最近よく聞くESG投資とは?
企業の長期的な成長を測る視点、それが「ESG*」です。ESGの3つの観点から、企業の長期的な収益機会や事業リスクを把握します。
- ESG:・環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)
投資銘柄を選定する際に、企業業績や財務情報など従来の視点に加えて、ESGの要素を考慮して投資をすることを「ESG投資」と呼びます。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)やブラックロック(米国の資産運用会社)など世界の機関投資家の間でも、このESG投資を行う動きが強まっています。2020年3月末時点でESG投資を含むサステナブル投資の合計額は「310兆392億7,500万円」に上ると発表されています。
こうした機関投資家の動向を受けて、一般投資家向けのファンドでも、ESG投資に関するファンドが増加傾向にあり、ESG投資は機関投資家だけでなく、個人投資家もチャレンジできる環境が整いつつあるのです。
持続可能な経済実現のためのESG投資ですが、投資手法として、気になるパフォーマンスはどうなのでしょうか?
『社会的課題の解決』と『リターンの獲得』の両立を目指す新しい投資信託についての紹介と合わせて見ていきたいと思います。
- 出所:NTTデータエービック
- ESG関連投信:目論見書記載の「ファンドの目的・特色」をもとにNTTデータエービックが判断
主流は国際株式型のESGファンド
2021年6月末のESGファンドの純資産総額は、2兆5,112億円(121ファンド)です。 投資対象別の純資産総額は以下のとおりです。
2021年6月末現在
ファンド分類 |
純資産総額(億円) |
ファンド数 |
国内株式型 |
1,127 |
36 |
国際株式型 |
23,209 |
70 |
国際債券型 |
171 |
10 |
バランス型 |
605 |
5 |
合計 |
25,112 |
121 |
- 出所:NTTデータエービック
- ファンド分類は、NTTデータエービックFund Monitorファンド分類(大分類)による
純資産総額で見ると、国際株式型が全体の約92%、一方、国内株式型は5%未満、その差は歴然としています。ところが、ファンド数で見ると、国際株式型は70本、国内株式型の約2倍程度です。
投資信託全体は、近年、国際株式型への資金流入が顕著ですが、ESGファンドでは、その傾向がより鮮明に出ています。
注目の日本株ESGファンド「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」
国際株式型のESGファンドへの資金流入は、米国を中心とする海外株式への成長期待の表れであり、相対的に、日本株式への期待度は高くないのかもしれません。
しかし、リターンに期待ができる日本株ESGファンドが無いわけではありません。
日本株ESGファンドの中でも注目を集めているのは、「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」です。
注目の理由は何といっても、そのパフォーマンスの高さです。「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」のマザーファンドである「社会的価値創造企業マザーファンド」は、すでに5年以上の運用実績があります。
「社会的価値創造企業マザーファンド」のパフォーマンス(2016年4月~2021年7月、各月のリターンをもとに計算)
年換算リターン |
年換算リスク |
15.8% |
15.6% |
- 出所:野村アセットマネジメント作成
- 上記はファンドが投資対象とする「社会的価値創造企業マザーファンド」(2016年3月25日設定)の実績です。過去の運用実績であり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
同期間内で比較すると(年換算値)、リターンは、すべてのファンド分類の平均値を上回り、一方、リスクは、すべてのファンド分類の平均値と同程度あるいは下回る結果となりました。
分類 |
年換算リターン(%) |
年換算リスク(%) |
国内株式・フリー型 |
10.49 |
18.04 |
グローバル株式型
(ヘッジ) |
9.04 |
15.05 |
グローバル株式型
(無ヘッジ) |
10.38 |
17.46 |
北米株式型
(ヘッジ) |
13.16 |
13.40 |
北米株式型
(無ヘッジ) |
12.24 |
19.09 |
- 出所:NTTデータエービック
- 分類は、NTTデータエービックFund Monitorファンド分類(小分類) 償還済みファンドを除く
- パフォーマンスは、各分類のファンドの月次リターン平均値をもとに算出。(期間:2016年4月~2021年7月)
国内株式型ファンドのみならず、国際株式型ファンドをも上回る運用成績の「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」は、今後のパフォーマンスについても期待できるのでしょうか?
