてまいりました。本節では、投資信託のリスクについてもう少し深堀りしていこうと思います。 投資のリスクは不確実性のことを指す そもそも、投資における「リスク」とはどんなものを指すのでしょうか。多くの人が投資で損をする可能性=リスクと考えているかもしれませんが、投資における「リスク」はその解釈と少しだけ異なります。 投資でいうリスクとは将来収益の不確実性(ブレ)のことを指します。言い換えれば、価格が上がったり、下がったりするバラツキのことを指します。 いまいちイメージがつかないという方は「振り子」をイメージすると分かりやすいかもしれません。振り子の振れ幅の大きさがリスクで、リスクが大きければ大きくプラスに振れることもあれば、逆に大きくマイナスに振れることもありますよね。 そして振り子がマイナス、つまり「損失」が生じた場合に、どれくらいの振れ幅まで自分が耐えることができるのか、この許容できる範囲のことを「リスク許容度」と言います。 リスク許容度には二つの要因が存在する? リスク許容度というと表面的なお金の損失に対する許容度のイメージが強いかもしれませんが、実はリスク許容度には二つの要因が絡んできます。それは「経済的要因」と「心理的要因」です。 リスク許容度の経済的要因 まずは、イメージのつきやすい経済的要因です。経済的側面には、 資産運用の期間(年齢)家族構成金融資産額収入 などがあります。一般的に、運用期間が長く、金融資産額と収入が多いほど、リスク許容度は大きくなるとされています。特にインデックス投資の場合には、運用期間が長くなるにつれリスクは収束していき元本割れのリスクもかなり小さくなっていくとされています。 自分の運用期間や、普段の家計の支出、金融資産と照らし合わせながらどの程度のリスクまで許容できるのか考えてみましょう。 とはいえ、「リスク許容度を自分で考えるのが難しい、よくわからない」という方も多いと思うので、リスク許容度の測り方に関しては次節「リスク許容度の測り方」で詳しく解説しています。 リスク許容度の心理的要因 続いて、リスク許容度の心理的要因についてです。心理的要因は、自身の置かれている環境や、金銭的状況とは別に、「気になって夜も寝られない、不安になって運用を続けられなくなる」といった正常な運用判断ができない状況に陥ってしまう「評価損の水準」がどの程度なのかということです。 過度にリターンを求めすぎると評価損の大きさに耐えられなくなって、狼狽売りをしてしまい結局損失だけが残るなんてことも投資ではザラにありますから是非とも気をつけておきたいところです。 リスク許容度の測り方 リスク許容度とはどんなことを指すのか理解したところで、次は「リスク許容度の測り方」について説明していきます。 金融の分野においてもAI技術が発展してきているおかげで、現在では「リスク許容度診断ツール」というものがあります。 投信の運用会社や販売金融機関のHPで紹介されている、リスク許容度診断ツールやロボット・アドバイザー(ロボアド)は利用が無料なことが多く、なおかつ簡単な質問に答えていくだけで自分のリスク許容度を測ってくれるためとても便利です。 なかには、リスク許容度に応じて適していると思われる投資信託の銘柄や資産配分(ポートフォリオ※)を自動で組んでくれるものまであります。 ※ポートフォリオとは資産をどの金融商品にどれだけ投資するかという資産配分の割合のことを指します ツールは複数試した方が良い ツールさえあれば簡単にポートフォリオが組めるなら早速使っていざ投信選び!といきたいところですが、一つだけアドバイスがあります。 「複数の診断ツールを使ってみてください。」 経済的側面に関する設問は、どのツールもほぼ同じ内容ですが、心理的側面については、各ツールで、大きく異なります。 投資とは全く関係のない心理テストのような質問が用意されているツールもあれば、運用期間中の損益の水準や、評価額の推移をチャートで示して、選択できるようになっているツールもあります。 こうした背景もあり、別々の診断ツールの結果が同じになるとも限りません。気持ちが前向きの時、後ろ向きのときなど、その時の心理状態で変わってくる可能性も十分にあります。 そのため、いくつかの診断ツールを受けてその結果を自分で見てから運用していく投信を選んでいきましょう。 経済的要因は時間軸により変化する 診断ツールで考慮しておいた方がいいところがあります。それは、経済的側面についてです。 経済的側面に関する設問では、現時点の自分自身について回答したと思います。その結果を覚えておいてください。 