東証がアクティブETFを解禁
アクティブETF解禁の背景
近年、個人投資家の投資環境は世界的に大きく変化しています。
海外の市場では、インデックス(指標)に束縛されない柔軟なアクティブ運用がより求められるようになりました。独自の運用戦略を持つアクティブETFは、米国など海外市場では既に上場されており、多くの個人投資家から人気を集めています。そのような投資環境のトレンド変化の流れに日本は取り残されていました。
しかし、多様化する投資家ニーズに対応する形で東証が 2023年6月に制度改正を行い、同年9月7日に国内初となるアクティブETFの上場が果たされました。
アクティブETF一覧
今回、国内初上場を果たしたアクティブETFは下記の6銘柄です。さらに、10月5日に1銘柄追加となり、7銘柄になる予定です。
その内訳は、野村アセットマネジメントが運用する2銘柄、三菱UFJ国際投信が運用する1銘柄、シンプレクス・アセット・マネジメントが運用する3銘柄、日興アセットマネジメントが運用する1銘柄(10月5日上場予定)です。
銘柄名 |
最低買付金額
※上場日時点
|
信託報酬 |
運用会社 |
特徴・詳細 |
PBR1倍割れ解消推進ETF(2080) |
約1,000円 |
0.99% |
シンプレクス・
アセット・
マネジメント |
エンゲージメントで上場企業のPBR改善を即す日本初のエンゲージメント型ETF。
日本の上場企業に占めるPBR1倍割れ企業の比率は高いです。一方で、東証がPBR1倍割れ企業に改善策の開示を要請するなど改革の機運が高まっています。 |
政策保有解消推進ETF(2081) |
約1,000円 |
0.99% |
シンプレクス・
アセット・
マネジメント |
エンゲージメントで上場企業の政策保有株の減少を即し、本来の事業投資に向けるように働きかける日本初のエンゲージメント型ETF。
政策保有株式は日本特有の現象ですが、近年は金融庁、議決権行使助言会社から厳しい目が向けられています。 |
投資家経営者一心同体ETF(2082) |
約1,000円 |
0.99% |
シンプレクス・
アセット・
マネジメント |
投資家の立場を理解し企業価値の向上を目指す経営者を応援する日本初のエンゲージメント型ETF。
経営者が自社株式を保有することで、長期のインセンティブを持ち、株主と一心同体となっている企業は魅力的な投資対象になると考えています。 |
NEXT FUNDS日本成長株アクティブ上場投信(2083) |
約2,000円 |
0.6875% |
野村アセット
マネジメント |
【株価の上昇を狙いたい方には】高ROEを維持できる「優良企業」への長期投資を中心に、ROE改善を期待できる「変身企業」に機動的に投資することで、株価の上昇をとらえるETF。
運用の専門家が調査や分析に基づいて銘柄を選定するのが、アクティブETFならではのポイント! |
NEXT FUNDS日本高配当株アクティブ上場投信(2084) |
約2,000円 |
0.5225% |
野村アセット
マネジメント |
【高配当を狙いたい方には】安定的な「配当」と機動的な「値上がり益」の獲得により、中長期的なトータル・リターンの獲得を目指すETF。
アクティブETFならではの運用会社独自の配当予測モデルを活用して銘柄を選定!ポートフォリオの配当利回りは約4.15%(2023年9月6日時点)。 |
MAXIS高配当日本株アクティブ上場投信(2085) |
約5,000円 |
0.4125% |
三菱UFJ国際投信 |
東京証券取引所に上場する大型株・中型株のうち、予想配当利回りの上位銘柄を選定し、30銘柄以上の株式に投資することを基本とするETF。
銘柄ごとの組入比率は流動性を勘案して決定します。 |
上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)(2093) |
10月5日上場 |
0.066% |
日興アセット
マネジメント |
事前に定めたルールに沿って、残存期間2年以下の米国国債を残存期間に応じて4つのグループに分け、各グループへ概ね等金額となるよう投資を行う(=ラダー型運用)、パッシブ運用のETF。
連動対象指標が存在しないため東証規則上は「内国アクティブ運用型ETF」に該当します。 |
各銘柄の詳細情報については、みんかぶETFの個別銘柄ページで確認してみてください。
投資家にどんな恩恵がある?
