個人投資家の動向を受け、使いやすい投資ツールを新たに提供
「ウルトラロング米債」を新規に設定・上場した背景を教えてください
鈴木 ブラックロック・ジャパンでは、既に19本の債券ETFが東証に上場していますが、8月28日に、新たに3本の債券ETFが上場しました。
そのうち2ファンドが今回、取材いただいている「iシェアーズ 米国債25年超ロングデュレーションETF(愛称:ウルトラロング米債)」(237A)と「iシェアーズ 米国債25年超ロングデュレーションETF(為替ヘッジあり)(愛称:ウルトラロング米債(ヘッジあり))」(238A)です。
我々は、個人投資家の皆様、機関投資家の皆様に使いやすい投資ツールを提供するべくETFのラインアップを充実させており、今回の上場もその一環となります。
「iシェアーズ 米国債20年超ETF(為替ヘッジあり)」(2621)が、東証上場の債券ETFでは最大の純資産残高になるなど、個人投資家の皆様から、特に長いデュレーションのファンドへの支持をいただいています。やはり、通常の債券と異なり、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を狙えるETFであるということが背景にあるからではないでしょうか。
今回は、さらに投資家の皆様の選択肢を広げるため、よりデュレーションが長い「ウルトラロング米債」を上場しました。
米国債の年限によるデュレーションの違い
- ※ 出所・注:ブラックロック、FTSE、ICE、データ取得および比較対象の抽出は2024年6月末時点、比較母集団は東証上場ETFおよび本邦投資家がアクセス可能な海外上場銘柄(レバレッジ・インバース型商品は除く。)であり、各銘柄は各年限の米国債を主要投資対象としているETFを示しています。各年限のデュレーションを示すため、次の指標を参照しています。「0-3ヶ月」:FTSE米国債0-3ヶ月インデックス(国内投信用、円ベース)、「1-3年」:FTSE米国債1-3ヶ月セレクト・インデックス(国内投信用、円ベース)、「7-10年」:FTSE米国債7-10年セレクト・インデックス(国内投信用 円ベース)、「20年超」:FTSE米国債20年超セレクト・インデックス(国内投信用、円ベース)、「25年超」:ICE U.S. Treasury 25+ Year Bond Index (円換算)、「20-30年ストリップス債」:ブルームバーグ米国債STRIPS(20-30年)均等額面インデックス、「25年超ストリップス債」:FTSE米国債STRIPS元本25年超インデックス(国内投信用、円ベース)。なお、TLTの連動対象指数はICEが算出するICE U.S. Treasury 20+ Years Bond Indexであるため、FTSEが算出する指数とはデュレーションが異なる可能性があります。ブラックロック調べ。
上記のグラフをご覧いただくとわかるとおり、「ウルトラロング米債」は一番右に位置しており、デュレーションが26.8年と最も長いファンドとなります。
今回の上場で、我々がご提供していた「iシェアーズ 米国債20年超ETF(為替ヘッジあり)」(2621)より、さらにデュレーションの長いファンドを新たにご紹介できるようになったと考えています。
債券投資 基礎知識 『デュレーションとは?』
デュレーションは金利感応度とも呼ばれ、金利への反応のしやすさを表す指標です。債券と聞くと値動きの小さい資産というイメージを持つ方も少なくありませんが、こちらの図でご覧いただくとわかるとおり、債券の値動きは商品によって様々です。同じ米国債で比較した場合でも、今回上場するETFは金利が1%低下した場合に26%以上もの値動きが期待でき、その値動きの幅を決めているのがデュレーションです。
1万円を債券ETFに投資し、金利が1%低下した場合
- 金利が低下すると、債券価格は上昇
- デュレーションが長い債券ほど価格は上昇しやすい
1万円を債券ETFに投資し、金利が1%上昇した場合
- 金利が上昇すると、債券価格は低下
- デュレーションが長い債券ほど価格は低下しやすい
- ※出所:ブラックロック、2024年6月末時点。上図はイメージであり、実際の値動きとは異なる可能性があります。価格変化は[銘柄の対象指数のデュレーションx金利変化幅x投資金額]と仮定し算出。ここでは金利変化による価格への影響のみを算出しており、為替動向等による影響は加味していません。それぞれの年限の金利低下に基づく上昇率のイメージです。米国の政策金利や短期金利が低下しても、長期債の金利が低下するとは限りません。「0-3ヶ月」:FTSE米国債0-3ヶ月インデックス(国内投信用、円ベース)、「7-10年」:FTSE米国債7-10年セレクト・インデックス(国内投信用 円ベース)、「20年超」:FTSE米国債20年超セレクト・インデックス(国内投信用、円ベース)、「25年超ウルトラロング」:FTSE米国債STRIPS元本25年超インデックス(国内投信用、円ベース)