ファンドの設定経緯や、運用プロセスをファンドの運用会社である野村アセットマネジメント様にお伺いしました。
お答えいただいたのは、野村アセットマネジメント株式会社 プロダクト・マネジメント部 シニア・プロダクト・マネージャー 冨田 充亮様です。
「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」 設定の経緯は?
現在の世の中を良くする企業ファンドの構想(社会的価値創造企業マザーファンド)を始めたのは2015年初め頃です。
当時は、日本国内でもESG投資への関心が高まりだした頃です。ただし、ESG投資や社会的責任投資といっても(イメージ先行で)高いリターンは期待できないだろう。結果として、TOPIXと同程度のリターンが得られれば良い、というのが(業界内での)コンセンサスでした。
それを解決するため、如何にしてESG投資とパフォーマンスを両立させるかを考え、2015年9月からシミュレーションを開始しました。
その後、自社資金によるパイロットファンドの運用を続け、年金運用の資金も入り、今回の公募投信の設定へと至りました。
現在、多くの有力企業が、時間と労力とコストをかけて、ESGに取り組んでいます。
しかし、十二分な対価(企業利益)が得られないならば、恐らくは、ESG取り組みの継続は難しいでしょう。理念としてのESGを掲げ、その結果、企業利益が赤字、さらには(極端な場合)企業経営が傾いたら、それこそ、本末転倒です。
ESGに取り組む、または社会貢献をしっかり事業として確立させて、そこから利益をあげている企業を選ぼうというのがファンドの運用の軸です。
ESG投資(社会的課題の解決)とパフォーマンス(リターンの獲得)を両立させる方法は?
1.ESG投資(社会的課題の解決)=SDGs評価が高い企業を選ぶ
SDGs評価は、SDGsの各目標達成に貢献する事業の構成割合と、その事業の競争力を評価するもので、SDGsへの貢献度が高い事業分野を有し、その分野で強い競争力を有する企業が、SDGs評価の高い企業となります。
SDGsの目標達成に貢献する事業を有していても、その割合が低い企業は評価対象とはなりません。
また、差別化された競争力がある事業を有する企業でも、その事業がSDGsの達成に貢献するものでなければSDGs評価の対象とはなりません。
2.パフォーマンス(リターンの獲得)=利益をあげている企業を選ぶ
投資対象候補銘柄の絞り込みに、CFROIC*(投下資本キャッシュフロー利益率)という指標を使っています。
この指標は、企業の長期的な事業継続性を定量評価するものであり、「会社全体での現金を稼ぐ力」、更には真の経営力を表します。
- CFROIC(Cash Flow Return On Invested Capital)
3.運用プロセスによる両立
投資ユニバースは、企業調査部がESGスコアを付与している300~400銘柄程度です。
その内、SDGsへの取り組み、一定以上の収益力の持続性を評価された企業が投資候補銘柄となります。現状では、60~70銘柄となります。
ESG投資(社会的課題の解決)とパフォーマンス(リターンの獲得)の成果は?
