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    2021/01/15
    シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第9回「「DX」と「グリーン」が新しい時代を切り拓く!」 日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。   第9回のテーマは「「DX」と「グリーン」が新しい時代を拓く!」です。         謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。   日本には明治維新以降繰り返してきた「30年の破壊」と「30年の繁栄」という周期性があり、現在は新しい時代に入り始めていると思っています。 史上最大級のパンデミックはいずれ終息します。その時日本はどのように生まれ変わっているのか。   菅政権が成長戦略として打ち上げたDX(デジタル・トランスフォーメーション)および「2050年カーボン・ニュートラル宣言」が社会にどう浸透するかが新しい時代の試金石となるでしょう。   DXの本質は、実は「デジタル化」そのものではありません。情報をデジタル化すること(D)とともに、それを活用するマインドセット(X)と一体となることが重要です。 仮に情報がデジタル化されていても、既得権益がその活用を阻んで抵抗するようでは、DXが日本の新しい時代を切り開くことはできません。   そういう意味では、私たちが期待すべきDXとは実は「デジタル・トランスフォーメーション」ではなく、「デモグラフィック・トランスフォーメーション」かもしれません。   2020年以降の日本の人口動態推計によると、全国で世代交代が日本社会が今まで体験したことない速度と規模で進みます。 実は、このように社会の新陳代謝が著しく高まることが、これからの「繁栄の時代」のドライバーとなる可能性を示唆しています。   日本を新しい時代へとトランスフォーメーションさせる主役は、まさに「デジタル・ネイティブ」と言われている若手です。 カーボン・ニュートラルが目標とされている2050年に、現在の30代は60代になっています。20代は50代、10代は40代です。 この世代が、日本の今後30年間における社会の主役であることは明らかです。   これからの日本の少子高齢化社会において彼らは少数であるからこそ、自分たちの新しい時代の価値観に基づく創造力を活かして、のびのびと仕事ができるという逆の発想の側面もあるはずです。   私は今年還暦を迎えますが、まだこれから30年間は働くつもりです。 日本が今後の30年に再び「繁栄の時代」を築くためには、健康で意欲的に働いている高齢者層の存在が不可欠です。しかし、過去の日本社会の「繁栄」を体験している我々世代は、時代のトランスフォーメーションの抵抗勢力となってはならない。   むしろ今までの時代の成功体験の本質的な意味を、次世代の成功体験へとつなげる「トランスレーション」の役割があります。   企業の存在意義は「利益の最大化」だという、これまでの成功体験の延長上線では、「脱炭素」は企業にとっての費用にほかなりません。 しかし現在は、企業の存在意義とは「価値の最大化」へと思考が進化している過程だと思います。その「価値」とは、単年度の短期的な価値のみに囚われることなく、世代を超える持続可能なウェルビーイングな価値創造でありましょう。   「脱炭素社会は世代間闘争」という声も聞こえてきます。 しかし、脱炭素社会とは「か」ではなく、「と」の関係であることが本質です。世代間の体験、智恵、意欲を合わせなければ、新しい価値の成長を築くことはできません。   素人ながら、2050年カーボン・ニュートラルを実現させるためには三つの矢が必要だと考えます。1)カーボン排出抑制の技術、2)カーボン・リサイクルの技術、そして3)カーボン・オフセットの制度です。   1)と2)のコストダウンには、開発研究のための投資資金と時間がかかりますが、ここがまさに新たな成長の可能性がある領域です。 しかし、現状の技術を前提とすると3)のカーボン・オフセットについては、カーボンを吸収する事業から排出する事業へと、排出権を移転できる「カーボン・クレジット」(排出権取引)を、国内に留まることなく世界で通用する制度を設計することが急務でしょう。   これから30年、「グリーン」が世界各国の競争力の源になることは間違いありません。   トランプ政権と異なり、バイデン新政権では「グリーン」が米国の経済政策のど真ん中に入ってくると思います。 経済政策を安全保障、社会保障などの側面も含めて大統領に助言するアメリカ合衆国国家経済会議(NEC)の委員長という重要ポストに42歳の若手、ブライアン・ディーズが任命されたことが目を惹きました。   前職は世界最大手の運用会社の一つであるブラックロックのサステナビリティ投資の責任者で、その前の30代ではオバマ政権のNECで温暖化を担当する次官でした。 年齢的には若手かもしれませんが、温暖化・経済政策のベテランです。かなりのスピード感で米国は「グリーン」へと舵を切るでしょうから、日本も遅れをとるわけにはいきません。   2025年の大阪・関西万博で日本が描く「いのち輝く未来社会のデザイン」に「グリーン」は不可欠です。 現状からは大きな飛躍かもしれませんが、日本が「グリーン大国」であることを誇ることができる世界舞台でもあります。現在では非現実的に見えても、ムーンショットで飛躍した未来図からのバックキャスティングという発想で実現させるためには、このタイミングを逃してはなりません。   特にグリーン分野では多様な専門性を持つ多くの若手を重要ポストに登用することが重要ではないでしょうか。なぜなら、全く新たな分野において、若手がこれからの社会の主役として実績を数多くつくる必要があるからです。 DX(デモグラフィック・トランスフォーメーション)という世代交代とカーボン・ニュートラルという飛躍が、これからの日本の繁栄の時代への扉を開くことになるでしょう。   □ ■ 付録:「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □ (『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。http://www.shibusawa-co.jp/opencollege/main.htm)     『論語と算盤』勇猛心の養成法   要するに我が国今日の状態は、     姑息なる考をもって、  従来の事業を謹直に継承して足れり     とすべき時代ではない。   人々は今日の一日の過ごし方は昨日の過ごし方と同じであって、明日の過ごし方は今日の過ごし方と同じであることに甘んじ、基本的に変化を好みません。 しかし、時代は必ず変化し続けます。したがって、私たちの生活の過ごし方を持続させるには、時代の変化に対応しなければならない。 若い世代は、常に新しい時代に適応する能力を持っています。だからこそ、日本で優先すべき事項はDX(デモグラフィック・トランスフォーメーション)なのです。  『渋沢栄一 訓言集』一言集      前途の遼遠なる事物は、  ゆっくり急いで努めねばならない。   2050年までカーボン・ニュートラルの日本社会は、はるかに遠いところにあります。だからこそ、今から、確実に一歩一歩と前進して、数多くの「前例」をつくって行くことが大事なのです。                         謹白                                 ❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑ 1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。 現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。 当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。 渋澤 健   【著者紹介】 渋澤 健 シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。     【関連記事】 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第8回「10兆円研究支援Fの意義」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第7回「良い日本のための3つのNGワード」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第6回「令和時代の未来は "メイド・ウィズ・ジャパン"」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第5回「なぜ、バフェット氏が日本株を買ったのか?」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第4回「"わかんない”は好奇心のスイッチ」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第3回「日本はSDGsでプレゼンスを高めるべき」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第2回「アフターコロナ 世界での日本の役割 」 ❑シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第1回「新型コロナ、最大のリスクは?」     ...続きを読む
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