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    2022/07/08
    シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第27回「世界120位の日本のジェンダーギャップ改善の処方箋」   日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。   第27回のテーマは「世界120位の日本のジェンダーギャップ改善の処方箋」です。     謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。   世界経済フォーラムは2006年から各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)を発表しています。最新の2021年に公表されたレポートによると日本の総合スコアは0.656で、156か国中120位というかなりの下位でした。この総合スコアは、「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等で、1が完全平等を示しています。   ちなみに1位はアイスランド(同0.892)、2位はフィンランド(同0.861)、3位はノルウェー(同0.849)という北欧国でした。人口が少なく、人口密度も日本と異なり、社会、産業、文化の違いがあることが背景にあるかもしれません。ただ確かに東アジアの総合スコアは低い傾向がありますが、102位の韓国(同0.687)、107位の中国(同0.682)と比べても日本の順位はかなり劣ります。日本の順位は119 位アンゴラ(0.657)と121位シエラレオネ(0.655)の間です。   日本と韓国の社会・文化は同じような男尊女卑的な傾向がありそうですが、当初の2006年に比べ現在の韓国の総合スコアは+0.071と改善。しかし日本は同期間で+0.011と改善がほぼ観測できません。一方、上位のアイスランドの改善(同+0.111)は群を抜き、フィンランド(同+0.065)とノルウェー(同+0.050)も顕著に改善がみられます。(中国は同+0.026)   分類別に検証すると「経済」では、日本のスコアは0.604で117位であり、総合スコアとほぼ同水準です。安倍政権時代に女性活躍が政策方針として設けられ、多くの企業は管理職比率30%を目指す等の目標を掲げました。女性の社外取締役候補は引く手数多で、有望者が集中的に複数の企業の役員を務める事態になっています。こうした状況を背景に、2006年の「経済」スコアの0.545と比べると現在は+0.059改善しています。   しかし、2006年当時の日本の「経済」スコアのランキング83位でした。世界の「経済」分野におけるジェンダーギャップの改善の方が日本よりスピード感があったのです。ちなみに、韓国の「経済」スコアは、0.586の123位であり、2006年は0.481の96位なので、日本の方が勝ります。しかし、スコアの改善ペースを比べると、このままでは日本が追い越されるのは時間の問題です。「経済」分野で1位は北欧国ではなく、ラオス(0.915)です。   一方、日本の「教育」の男女平等スコアは0.983であり、かなり優秀です。ただ、順位は92位に留まります。原因は「教育」スコアが1.00の国々が26か国もあるからです。米国、カナダ、フランスという先進国だけではなくアルゼンチン等も含まれます。英国(0.999)、ドイツ(0.997)、イタリア(0.997)と比べると、実はG7で日本は「教育」の分野で最下位です。   では、「健康」の分野はどうでしょうか。日本のスコアは0.973で65位です。1位のスコアは0.980ですが、ブラジル、ミャンマーなど新興国を含む29か国です。健康における男女不平等であり絶対的水準でないので、医療へのアクセスや平均寿命が日本より低い国であっても、ジェンダーギャップが生じていない国々が最上位に入っているのでしょう。同じ先進国である米国(同0.970)87位や英国(同0.966)110位と比べると、やはり日本は絶対的な水準でも男女平等性においても健康大国であると誇れます。   このように、日本のジェンダーギャップは「経済」では改善が必要とされ、「教育」はまずまず、「健康」は優秀という実態が見えてきます。では、総合スコアの順位を徹底的に下げている要因は何か。それは「政治」です。この分野で1位はアイスランド(0.760)、2位はフィンランド(0.669)、3位はノルウェー(0.640)であり、総合スコアの最上位3国のランキングに直に影響しているということが見えてきます。   日本以外のG7国は、ドイツ(0.509)10位、フランス(0.457)20位、英国(0.419)23位、米国(0.329)37位、イタリア(0.313)41位ですが、日本は、なんと桁違いの0.061で147位です。韓国(0.214)68位、中国(0.118)118位なので、東アジアでも最下位です。「政治」スコアが韓国と肩を並べるだけで、日本のジェンダーギャップの総合スコアは、かなり改善しますし、G7国並みになれば総合ランキング上位が視野に入ってくると言えるでしょう。   2006年の時点での「政治」スコアは日本(0.067)83位、韓国(0.067)84位と同水準でした。ところが、2021年には韓国(0.214)68位で差が広まりました。2013年~2016年のパク・クネ政権により「政治」における「首脳」スコアの改善が理由でありましょう。日本の「政治」「首脳」スコアの0.000と比べ、韓国は0.104です。ただ、「議会」スコア(日本0.110 韓国0.235)、「閣僚」スコア(日本0.111、韓国0.385)でもかなりの差が目立ちます。   「政治」分野で最上位3位は北欧国ですが、6位にルワンダが現れます。下院で女性が過半数を占めた世界初の国です。(現在は61%、上院は38%)。1990年代の国内紛争による大虐殺により、2003年に設置された新憲法(2015年に改正)では男女平等、女性の人権を担保するために全ての意思決定機関において女性比率30%のクオータ制が保障されているからです。「政治」分野において「議会」スコア(1.000)と「閣僚」スコア(1.000)だけであれば、圧倒的な1位ですが、2000年に就任したポール・カガメの政権が継続しているため、「首脳」スコアが64位(0.015)で、「政治」スコアではトップの座を北欧国に譲っています。