注目高まるESG*投資
*ESG・・・環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)
ESG投資に関するニュースは、毎日のように目にするようになってきました。
ESGファンドについても、昨年からファンド数、純資産残高ともに増加傾向が顕著になっています。
ESGファンドの投資対象をみると、海外株式が中心であり、日本株を投資対象とするファンドは多くありません。
環境関連の株式投資テーマは、非常に注目度の高いテーマです。みんかぶサイトの人気テーマを見ると「再生可能エネルギー」、「脱炭素」、「蓄電池」、「電気自動車関連」、「水素」といったテーマが上位にランクされています。
グローバル企業も良いですが、日本企業にも、ESG、特にE(環境)分野では、活躍が期待される企業が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、現時点では少数派である日本株ESGファンドに注目して、どんな企業がどんなプロセスを経て選ばれているのか?日本株は、ESGファンドの本命となるか?について考えてみたいと思います。
日本株ESGファンド「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」
注目したのは、8月3日に設定、運用を開始した、「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」の銘柄選定プロセスです。
「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」のマザーファンドである「社会的価値創造企業マザーファンド」は、すでに5年以上の運用実績があり、市場平均を大きく上回る投資成果を上げてきました。
「社会的価値創造企業マザーファンド」のパフォーマンス
- 期間:2016年3月末(マザーファンド設定月末)~2021年7月末、月次
- マザーファンド:社会的価値創造企業マザーファンド
- TOPIX:東証株価指数(配当込み)
- 日本株ESG指数:FTSE ブロッサム・ジャパン・インデックス(配当込み)
- 上記指数は、ファンドのベンチマークではありません。
- 出所:ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成
- FTSE ブロッサム・ジャパン・インデックスは、FTSE All Cap Japan Indexの中から、業種偏重を最小限に抑制しつつ、ESGの実践に関する明確な基準に基づいて選定されたESG対応の優れた日本企業のパフォーマンスを表す指数です。
- 上記はファンドが投資対象とする「社会的価値創造企業マザーファンド」(2016年3月25日設定)の実績です。
過去の運用実績であり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
マザーファンドの組入れ銘柄数は約40銘柄です。
組入れ上位10銘柄は、以下のような顔ぶれとなっています。
運用会社である野村アセットマネジメント様に、上記銘柄がどの様なプロセスを経て、絞り込まれていったのかを伺いました。
お答えいただいたのは、野村アセットマネジメント株式会社 プロダクト・マネジメント部 シニア・プロダクト・マネージャー 冨田 充亮様です。
「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」の投資ユニバースと投資候補銘柄
投資ユニバースは、ESGスコアを付与している約300~400銘柄
弊社のESGスコアは、企業調査アナリストとESGスペシャリストによる総合評価となります。
ESG評価項目は大きく分けて4項目です。
- 出所:野村アセットマネジメント 責任投資レポート2020
2015年12月に企業調査部の中に、責任投資グループを設置し、2016年4月に独立した責任投資調査部になりました。その責任投資調査部にESGスペシャリストを配置しています。
一般の企業調査アナリストは、財務系のデータを調査・分析しているのに対し、ESGスペシャリストは、会社方針や取組み等のデータが中心になります。
『SDGsへの貢献度』と『現金を稼ぐ力=CFROIC*』に注目
ESGに取り組む企業はたくさんありますが、利益を上げられなければ、継続性はありません。ESGに取り組んでも、その結果、企業利益が赤字、さらには(極端な場合)企業経営が傾いたら、それこそ、本末転倒です。
ESGへの取り組み、もしくは、社会貢献を事業としてしっかりと確立させて、そこから利益を上げている企業を選ぶため、『SDGsへの貢献度』と『現金を稼ぐ力』に注目して投資候補銘柄を絞り込んでいます。
- CFROIC(Cash Flow Return On Invested Capital)(投下資本キャッシュフロー利益率)
『SDGsへの貢献度』=SDGs評価が高い企業
SDGs評価は、SDGsの各目標達成に貢献する事業の構成割合と、その事業の競争力を評価するもので、SDGsへの貢献度が高い事業分野を有し、その分野で強い競争力を有する企業が、SDGs評価の高い企業となります。
