マーケットニュートラルファンドってどんなファンド?
マーケットニュートラルファンドは、株式購入と同時に、株式購入額相当分の株価指数先物を売り建てます。そのことで、株式を保有しつつ、株式市場に対してニュートラル(中立)のポジションとなることからマーケットニュートラルファンドと呼ばれています。
株式市場の変動に左右されない投資成果が期待できるのがマーケットニュートラルファンドの特徴です。
ここがポイント①「株式市場の変動に左右されないマーケットニュートラルファンドの収益構造」
マーケットニュートラルファンドの鍵となる現物株式のポートフォリオ構築はどの様なものなのでしょう?
2023年4月21日に設定、運用を開始した「ファイブスター日経225ニュートラルファンド」の運用会社であるファイブスター投信投資顧問株式会社様にお伺いし、具体的に教えて頂きました。
取材にお答えいただいたのはファイブスター投信投資顧問株式会社 営業部長 加藤 敦史様です。
「ファイブスター日経225ニュートラルファンド」の運用手法 日経225指数固有の特性を考慮したポートフォリオ構築
現物株式のポートフォリオ構築のプロセスは?
ポートフォリオは、「ファンドが保有する株式の選定による要因」と「ファンドが保有する株式の投資割合による要因」の二つを考え方に基づいて構築します。
保有する株式の選定は、先ず日経225指数採用銘柄の全株式を投資対象として、徹底した企業調査(ボトムアップ)します。その上で、主要統計などの重要イベント、業種(セクター)動向の変化、個別企業の株式需給動向などを考慮して、50~100銘柄を最終的な投資対象として抽出します。
加えて、「値がさ株」※の影響を受け易いといった日経225指数固有の特性も考慮します。
日経平均に「勝つ」という観点で、日経平均が持つ固有の特性も考慮するのですね。
日経225指数は、構成比率上位20銘柄で、構成比率の半分を占めています。これら構成比率が極めて高い上位銘柄は、指数相対比で負けないことを意識します。次に構成比率が比較的高い銘柄は、日経225指数の動きと銘柄選択要因による収益追求のバランス感を重視します。構成比率が低く、指数変動率の寄与度が小さい銘柄は、日経225指数の構成比率にとらわれず、大胆に組み入れる、または組み入れないことで、収益を積極的に追及します。
- 出所:ファイブスター投信投資顧問、Bloomberg
ファンドが保有する株式の投資割合による要因の考え方については?
日経225指数の上昇率よりも株価上昇余地が高いと目される株式は、構成比率より多く保有する、逆に上昇余地が低いと目される株式は、構成比率より少なく保有することで、その差分の値動きがファンドの主な収益源となる考え方です。
他に配慮している点は?
当社は、資産運用において流動性の部分が極めて重要であると考えています。 売りたい時に売れないことが起きる低流動性は、過去の金融市場においてもテールリスクが発生すると大きな問題となっています。
保有するポジションを全て解消するための日数をチェックしており、大きなテールリスクが発生しても速やかに解約に対応できるよう配慮しています。
国内債券投資の代替となる可能性を見込む
どの様な運用成績を見込んでいますか?
同じ運用手法で3年以上の運用実績のある機関投資家向け私募投信のパフォーマンスをご紹介します。
適格機関投資家私募投信と代表的な資産クラスとの比較
■ パフォーマンス(2019/4/30〜2023/2/28)
- 代表的な資産クラスの指数は次の通りです。日本株:TOPIX(配当込み)、先進国株:MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円ベース)、新興国株:MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み、円ベース)、日本国債:NOMURA-BPI(国債)、先進国債:FTSE世界国債インデックス(除く日本、円ベース)、新興国債:FTSE新興国市場国債インデックス(円ベース)
- 出所:ファイブスター投信投資顧問、Bloomberg
2019年4月の運用開始以来の運用実績は、マーケットニューラルファンドの特徴どおり、金融市場の動向に左右されにくい運用成果となっています。
2019年の運用開始直後の米中貿易摩擦や2020年2月から3月のコロナショックによる株式下落時において、当ファンドはほぼ横ばいで推移しています。
ご注目頂きたいのは、インフレ懸念が台頭した2021年11月から2022年10月までの値動きです。その間も当ファンドは、安定的に収益を積み上げ、騰落率は、4.6%となりました。
特に先進国株式、日本国債とは、逆相関の関係にあり、当ファンドの特徴が表れていると思います。
■ リスクリターン分析(2019/4/30〜2023/2/28)
- 代表的な資産クラスの指数は次の通りです。日本株:TOPIX(配当込み)、先進国株:MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円ベース)、新興国株:MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み、円ベース)、日本国債:NOMURA-BPI(国債)、先進国債:FTSE世界国債インデックス(除く日本、円ベース)、新興国債:FTSE新興国市場国債インデックス(円ベース)
- 出所:ファイブスター投信投資顧問、Bloomberg
運用期間を通した当ファンドと代表的な資産クラスのリスクを見てみると、株式などのリスクに比べ当ファンドのリスクは低く抑えられており、日本国債と同程度のリスクであったことが分かります。
この点から、国内債券投資の代替になり得るのではと考えています。
金融市場の動きに左右されないファンドで資産形成の後押しを目指す
運用のプロである機関投資家向けの私募投信を今回、個人投資家向けの公募投信として設定したのは?