21世紀のルワンダは近代化が顕著に進み「アフリカの奇跡」と言われている国です。   さて、かつて「アジアの奇跡」であった日本では、7月10日に投開票される参院選において545人が立候補し、このうち女性候補者数は過去最多の181人、全候補者に占める女性候補者の割合も過去最高の33%になりました。2020年に日本政府は「第五次男女共同参画基本計画」を閣議決定し、「2025年までに国政選挙の候補者に占める女性割合を35%」とする目標を掲げています。   ただ、現時点では肝心の与党がこの割合に達していません。自民党:19女性/82前候補(23.1%)、公明党:4/24(16.6%)、立憲民主党:26/51(50.9%)、日本維新の会:14/46  (30.4%)、国民民主党:9/22(40.9%)。「新しい資本主義」の実行計画では、男女賃金ギャップを埋めるために企業の情報開示を促しましたが、日本では「新しい民主主義」も必要のようです。   現在の世界情勢において参院選後には憲法改正への議論も高まるかもしれません。自民党は現在、女性議員候補30%のクオータ制に反対しているようですが、候補ベースのみならず、就任ベースでも同クオータ制を設けることを合わせて討議すべきではないでしょうか。有権者として、少なくとも今回の参院選で迷った際には、女性候補に票を投じるべきありましょう。   付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」 (『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。https://bit.ly/3uM0qwl)   「論語と算盤」偉人とその母   果たしてしからば女子に対する旧来の侮蔑的観念を除却し、 女子も男子同様国民としての才能智徳を与え、 共に相助けて事を為さしめたならば、 従来五千万の国民中二千五百万人しか用をなさかった者が、 さらに二千五百万人を活用せしめる事となるではないか。   当時、女子教育について栄一が語った内容であったと思いますが、現在の文脈では、「同様国民として才能智徳に加え、機会も与えるべき」ということになるでしょう。男女の結果が平等である必要ないと思いますが、機会は平等であるべきです。クオータ制が、機会平等へつながるかについては色々考えがあると思います。だからこそ、テーブルに乗せて議論すべき内容でありましょう。   「渋沢栄一訓言集」女子と家庭   社会の組織上、女子はその一半の責を負って 立つものだから、男子同様重んずべきものである。   男子には男子の特性がある。 女子には女子の特性がある。   しこうしてこれらの性格を完全に 発揮せしむるには、教育の力に持たねばならない。   ダイバーシティとは、女性が男性と同じように働くという画一化ではありません。同じ仕事に就いても、それぞれの特性が活かせる「と」の力を発揮するのがダイバーシティです。また、栄一が示すように「教育の力」は重要ですが、先日にナビゲーターとして務めたUTokyo Future TVでは、東大の教員・研究員・学生の女性比率を30%に掲げているものの、達成できていない現状が浮かび上がってきました。特に理科系女子を増やすことが課題のようです。背景に、まだ、社会的な、家庭的な「女性らしさ」という先入観が未だにあるようで改善が必要です。 https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/events/z0802_00024.html 謹白   ❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑ 1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。 現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。 当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。 渋澤 健 【著者紹介】 渋澤 健 シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。   【関連記事】 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第26回「新しい資本主義のインパクト」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第25回「変化を恐れない“真面目さ”が日本の価値になる」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第24回「AIにも動物にもない人間力」”Why” ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第23回「1人ひとりの未来を信じる力で世界はきっと動く」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第22回「日本は世界に門を開け!」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第21回「純粋な気持ちで働ける日本企業へ」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第20回「良い会社は「人」に投資する会社」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第19回「「新しい資本主義」で日本の改革を導く!」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第18回「「新しい日本型資本主義」には日銀ETFの現物化」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第17回「これからの日本の天命とは?」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第16回「地球温暖化という世界的なチャレンジで日本もメダル獲得へ」 ❑シブサワ・レター 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