1.ESG投資(社会的課題の解決)=SFDR*の基準で第9条に分類
社会的課題の解決については、ファンドのパフォーマンスのように数値化することが難しいですが、1つの例として欧州のSFDRをご紹介します。
当ファンドの類似戦略で運用する海外ファンドも既に設定しております。
EU(欧州連合)のSFDRでは、ファンドがサステナビリティ(社会や環境の持続可能性)にどれだけ配慮しているかを以下の3つに分類するよう規定されています。
(第9条に該当)サステナブルな投資を目的とする金融商品
(第8条に該当)環境や社会に配慮した金融商品
(第6条に該当)特にサステナブルを考慮しない金融商品
この類似戦略で運用する海外ファンドは、第9条の「サステナブルな投資を目的とする金融商品」に分類されています。
- SFDR* EU(欧州連合)のサステナブルファイナンス開示規則(Sustainable Finance Disclosure Regulation)の略称。(2021年3月から適用開始)
2.パフォーマンス(リターンの獲得)=TOPIXを上回る運用成績
マザーファンドの運用開始以来の年換算リターンは、同期間のTOPIXの約2倍です。一方、リスクはTOPIXと同水準となっております。
- 期間:2016年3月末(マザーファンド設定月末)~2021年7月末、月次
- マザーファンド:社会的価値創造企業マザーファンド
- TOPIX:東証株価指数(配当込み)
- 日本株ESG指数:FTSE ブロッサム・ジャパン・インデックス(配当込み)
- 上記指数は、ファンドのベンチマークではありません。
- 出所:ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成
- FTSE ブロッサム・ジャパン・インデックスは、FTSE All Cap Japan Indexの中から、業種偏重を最小限に抑制しつつ、ESGの実践に関する明確な基準に基づいて選定されたESG対応の優れた日本企業のパフォーマンスを表す指数です。
- 上記はファンドが投資対象とする「社会的価値創造企業マザーファンド」(2016年3月25日設定)の実績です。過去の運用実績であり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
ポートフォリオの見直しは(組入銘柄の入れ替え)?
マザーファンドの運用開始以来、組入銘柄はほとんど入れ替わっていません。銘柄選定のプロセスで、企業の長期的な事業継続性とその確信度を重視している結果だと思います。
組入銘柄をほとんど入れ替えずに、高いパフォーマンスを残しているという点が、当ファンドの特徴でもあります。
まとめ
ファンドコンセプトは「『社会的課題の解決』と『リターンの獲得』の両立を目指す」
ファンドが企画された当時、「ESG投資は(イメージ先行で)高いリターンは期待できない。TOPIXと同程度のリターンが得られれば良い。これが、ファンドが企画された当時のコンセンサスでした。
「ESG投資は、しっかりとリターンが得られるの?」 誰もが疑問に思うことでしょう。その疑問に対する回答は、現時点では明確には出ていません。しかし、今回ご紹介した「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」は、これまでの(あるいは、過去の)運用実績を見る限り、「しっかりとリターンが得られている」と言えるでしょう。
「社会的価値創造企業マザーファンド」のパフォーマンス
- 期間:2016年3月末(マザーファンド設定月末)~2021年7月末、月次
- マザーファンド:社会的価値創造企業マザーファンド
- TOPIX:東証株価指数(配当込み)
- 日本株ESG指数:FTSE ブロッサム・ジャパン・インデックス(配当込み)
- 上記指数は、ファンドのベンチマークではありません。
- 出所:ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成
- FTSE ブロッサム・ジャパン・インデックスは、FTSE All Cap Japan Indexの中から、業種偏重を最小限に抑制しつつ、ESGの実践に関する明確な基準に基づいて選定されたESG対応の優れた日本企業のパフォーマンスを表す指数です。
- 上記はファンドが投資対象とする「社会的価値創造企業マザーファンド」(2016年3月25日設定)の実績です。過去の運用実績であり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
組入銘柄をほとんど入れ替えずに、高いパフォーマンスを残している
投資信託選びでは、過去の運用実績を参考にするのが効果的です。しかしながら、過去の運用実績が、そのまま将来に当てはまるとは限らないのが現実です。
投資環境の変化を捉えて、積極的にポートフォリオを見直した結果、投資環境が予想とは異なる状況となり、むしろパフォーマンスが悪化する場合もあるからです。従って、それまでの好成績が今後も継続するか否かを見極めることが非常に重要となります。
「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」は、「組入銘柄をほとんど入れ替えずに、高いパフォーマンスを残してきた」とのことでした。組入銘柄をほとんど入れ替えていないのは、銘柄選定のプロセスが有効かつ効果的で、その結果、その後の投資銘柄の入れ替えは、ほとんど必要なかった、という事でしょう。
投資環境の変化に左右されにくく、持続的成長が期待できる銘柄を組み入れたポートフォリオは、過去も、そして未来も、安定したパフォーマンスを継続できる可能性が高い、とも言えそうです。
【当資料で使用した指数の著作権について】
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