次に、10年後、20年後を想定して回答して、その結果を比べてみましょう。時間の経過に伴い、年齢を重ねることになるので、運用期間は短くなっていき、想定される金融資産額や収入も変わってくるはずです。 つまり、リスク許容度の経済的側面は、時間の経過とともに変化する。心理的側面は、設問やその時の心理状態でも変化するということを知っておきましょう。 リスク許容度に応じた投資信託の選び方 それでは最後に、リスク許容度に応じた投資信託の選び方を少し細かく紹介していきます。 リスク許容度に応じて投資商品の方向性を決める まずは、診断ツールなどの結果を元にリスク許容度と自分が運用しようとしている投資商品の特徴を照らし合わせてみましょう。 ①どんなことがあっても、元本の維持を必要とする場合 もし、元本保証は欲しいという場合は、「定期預金や保険」などの元本を守ったうえで運用していく投資商品が好ましいです。 そのため、元本割れのリスクのある投資信託ではなく、定期預金や保険といったジャンルの中から資金の投入先を選ぶと良いでしょう。もしくは、債券のようなリターンは少ないものの何年後かには元本が帰ってくる投資商品の中から選ぶのも一つの手ですね。 しかし、債券だと中には元本保証のないものもあるので注意しましょう。 ②ある程度のリスクは容認し、債券以上の高い収益を目指す場合 債券よりもリスクは許容できるけど株式ほどハイリスクなものは選びたくない、こういう場合は「インデックス型」の投信やさまざまな投資商品に投資先を分散させている「資産分散型」の投資信託が適していると考えられます。 インデックス型というのは、日経平均やS&P500といった株式指数(インデックス)に連動するように設定された投信のことを指します。 一時的に含み損を抱えることもありますが、20年以上の長いスパンでの投資であればリターンがプラスに収束する傾向があります。これは「経済は成長し続ける」という考えを裏付けているように思われますね。 また、インデックス型のように株式だけでなく「株式」「債券」「金などの安全資産」に分散投資をするような投信もあるので、リスク許容度を吟味しながら自分の最適解を探ってみてください。 ③より高いリスクを許容し、積極的に高い収益を目指す場合 インデックス型や資産分散型よりも高いリスクを許容して、高いリターンを望むという場合には、「アクティブ型」の投資信託が良いかもしれません。 アクティブ型というのは、先述したインデックスよりも高いリターンを実現するために、投信の運用者である「ファンドマネージャー」が適宜投資先を選定して投信運用を行っていくものになります。 そのため、ファンドマネージャーが優秀であればインデックスよりも高いリターンが期待できます。しかし、その反面、構成銘柄の株価が不振だと大きくマイナスになってしまうことがあるため注意が必要です。 短期的にある程度資産を増やしたい方はチャレンジしてみてもいいですね。その際は、投資信託の「純資産総額」が30億円程度はあるか、投資信託の運用期限である「償還期間」は極端に短くないかなどはチェックしておきたいところですね。 時間軸による経済的要因の変化を先回りする 追加で、運用した資産の使い道・使う時期に焦点をあてて考えた場合も簡単に紹介しておきます。 ① 日常使う生活資金、使う時期が数年以内の場合 リスクは極力とらず預貯金や元本保証のある貯蓄型の保険などを選ぶと良いでしょう。 ② 使う計画あるが時期5年以上先、または未定 こういう場合は、 計画的にリスクをとり預貯金に回すお金の何%はインデックス型の投資信託や債券などに投資をしてみると良いかと思います。ただ、使うことが確定しているのであればあまりハイリスクな投信は避けた方が無難ですね。 ③ 将来のための資産形成 直近ではお金を使う予定はなく、10年後、20年後の将来のための資産形成であればある程度のリスクをとりつつ運用していくのがおすすめです。 特に米国のインデックスなどは5年などの短期的なリターンでは上下の振れ幅が大きいですが、スパンを広げて10年、20年というスパンで見ればプラスリターンであることが多いです。 ですから、米国株=リスク高いから資産運用には向いていないと思わずに、先進国に投資をするような投資信託を選んで運用してみるのもありだと思います。 まとめ 今回は、リスク許容度という少し難しいテーマでしたがご理解いただけましたでしょうか。幸い現在は簡易的なリスク許容度診断ツールなどが無料で使える環境にあるので、こうしたツールをうまく活用しながら納得のいく投資信託を探してみてはいかがでしょうか。