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川口一晃 伝説のプロが明かす「投資信託の時代」 (2)

コラム
配信元: みんかぶ
投稿:2018/03/09 21:25
川口一晃 伝説のプロが明かす「投資信託の時代」 (2)

「疾風怒濤の“評価機関”誕生秘話」


●全ては一つの通達から始まった

 その連絡は突然にもたらされた。

 「今まで日々配信してきた追加型投信の基準価額のデータですが、今月いっぱいで終了させていただきます」。

 当時ブルームバーグでは、毎日、投信協会よりFAXで追加型投信の基準価額のデータを入手し、そのデータをニューヨークで入力していた。そのデータが手に入らなくなる。しかも、その通達の少し前には、来たるべき投信の時代に合わせてファンド関連のコンテンツを充実させていこう、と社内でプロジェクトが走り出したばかりだった。その責任者が筆者であった。慌てて投信協会に電話を入れデータ提供の継続を頼むのだが、「決まったことなので」の一点張り。そこで、イギリス人の支店長とともに投信協会に乗り込んだ。

 しかし、「既に決まったことで、御社にだけ今まで通りデータを提供することはできません。もし、日々のファンドデータを取りたいのであれば、投信の評価機関になってください。これからは投信の評価機関にのみデータを出していくことになります」と説明を受けた。その瞬間である。支店長は「わかりました。私たちはすぐに投信の評価機関になります。今日、書類を提出します!」と啖呵を切ったのだ。

 慌てたのは私だ。「支店長、今日は無理です」。「だったら、いつ出せる?」と畳み掛けてくる支店長。勢いというのは怖ろしいもので、私はその場で「明日であれば…」と答えてしまった。次の瞬間、支店長は投信協会の担当者に向かい、「ブルームバーグは明日、投信の評価機関の申請をいたします」と笑顔で告げていた。

 

●立ちはだかる2つの壁

 その日の午後から翌日までは時間の感覚が麻痺したかの如く、“痺れる1日”を過ごした記憶が残っている。投信協会と連絡を取りながら、必要な書類、データを揃えていく。特に、投信の評価機関になるためには重要なポイントが2つある。

 一つは「どのように評価をするのか」である。つまり、どのような計算式を使い、その評価をどのように表示するのか、ということだ。そこで採用したのが多くの評価機関が採用している「シャープの測度」だった。このシャープの測度については、次回で詳しく紹介したいと思う。

 そして、もう一つが「分類」だ。ところが、この分類の作業が大変なのである。なぜなら、評価というのは同じカテゴリーの中で行われる。株式投信なのか、公社債投信なのか。また、国内株式なのか、グローバル型なのか。さらにグローバル型であれば、日本株は含むのか否か等々…。つまり、上場株式数よりも数の多いファンドを、整合性を維持しながら仕分けしていかなくてはならないのだ。気の遠くなるような作業である。

 この分類については各運用会社からの「難しい作業であることはわかるが、ブルームバーグ独自の合理的な分類に期待したい」という要望もあり、ファンドを分析するコンテンツを作るうえで最も時間を要する作業となった。

 

●プロをも唸らせたこだわりの分類

 投信協会とのミーティングの翌日に投信の評価機関の認可は下りなかったものの、その後およそ1週間で認可がおり、ブルームバーグは全国で5番目から7番目の評価機関として認可を得た(3社の同時認定)。

 ところで、この分類を行っていた際の興味深いエピソードが残っている。ある時、一人の営業担当者が筆者のところに怒鳴り込んできた。「この債券型のファンドがなぜ『株式型投信』に分類されているんですか! この分類は間違っている」というのだ。彼は、ブルームバーグに入社する前は大手の証券会社で個人営業、そして法人営業などを15年以上も経験してきたベテランである。

 私は静かな口調でゆっくりと答えた。「公社債投信というのは、株式を一切入れることのできないファンドのことです。いくら債券しか保有していないファンドでも、目論見書に『転換社債を一時的にせよ転換して株式として保有できる』という文言が書かれている以上、それは株式投信に分類されるのです」と。彼は顔を真っ赤にして無言でに自分の席へと戻って行った。

 

川口 一晃(かわぐち かずあき)
ブルームバーグL.P、プルデンシャルFA証券などを経て、2004年に「オフィスKAZ」代表取締役に就任。銀行系証券会社で11年間ファンドマネージャーを務めた後、ブルームバーグL.Pでは、アプリケーションスペシャリストとして投信の評価システムを開発し、ブルームバーグL.Pを投信の評価機関にする。現在、テレビ・ラジオ出演、雑誌・書籍への執筆、講演など幅広く活躍。

配信元:みんかぶ

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