設定の背景と経緯
‐いかにしてマルチテーマ型ファンドは作られたのか‐
ファンド設定の背景と経緯を教えて下さい
グローバル株式型のファンドは、日本の運用会社であっても、ファンドの実質的な運用は海外の運用会社が行っている場合が多くあります。野村アセットマネジメントでは、「自社運用のグローバル株式ファンド」を投資家の皆さまにお届けしたいという想いがあり、2010年からグロース型のグローバル株式ファンドの企画をスタートさせました。
その際、コンセプトとしてまず考えたのが「長期で投資して頂けるグローバル株式ファンドを作ろう」ということです。
どうしたら長期投資に適しているか?検討を重ねる中で、「中長期の成長が見込まれるテーマを選び、投資銘柄を厳選する」「成長テーマや配分比率を機動的に見直す」という運用プロセスに至り、2013年にパイロット運用(運用会社の自己資金による運用)を始めました。構想から運用開始まで、検討に検討を重ね、時間をかけて作り上げたファンドです。
さらに2年間の実証検証の後、2015年に公募投信として「野村未来トレンド発見ファンド(愛称:先見の明)」の設定に至りました。
運用プロセスを決める上でのポイントは
運用プロセスを決めるのにあたり、投資対象となりうる銘柄数が非常に多いという現実的な問題がありました。
私自身、以前は日本の中・小型株ファンドを運用しておりましたが、日本株の中・小型株式ファンドの投資ユニバース(投資先の候補となる銘柄群)は、400~500銘柄程度なので、全ての企業について調査して、その中から良い企業を選別することができます。イメージでいうと、投資対象を網で全てすくってきてそれらを一つずつ調べることが可能ということです。
投資対象が新興国を含む世界の株式となると、ある程度企業の規模を限定しても投資対象となる銘柄は非常に多くなります。限られたリソースで如何にして成長企業を見つけ出すか?そこで考えたのが網ですくっていたものが釣りに替わるようなイメージで調査する方法。大海原に釣り糸を垂らして成長企業を釣り上げる・・・その釣り糸を垂らす行為が企業を調査することになります。
ただし、大海原で闇雲に釣り糸を垂らしていても成長企業を見つけることは難しいため、まずは、どの領域に釣り糸を垂らすべきかを調査することが、運用のスタートです。
その中で、テーマは、調査する領域を探し当てる魚群探知機の役割を果たすものだと考えていただければ分かり易いでしょう。
成長テーマを特定し、その代表企業を調べて、その競合する企業や、サプライチェーン、大型株から小型株まで調べていき成長企業を釣り上げていきます。
一般的にテーマ型ファンドは長期投資向きではないと言われますが・・・
テーマ型のファンドはうまくタイミングが合えば大きなリターンが期待できる反面、比較的短期志向になりやすい傾向があります。また、未来永劫続くテーマがあるかというとなかなか難しいのが現実です。
「野村未来トレンド発見ファンド(愛称:先見の明)」の特徴は、テーマを複数選定(マルチテーマ)することと、テーマを可変的に見直していくことです。それにより、ファンドを保有している間、投資家の皆様はファンドを通して常に「旬のテーマ」への投資していくことができます。
一般的なグロースファンドにおける「グロース」の考え方、つまりその運用担当者やチームが何をグロースと考えているかは、ある意味、ブラックボックスになっており、投資家からは分かりづらいのではないでしょうか? テーマを選定し、それを見直していくことで、投資家の皆様に、我々運用担当者が、何をグロースと考えているのかの情報開示をしていると考えています。
運用プロセス テーマの選定とポートフォリオ構築
-長期投資できるテーマ型ファンドにするために-
現在、選定しているテーマは?