SDGsの目標達成に貢献する事業を有していても、その割合が低い企業は評価対象とはなりません。
また、差別化された競争力がある事業を有する企業でも、その事業がSDGsの達成に貢献するものでなければSDGs評価の対象とはなりません。
前述のCFROICによる評価を合わせると、投資候補銘柄は、60~70銘柄まで絞り込まれます。
『現金を稼ぐ力』=CFROICが高い企業
CFROICは、いくらの資本を使っていくら現金を稼いだかを示すもので、キャッシュフローを投下資本で割って算出します。この指標は、企業の長期的な事業継続性を定量評価するものであり、「会社全体での現金を稼ぐ力」、更には真の経営力を表します。
SDGsへの取り組み、一定以上の収益力の持続性を評価した企業を投資対象として採用します。
確信度の高い銘柄によるポートフォリオ構築
投資候補銘柄の中から、さらなるファンダメンタルズ分析を実施し、確信度の高い銘柄でポートフォリオを構築します。
ここでは、ESGへの取り組み、企業理念や事業の持続性・革新性*、バリュエーションなどの観点から組入銘柄を選定し、市場動向、流動性等を勘案し、投資候補銘柄60~70銘柄を、40銘柄程度まで更に絞り込みます。
- 持続性(社会要請に対応した長期視点での経営)、革新性(社会的課題解決に向けた革新的な取り組み)
現在、組み入れられているのは、以上のような厳しいプロセスを経て、厳選された銘柄群となります。
従って、社会貢献を事業としてしっかりと確立させて、そこから利益を上げ、今後も、持続的な利益成長を実現できる企業と考えます。
マザーファンドの組入上位10銘柄のESGへの取り組み
2021年7月末
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銘柄名(業種名) |
銘柄解説/ESGへの取り組み |
1 |
キーエンス
(電気機器) |
ファクトリーオートメーション(生産工程の自動化)用センサー(検知器)をはじめとした測定器、画像処理機器メーカー。世界中のモノづくり、研究開発、品質管理、トレーサビリティ(追跡可能性)、ロジスティクス(物流などの後方支援)を支える。革新的商品により世界のあらゆる分野で品質や生産性向上を通じて社会的課題解決に貢献。 |
2 |
信越化学工業
(化学) |
世界トップクラスの製品を多数擁する化学メーカー。半導体材料だけでなく、豊富に存在する塩が原料の塩化ビニル樹脂、自動車電装化に必要な希土類磁石、太陽電池高機能化に貢献するシリコーン封止材、農薬代替となる合成フェロモンなど様々な環境製品で社会的課題解決に貢献。 |
3 |
HOYA
(精密機器) |
「事業ポートフォリオ経営」、「小さな池の大きな魚戦略」に特徴を持つ精密機器メーカー。情報通信主体からライフケア(健康・医療関連)へ事業ポートフォリオ転換を進めつつある。様々なライフケア製品で世界の人々の健康に貢献。 |
4 |
ダイキン工業
(機械) |
環境技術を中核に空調で世界の省エネをリードするエアコンメーカー。「人を基軸に置いた経営」で海外現地人材を活用しながら機動的に販売を拡大させてきた。環境負荷を低減しながら人と空間を健康で快適にする事で社会的課題解決に貢献。 |
5 |
リクルートホールディングス
(サービス業) |
世の中にある様々な不満・不便・不安の「不」を解消し、ユーザーが自らのライフシーンにおいて多様な選択肢の中から自分に合った選択肢を選べる世界を目指す情報サービス提供企業。多様な就業機会の提供、情報の非対称性解消で社会的課題解決に貢献。 |
6 |
日本電産
(電気機器) |
「世界No1の総合モーターメーカー」を目指す電子部品メーカー。「まわるもの、動くもの」を効率化し、世界のエネルギー効率向上に寄与することや、EV(電気自動車)用モータの開発・販売によりEVの普及を支えることで社会的課題解決に貢献。 |
7 |
日立製作所
(電気機器) |
「IoT(モノのインターネット)時代のイノベーションパートナー」を目指して、社会イノベーション(技術革新)事業を加速する総合電機メーカー。オペレーショナルテクノロジー(制御・運用技術)、IT(情報技術)、そしてプロダクト(製品)の3つを持つ強みを生かして社会やお客様にイノベーションを提供する事で社会的課題解決に貢献。 |
8 |
村田製作所
(電気機器) |
材料にこだわった事業展開が特徴の電子部品メーカー。センサー+ワイヤレス(無線)+ソフトウェアの融合により、IoT(モノのインターネット)社会の「インフラ(基盤)構築」を担う事で社会的課題解決に貢献。 |
9 |
大和ハウス工業
(建設業) |
EC(電子商取引)化の進展により都市に欠かせない機能となりつつある物流センターを始め、「ア(安心・安全)・ス(スピード・ストック)・フ(福祉)・カ(環境)・ケ(健康)・ツ(通信)・ノ(農業)」事業で社会的課題解決に貢献。 |
10 |
ソニーグループ
(電気機器) |
ゲーム、映画、音楽、アニメなど世界有数のプラットフォーム(基盤)やIP(知的財産)を持つエンターテイメント企業。様々なデジタルコンテンツ(創作物)やクリエイター(創作者)を積極的に育成し、人々に娯楽や感動を届けることで、世界の文化の発展とクリエイターの夢の実現に貢献。 |
- 業種は東証33業種分類によります。
