コラム投資信託から始めるベトナム投資―シニアの夢の道標に―木村佳子

  • 0.5x
  • 1x
  • 1.5x
  • 2x

2018/03/29 10:55

 投資信託は注文建築の家と同じように多種多様で、株式投資より難しいものだ、という見方があります。実際、投資してみると販売手数料が無料のものがある一方、高いものもあります。そして、保有中は信託報酬というコストもありますから、配当や優待がもらえる株式とは違って「なんだか難しいものだなあ」と感じる人もいると思います。

 しかし、投資信託ならではの良さもあります。今回はそんな例の一つとしてこんなエピソードをお届けしたいと思います。

●シニアに多いベトナム投資ニーズ

 「ベトナムに投資したいのですが、どう思いますか?」――何度となく、個人投資家さんから、そのような質問を受けます。質問される方はすでに日本株でそこそこ儲けてはいるものの、今一つ、欲望を満たし切れていない印象です。だから、新興国で一つドカンと儲けたい、ということなのでしょう。

 その対象として「もはや中国では遅すぎるようだし……」と敬遠し、「どこかないか?」とあれこれ調べるうち、「ベトナムがいいのではないか」と考えを巡らせるようです。

 かつて立派な会社に勤め、今は時間やお金に恵まれて悠々自適の身。「退職資金で100歳人生に備える資産運用を」という投資家さんがベトナム投資に興味を持たれているケースが多かったように思います。

 さて、どう回答したものでしょうか?

●投資の原理原則

 「わからないものには投資しない」という投資の原理原則からいえば、「ベトナムに詳しくないのなら、やめておきましょう」と答えるのが正解です。

 ただし、投資家自身が気になってしようがない場合はむげに否定できません。と言うのも欲しいものを買わないのは精神衛生上、よくないからです。

 ご本人は国内の株式市場や世界のマーケットで「投資」という名の「消費」を楽しく実践されているのですから、その楽しみを奪うのはいかがなものかと逡巡します。

 加えて、「どうしてもこの投資対象を買いたい!」という個人投資家の熱く、強い思いを専門家が安易に「およしなさい」と言うべきではないという経験則もあります。

 個人投資家が自分で調べ上げたデータは専門家以上に詳細で的を射たものであることも多く、そんな投資家がピンポイントで「これこそ有望だ」と絞り込んだ対象に専門家が的確な判断を下せるかというと難しいものなのです。

 だから、個人投資家がどうしても買いたい対象が見つかった場合は「勝負には勝ち負けがありますよ。勝ちにいくのはご自分であって、誰も代わりに勝ちには行けません」ということで、「ご自身の納得のいくようになさったらいい」と言うのが正解になります。

●夢太りしたカモは喰われる
 
 しかし、おしなべて「ベトナムへの投資はどうですか?」と質問する投資家の多くは、買う前提ありきで「専門家から大丈夫だというお墨付きをもらいたい」という、背中を押してもらうきっかけを探している方が多いようです。

 その場合は、その程度の見通しでふわふわと投資を考えているようでは「危ないですよ」ということになります。

 こういう人はカモになりやすいから注意してほしいと思います。「市場」には多くの善男善女のユーフォリア(euphoria)=「根拠のない過度の幸福感」が必要で、その幸福感こそが、「高値」を形成する原資になります。そして、多くの人が幸せな気持ちを覚える高値状態は「ほほえみと共に去っていく」ことになります。

 だから、退職金で手元資金は潤沢、かつローンのない自宅住まい、年金や家賃収入が多い結構な身分でさらに新興国投資にも爪を伸ばしたいと考える余裕こそが「ふわふわした夢心地」であり、「この先もいいことが待ち受けているような気がしている」に過ぎない状態なのです。「新興国にでも投資すればもっと儲かるのではないか?」と個人投資家が思い始める時、「市場」はすでに警戒すべき高値圏にあることが多いのです。

 夢太りしたカモはいずれ喰われる運命にあります。このような、大量の夢太りしたカモが出現したとき、市場は高値圏、すなわち狩り場というのがこれまでの「市場の法則」なのです。

●新興国の株から学んだ法則

 さて、あまりにたくさんの方から「ベトナム投資はどうか?」と聞かれるので、実際に現地の証券取引所や証券会社に行ってみました。そして、身銭を切らねばわからないという考えの元、「取材費」として自己資金を投入し、実験工房としてベトナム株の動きを観察することにしました。それから数年。さて、その結果、どんなアドバイスができるようになったでしょうか?

 結論として、個人投資家が個別のベトナム株に投資するのは難しいと考えます。その理由ですが、決算資料が国際郵便で送られてきますが、ほとんどがベトナム語で書かれているため、何が記載されているかさっぱりわかりません。せめて英語なら単語からおおよその判別はできるかもしれませんが、ベトナム語だとそれもままなりません。

 また、日本とは違って共産党体制下での市場経済の導入ですので、国営企業を民営化し、株式上場で資本を集めた挙句、突如として非上場化する企業があります。こうした株を保有していると、個人投資家は寝耳に水で、持ち株を換金するすべもありません。現地に確認に行ったところでどうにもなりませんし、渡航に時間もお金もかかります。

 現地通貨はベトナムドン。日本円との交換レートは2018年3月27日時点で1日本円=215.86ベトナム ドン。桁が違うため、単純な買い物ですら、往々にして訳が分からなくなります。

 ベトナム料理はおいしいし、現地の人は若く、女性は美しい。しかし、それと投資とはまったくの別物です。

 もし、ベトナムにどうしても投資したいのなら、それこそ投資信託でその夢をかなえることをお勧めします。ベトナム・ファンドならベトナム語が分かる専門家が決算書を読み、買っていい対象を精査して運用しています。その手間を考えれば投信購入時の手数料や信託報酬は安いものではないでしょうか。

●さまざまなベトナム・ファンドがある

 ベトナム・ファンドは国内外の運用会社で設定されており、ベトナムや世界の証券取引所に上場されているベトナム関連企業に分散投資しているものが多いですね。成長株に特化したタイプのものもあります。どれに投資していいかわからない場合は、レーティングなどで外部評価が高いものを選択するといいでしょう。

 言葉や情報を得られにくいなどの点で個別銘柄運用が難しい国への投資は名の通った運用会社の投資信託が圧倒的に有利といえます。

 投資信託を保有するもう一つのメリットは、配布される運用報告書を読むことでプロの投資対象銘柄やベトナムの投資環境に詳しくなれる点です。どうしても個別株狙いがしたい場合でも、しっかり情報をインプットしてからの方が後悔は少ないと思います。

 ちなみに、私は某証券会社で実験的にベトナム・ファンドを購入してみましたが、順調に利益が出ています。

 投資に夢ありき。しかし、その前に自分の裁量に見合った投資をする見識が大切だと思います。

 

木村 佳子(きむら よしこ)
ラジオ日経の個人投資家向け経済情報番組のキャスターを長年務め、生活者の資産運用に強いエコノミスト、女性初の株式評論家としてのキャリアを積む。日本取引所グルーブ東証アカデミーのフェローを経て女性講座のグランドマスターとして東証女子株会や基調講演に登壇。現在、企業と投資家をつなぐ特定非営利法人・日本IRプランナーズ協会理事長として「いいIRの日」を主宰。日本FP協会・CFP、一級FP技能士、国際テクニカルアナリスト連盟認定MFTA。早稲田大学大学院修了(専門職MBA)
 

出所:みんかぶ

みんかぶ投信 使い方

お知らせ > 一覧はこちら

  • 現在お知らせはありません。

今日の市況 > 一覧


ページTOPへ