アクティブETFでは、指標に縛られない柔軟性のある運用が可能となります。既存のETFよりも運用会社やファンドマネージャーが決められた運用方針に沿ってETFの組入銘柄や資産配分を決めていくため、銘柄選定の目利きや判断力といった“プロの腕が運用成果を左右することになります。
なお、今回上場した第一陣のアクティブETF6銘柄は、2024年1月から始まる新しい少額投資非課税制度(新NISA)の成長投資枠の対象となります。NISAで資産形成するうえで、個人投資家にとっては有力な選択肢となるでしょう。
アクティブETFとは、どんな金融商品か?
そもそもETFとは?
ETFは「Exchange Traded Fund」の略称で、日本語では「上場投資信託」と呼びます。一般の投資信託とは異なりETFは取引所に上場しているため、株式と同じように投資家は証券会社を通じて取引できます。
手軽さが魅力の投資信託と、売買のしやすさが魅力の株式の良いとこ取りをした金融商品と捉えるとイメージしやすいです。
ETFの特徴については、みんかぶ特集記事「知られざるETFの魅力!株式・投資信託と比べてみた」で紹介しています。併せて、確認してみてください。
アクティブETFとは
アクティブETFは、連動対象となる指標が存在しないETFです。
従来からあるインデックス連動型のETFは、特定の指標をベンチマークとして、それに連動する運用成果を目指します。
それに対して、アクティブETFは連動御対象となる指標を定めずに純資産の成長を目指す運用を行います。運用会社や、ファンドマネージャーといった投資のプロが運用方針に沿って組み入れ銘柄、資産配分などを決めていき、能動的にリターンを追求するのが特徴です。市場平均を上回るリターンを獲得できる可能性があります。
アクティブETFの特徴
では、アクティブETFにはどのような特徴があるのか見ていきましょう。分かりやすくするために、インデックス連動型ETF、一般の投資信託と比較する形式で相違点をまとめました。
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アクティブETF |
インデックス連動型ETF |
一般の投資信託 |
上場の有無 |
上場 |
上場 |
非上場 |
販売会社 |
証券会社 |
証券会社 |
銀行・証券会社 |
取引可能時間 |
市場の取引時間内
(リアルタイムでの売買が可能)
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市場の取引時間内
(リアルタイムでの売買が可能)
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販売会社が定める取引時間内
(リアルタイムでの売買は不可)
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取引価格 |
市場価格
(リアルタイムで更新)
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市場価格
(リアルタイムで更新)
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基準価額
(1日1回算出・公表)
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信託報酬 |
0.4〜0.9%程度 |
0.1〜0.5%程度 |
0.5〜3.0%程度 |
アクティブETFの商品性は、従来からあるインデックス連動型ETFと基本的に同じです。上場市場で取引されるため流動性が高く、売買が容易という特徴があります。また、市場の取引時間内なら市場価格でリアルタイムに取引が可能です。運用コストとなる信託報酬に関しては、一般の投資信託に比べ低めに抑えられていますが、インデックス連動型ETFよりやや高めに設定されています。これは組み入れ銘柄の分析や選定、運用・管理などの手間がかかるためです。
アクティブETFのメリットとデメリット
アクティブETFにはメリットがある一方で、デメリットも共存します。どういったメリット・デメリットがあるのか、ここで押さえておきましょう。
メリット
多様な商品ラインナップ
前述の通り、第一陣として新規上場したアクティブETF6銘柄は、それぞれ投資手法が異なります。多様な商品ラインナップとなっており、自分の投資方針や目的に合ったものを選ぶことが可能です。また、この6銘柄にとどまらず、運用会社各社では日本株、外国株、債券などさまざまな資産をもとにしたアクティブETFのリリースが検討されています。
既存のETFよりも大きなリターンが期待できる
アクティブETFは積極的にリスクをとってリターンを最大化することを目的とした商品設計となっている銘柄も存在し、そのような銘柄では従来のインデックス連動型ETFよりも大きなリターンが期待できます。とはいえ、短期的な運用では一時的に大きくマイナスになるリスクもあります。そのような価格変動リスクは、長期目線の運用によって回避できる場合があります。
透明性が高い