上記は、マザーファンドの上位組入銘柄の参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。「銘柄解説/ESGへの取り組み」の記載内容は、各種情報より野村アセットマネジメント作成。
- 上記はファンドが投資対象とする「社会的価値創造企業マザーファンド」(2016 年3月25日設定)の実績です。
過去の運用実績であり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
運用開始以来、組入銘柄はほとんど入れ替わっていません。
銘柄選定のプロセスで、企業の長期的な事業継続性とその確信度を重視している結果だと思います。
まとめ
「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」の銘柄選定プロセスから見るESG投資のポイント
1. 利益を上げているか
短期的な利益の追求への反省から、持続可能な経済を実現させるために重視されるようになったのがESGです。
一般的な投資の銘柄を選別する基準は、企業業績などの財務情報がメインですが、ESG投資は、非財務情報であるESG関連情報も評価するのが特徴です。
「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」は、ESGへの取り組み、もしくは社会貢献を事業として、しっかりと確立させ、そこから利益を上げている企業を選んでいます。これが、マザーファンドの運用開始からの好パフォーマンスに繋がっていると考えられます。
ESG投資が重視されるようになった背景には、短期的な利益追求への反省がありますが、かといって投資に際して、利益を度外視して良い訳ではありません。
加えて、重要なのが事業分野の構成割合と競争力です。
「再生可能エネルギー」、「脱炭素」など、ESG関連の投資テーマに該当する企業は数多くあります。
たくさんの企業の中には、関連する事業分野があっても業績に寄与していないかもしれません。その企業の事業全体に対する割合はどの程度なのか?また、他社に対して競争力があるか?で絞り込んでいくべきでしょう。
2. 持続性があるか
ESG投資の背景には、持続可能な社会の実現があることを考えれば、ESG投資の銘柄選定でも持続性が重要な要素となるのは必然でしょう。
「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」では、企業の長期的な事業継続性を示す「現金を稼ぐ力」を投資候補銘柄の絞り込みに使っています。また、「1. 利益を上げているか」でも紹介した、競争力がある企業を選ぶのも持続性を重視している表れであると思われます。
何重にも持続性を評価軸にして、銘柄を厳選しているのが分かります。
結果として、マザーファンドは運用開始以来、組入銘柄はほとんど入れ替えずに高いパフォーマンスを残してきました。
運用プロセスの中には、ポートフォリオの見直しも含まれますが、銘柄選別における持続性の評価が効果的であり、組入銘柄を入れ替える必要があまり生じなかったものと思われます。
個別銘柄投資においても、持続性の確認は、中長期的な投資成果を得るための重要な要素です。
日本株がESG投資の本命となるか?
昨年来、ファンド数残高共に増加しているESGファンドも、その投資対象は、グローバル株式が中心です。おそらく、グローバル株式に比べて日本株への投資家の期待度が低いのでしょう。
一方、「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」の銘柄選定プロセスとパフォーマンスからも分かるとおり、社会貢献を事業としてしっかりと確立させて、そこから利益を上げ、今後も、持続的な利益成長を実現できる日本企業は存在しています。
日本株ESG投資に対する投資家のイメージと、現実の間にギャップが生じているのが現状と言えそうです。
日本は、欧米に比べてESG投資は立ち遅れているといわれていますが、今後、その立ち遅れの解消が想定され、「利益」と「社会貢献」の「持続性」に着目した投資が進めば、現在の投資家のイメージと現状のギャップが、埋まっていくのではないでしょうか。
そう考えると、これからのESG投資は、日本株が本命となる可能性が高いといえるでしょう。
投資スタンスについて
今後、日本株がESG投資の本命になるという前提で、どんな投資スタンスが良いでしょう?
ESGインデックスに採用されている銘柄群から、自分自身が関心の高い社会的課題解決に貢献できそうな数銘柄をピックアップし、ESG投資のポイントで見たように「利益」の「持続性」から投資銘柄を絞り込む方法が考えられます。
しかし、「利益の持続性」の判断は、個人レベルでは少々、ハードルが高いかもしれません。
そこで、すでに良好なパフォーマンスがある「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」をコアとしてESG投資への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょう?
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