現在(2021年11月末時点)は、
「新たな価値の創造(新しい技術/製品/サービスの誕生・進化)」
「新興国へのトレンドの広まり(先進国から新興国へのトレンドの遷移)」
「社会構造の変化(高齢化の加速、新興国での所得増加による中産階級の増加など)」に着目し、銘柄数、市場規模も含めて判断して、10のテーマを選定しています。
上記は記載時点で選定された成長テーマであり、今後変更となる可能性があります。
上記の銘柄選定プロセスは、今後変更となる場合があります。資金動向、市況動向等によっては、上記のような運用ができない場合があります。
(出所)野村アセットマネジメント作成
テーマを選定する上で、気を付けていることは、成長特性の違うテーマを組み合わせることです。
AI/クラウドサービス、フィンティックなど上の図の一番左側のテーマは、成長期待が高いけれども、株価のボラティリティも高いテーマ群(高グローステーマ)です。右二つのテーマは安定的でボラティリティの低いテーマ群(安定グローステーマ)です。
成長期待の高いテーマだけにすれば、マーケットが良い時は大きなリターンが得られますが、逆に調整局面では、大きく下落することになります。
長期投資を念頭に置いていても、大きな下落があるとファンドをお持ちいただいている方は、やはり不安になります。そのため、長期投資にとっては、必要以上のボラティリティは、マイナスに働くことがあるのではないかと考えています。
成長特性の違うテーマを合わせて持ち、配分比率を機動的に見直すことで、想定リスクに対して、相対的にリターンの高い(運用効率の良い)ファンドをご提供したいと考えています。
各テーマからどのようにポートフォリオを構築しているのですか
テーマスペシャリスト(テーマごとのポートフォリオマネージャー)が、企業調査の上、30~40銘柄で構成する個別テーマポートフォリオを作成します。
現在、テーマは10テーマありますので300~400銘柄が「野村未来トレンド発見ファンド(愛称:先見の明)」の投資ユニバース(投資先の候補となる銘柄群)です。ポートフォリオの構築は、テーマごとに配分比率を決めているのでなく、あくまで個別銘柄の集合体がファンドのポートフォリオになります。
個別銘柄について、どんなに投資環境が変わっても成長力のある企業を持ち続けるというのも一つの運用スタイルですが、私の考え方は逆です。成長期待が変わらないからといって、1年365日その企業に投資し続ける必要はないと考えています。
テーマを選ぶこととテーマごとの企業を選別する目線はあくまで中・長期ですが、最終ポートフォリオを構築する際は、そのテーマや企業が中・長期的に良いかという議論と切り離して、投資環境を考えています。
株式市場の動向や、各国の金融政策などから、例えば、為替動向を含め、特定の国に追い風、または向かい風となっているようなことはないかなどを考慮します。株式市場がリスクオンと言われる環境であれば「高グローステーマ」の投資比率が高まり、逆であれば「安定グローステーマ」の投資比率が高くなる傾向があります。
また、マーケットの温度などを注意して見ています。決算が発表されてコンセンサスよりもいい決算内容だと、株価は上昇するのが通常ですが、稀にコンセンサスよりもいい数字なのに、市場の期待がもっと高くて売られてしまうケースがあります。このようなときはマーケットの温度が高すぎると判断し、「高グローステーマ」の比率を下げるなどの対応をします。
テーマの入れ替えの事例は?
設定当初から2015年8月末までは、「食糧・農業需要」というテーマを選定していました。新興国では、人口が増加し食糧問題がクローズアップされるという長いスパンのテーマです。投資成果を上げるためには変動の大きいコモディティ価格の予想が必要になり、株価がコモディティ価格の影響を受ける事が多く、このテーマは2015年8月末で外しました。但し、新興国の人口増、所得増によって、食糧だけでなく、消費の多様化が進んでいますので、「食糧・農業需要」を発展させる形で、新たに「消費の多様化」というテーマを加えました。
テーマの見直し、入れ替えは突然ではなく、候補となるテーマが見つかると、最低でも半年、通常1年~2年はテーマスペシャリストが仮想のポートフォリオを作って検証を進めます。
プロ野球でいえば、現在選定しているテーマは、1軍、候補のテーマが2軍に控えているといった感じでしょうか?
運用成績とファンド特性
‐世界株式と比較して設定来概ね良好に推移‐
設定来の運用成績は?
ファンドの設定来では、代表的な世界の株式指数であるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(税引後配当込み、円換算ベース)に対し、70%超の超過収益を上げています。
ただ注目して頂きたいのは、単純にリターンが高いところだけでなく、運用効率の高さです。
過去5年間では、参考指数よりも低いリスクで高いリターンを上げています。
上記はファンドが投資対象とする「グローバル・マルチテーマ マザーファンド」(2013年11月15日設定)の実績です。過去の運用実績であり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
投資効率を示す、過去5年のシャープレシオでは、グローバル株式ファンドのなかでも上位に位置していますが、今後も期待してよろしいでしょうか?
常に良い成績を残せるよう運用を心がけていますが、過去数年間は、グロース投資には良い環境であったということを冷静に認識する必要があると考えています。この良い環境がずっと続くものではなく、もしかしたら既に足元では、変化が起きているかもしれません。そういった中でも、過去5年のシャープレシオを今後も実現できればと思っています。
投資家の皆さまには、長期の資産運用のために我々のような専門業者を雇うという発想でお考えいただければ良いのではないでしょうか?成長テーマの選定と入れ替え、銘柄発掘、また短期的なリスク管理などを、日頃、仕事等でお忙しい皆様に代わって、我々にお任せいただければ幸いです。
まとめ
長期で投資できるグローバル株式ファンドとして企画され、そのコンセプトに合った運用プロセスで着実に実績を重ねる「野村未来トレンド発見ファンド(愛称:先見の明)」は、為替ヘッジの有無と決算頻度と分配方針の異なる4種類のファンドと、同じマザーファンドに投資する確定拠出年金向けのファンドがあります。
加えて、同じ運用コンセプトのファンドが、内外の機関投資家(年金運用)にも採用されているのとのことです。
長期投資に向いたファンドとしての運用コンセプトと運用実績がプロの投資家にも認められている証といえるでしょう。