特に、一般の投資信託(アクティブ運用型)と比べて、透明性が高く、運用が分かりやすい点もアクティブETFのメリットです。アクティブETFは上場しており、毎営業日、組入銘柄や資産配分といったポートフォリオの開示を行うほか、取引価格が常に公開されているため、投資家は市場の取引時間内であればいつでも購入や売却を行うことができます。一方で、一般の投資信託(アクティブ運用型)はポートフォリオの開示をおおむね決算期ごとに行っています。
一般の投資信託と比べて低コスト
アクティブETFの保有期間中に発生する信託報酬の額は、商品によって異なりますが、一般の投資信託(アクティブ運用型)と比べて、信託報酬は低い傾向にあります。比較的低い信託報酬の商品もラインナップされており、そのようなアクティブETFを選べば運用コストをより抑えられます。
デメリット
投資方針や運用戦略への理解が必要
アクティブETFは商品ごとに投資方針や運用戦略が異なります。そのため、アクティブETFを取引する際には、それぞれどのような投資方針でどのような運用戦略を持つ商品なのかをきちんと理解しておかなければなりません。自分の考えに合ったアクティブETFを選ぶためにも、投資に関する正しい知識はある程度必要です。
目標の実現性が不明瞭
アクティブETFには連動対象とするベンチマークが存在しないため、事前に運用目標の実現性が分かりづらいです。インデックス連動型ETFに比べ、運用目標の達成度を重視した商品選びが難しいのはデメリットといえます。
(一般的に)コストがかかる
アクティブETFは積極的な運用を行う分、インデックス連動型ETFよりも信託報酬が高めに設定されているケースが多く、運用コストがかさむ可能性があります。
アクティブETFが向いているのはこんな人
個人投資家にとって多くのメリットがあり、魅力的なアクティブETFですが、投資目的や投資方針などによって向き不向きが分かれます。では、どのような投資家に向いているのでしょうか。アクティブETFは、特に以下に該当する方にお勧めです。
投資信託やインデックス連動型ETFよりもリターンを追求したい
多少のリスクを取ってでも大きなリターンを狙いたいという人には、市場平均を上回るパフォーマンスが期待できるアクティブETFが向いています。ただし、大きなリターンを期待できる分、リスクが伴うこともしっかり認識しておく必要があります。
また、高配当株式に着目し、着実なインカムゲイン等も獲得し、高い分配利回りを目指すアクティブETFもあります。高配当株を好まれる人のニーズも満たすことができるでしょう。
投資したいテーマやアセットクラスがある
アクティブETFは、投資したいテーマが明確になっていて、アセットクラス(資産の種類)が決まっている人にもお勧めです。投資したいテーマやアセットクラスを組み入れたアクティブETFを選ぶだけで、すぐに取引を始められます。個別株投資のように、自分で一から銘柄を探す必要はありません。
まとめ
今回は、アクティブETF解禁の背景から特徴、メリットデメリットについて説明をしてきました。
アクティブETFは、コストを考慮しながら、インデックス投資よりも大きなリターンを狙いたいという方に、おすすめの金融商品です。まずは、どんなアクティブETFがあるのか「みんかぶETF」で探してみてはいかがでしょうか。
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銘柄コード |
ファンド名 |
運用会社 |
2080 |
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シンプレクス
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2081 |
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シンプレクス
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2082 |
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シンプレクス
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2083 |
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野 村
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2084 |
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野 村
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2085 |
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三菱UFJ国際
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2093 |
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日 興
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