資産所得倍増プランやNISAなどで資産形成を後押しする機運が高まっていますが、実際には個人金融資産の54%にあたる1,100兆円は、現預金に留まったままです。
現在、現預金に滞留している資金の性格はというと、至って保守的で、リスク許容度の低い資金性格だと思われますので、例えば国内債券と同程度のリスクである金融商品が必要と考えました。そこで国内債券の代替となり得る商品ということで、機関投資家向けに提供している私募投信の公募化に踏み切りました。
当ファンドは、金融リテラシーの高い投資家はもとより、広く多くの皆様の資産形成を後押しするための、当社としての最適解が今回の「ファイブスター日経225ニュートラルファンド」なのです。
「マーケットニュートラルファンド」ここがポイント!②先物取引(デリバティブ取引)でリスクを低減
先物取引と聞くと、リスクの高い取引だと感じる人も多いのではないでしょうか。
先物取引には①リスクヘッジ機能、②価格調整機能、③レバレッジ投機としての機能の3つがあるとされています。
先物取引=ハイリスクは、先物取引が証拠金取引であることから、投下資金の何倍もの取引が可能、つまりレバレッジを効かせた投資ができることに着目したイメージなのです。
マーケットニュートラルファンドは、あくまで先物取引の目的をヘッジ目的に限定しており、先物=ハイリスクのイメージには当てはまりません。
【参考】
「ファイブスター日経225ニュートラルファンド」信託約款より抜粋
2.運用方法
⑫有価証券関連デリバティブ取引については、信託財産が運用対象とする有価証券の価格変動リスクを回避するためのヘッジ目的に限ります。
検証 活用方法と留意点
安定志向のファンドとの「安定力」比較
今回、取材した「ファイブスター日経225ニュートラルファンド」と同様の運用手法をとる私募投信の運用成果からも、ローリスク・ローリターンの特性を有していることが分かります。
安定志向の資金の投資先として十分に検討できるかを確認するために、「ファイブスター日経225ニュートラルファンド」と同様の運用手法をとる私募投信のリスクとリターンの水準を、安定志向のファンドと位置付けられるファンド群の平均値と比べてみました。
安定志向のファンドとのリスク・リターン(3年)
2023年2月末現在
ファンド |
リターン |
リスク |
マーケットニュートラルファンド |
4.19% |
3.46% |
国内債券・一般型 |
-2.29% |
1.98% |
グローバル債券型(ヘッジ) |
-4.58% |
6.62% |
国際バランス・安定型 |
0.39% |
6.89% |
マーケットニュートラルファンドは、MASAMITSU日経225ニュートラルファンド(適格機関投資家私募)
データ出所:ファイブスター投信投資顧問
各ファンド分類はNTTデータエービックのファンドモニター分類
出所:NTTデータエービック
過去3年間のリターン(年平均収益率)とリスク(年率標準偏差)を比較したのが上図です。リターンは、「国内債券・一般型」と「グローバル債券型(ヘッジ)」がマイナス、「国際バランス・安定型」がわずかにプラスといった状況であり、安定志向のファンド群にとっても非常に厳しい投資環境であったことが分かります。それに対してマーケットニュートラルファンドは、着実にリターンを積み上げています。
マーケットニュートラルファンドのリスクは、国内債券・一般型よりは高いものの、グローバル債券型(ヘッジ)と国際バランス・安定型の半分程度のリスク水準に抑えられています。
安定志向の資金の投資先として、国際債券ファンドがその役割を果たすべきところですが、国内金利は依然、低水準であるだけでなく、今後を考えれば、金利上昇のリスクをはらんでいます。また、「グローバル債券(ヘッジ)」や「国際バランス・安定型」は、安定志向の資金の投資先としては、少しリスクが高いように思われます。投資対象資産の価格特性に基づく従来型の考え方では、限界があるのが現実のようです。投資対象資産に着目するのではなく、安定的な投資成果が期待できる運用手法に着目すれば、マーケットニュートラルファンドは有効な選択肢であると言えるでしょう。
活用法1. 既に投信で資産形成を実行している人
運用資産全体の効率化には低相関の資産の組み合わせが効果的です。既に投資を始めている方は、「ファイブスター日経225ニュートラルファンド」と代表的な資産クラスとの相関に注目してはどうでしょう。
現在保有しているファンドと合わせて持つことで運用資産全体のリスク低減効果が期待できそうです。
活用法2. 運用に際してまとまった資金のない人
株式投資は、経済成長に合わせて右肩上がりになるので長期スタンスの運用を・・・と言われても、やはり価格変動(リスク)は気になるところです。マーケットニュートラルファンドは、先物取引のヘッジ機能に注目して、気になる株式市場の動きを排除する運用手法をとることで、株式市場の動向に左右されない成果を目指すファンドなので、先ずは資産運用の初めの一歩として十分検討するに値すると言えそうです。
「ファイブスター日経225ニュートラルファンド」を取引できる販売会社はこちら!
留意点
マーケットニュートラルファンドは、株式市場の下落局面では、値下がりをあまり心配しなくて済むというメリットがあります。半面、株式市場全体が上昇する局面では、一般的な株式ファンドと比べ、上昇率が見劣りすることが想定されます。
株式市場が上昇する局面で、基準価額が上昇しないからとの理由で売却して一般的な株式ファンドに乗り換えてしまい、下落局面に転じた時には、運用資産が大きく棄損する・・・そういったことは避けたいものです。
投資に際しては、マーケットニュートラルファンドが目指しているのは、株式市場の動向に左右されない投資成果であることを忘れずに・・・
設定・運用