今のように今後利下げする可能性がある場合、デュレーションの最も長い銘柄が最も値上がりが期待できるのですが、反対に金利が上昇する局面では大きく値下がりするリスクがあるので注意が必要です。
今回、「ウルトラロング米債」というファンド愛称がついていますが
鈴木 個人投資家の皆様に、わかりやすい形で今回のファンドを認識していただきたく、我々の債券ETFとしては初めて愛称を付けました。
デュレーションが長いということをストレートに伝えるため「ウルトラロング」を、また米国政府が発行する債券であるということから「米債」を組み合わせた愛称としました。
債券投資 基礎知識『ストリップス債とは?』
「ウルトラロング米債」が投資対象とするストリップス債はゼロクーポン債とも呼ばれ、 クーポン (利息) がつかない債券です。定期的なクーポン (利息) 支払いがない代わりに、発行時の価格は額面価格よりも低く設定され、 発行価格と額面価格の差額が利付債におけるクーポン (利息) 分の価値に相当します。米国債のストリップス債は、利付債と同様に米国政府が発行する債券の一種なので、利付債と同様の高い信用力を有しています。
なぜ今、長いデュレーションの債券が投資家の新しい選択肢となり得るのですか?
岡本 米国債の30年金利は、一時期5%を超え、足元では4%台となっています。
米国は利上げを継続して行ってきたため、今後は利下げに転じるだろう・・・と言われても、今の金利が高い水準にあるかどうかは、肌感覚としてわかりにくいかと思います。 下のグラフは、過去10年間の米国30年金利の推移です。
過去10年を遡っても現在ほど高い水準であったことはなく、今後の金利の低下余地(つまり債券価格の上昇余地)に注目が集まる局面であると言えるのです。
米国金利の推移
ロングデュレーションという特性を生かした投資法
投資に際して押さえておきたいポイントは?
岡本 一般的に債券は、安定した投資対象というイメージがあるかと思います。しかしながら「ウルトラロング米債」は、必ずしも安定的であるとは言えない債券ETF商品です。
米国の長期金利の変動幅は、ひと月の平均で0.2%程度となります。一見すると安定しているように見えます。しかし、30年金利がひと月で0.2%程度変動した場合、デュレーションが26.8年の「ウルトラロング米債」は、5%以上変動することになります。
S&P500指数の年間のボラティリティは、15%程度です。一方、平均的な金利変動とデュレーションを掛け合わせると「ウルトラロング米債」の年間のボラティリティは20%程度になります。
デュレーションが長いということで、株式に比肩するほどの変動幅があることを、ご理解いただくことが重要です。
一般的な債券投資とは異なる特性があることを踏まえて、具体的にどんな投資方法が考えられますか?
岡本 まず1つ目として、先ほども申し上げたように、今後の金利低下余地に注目して、リターンを狙うという投資スタンスが考えられます。
また2つ目として、一般の債券ファンドと同じように株式投資のリスク分散という観点もあります。
長期債は、ショック時に強いと言われるとおり、過去においても、株式市場が大きく下落するようなショック時には、米国の長期金利が低下(債券価格が上昇)することが多く見られます。
長期的な資産運用においては、上昇幅を確保することよりも、下落幅を抑えることが重要とされています。債券を保有することは、株式の下落時に資産全体の値下がりの抑制が期待できるという面で、効果的だと思います。
株式の下落に備えて債券に投資する場合、例えば、従来なら株式の投資額の1.5~2倍の投資金額が必要なところ「ウルトラロング米債」であれば、先ほど株式に比肩する変動幅があると申し上げましたとおり、株式の投資額と同程度の金額で済むということになります。デュレーションの長さは、資金効率の良さ、言い換えると「コスパの良い投資」につながるとも考えられるでしょう。
3つ目として、今の高い金利水準に注目したハイ・インカム資産への投資というスタンスがあります。
現在、「ウルトラロング米債」の利回りは、約4.5%ですが、株式の高配当銘柄を見ても4%台の配当利回りの銘柄は多くないでしょう。つまりハイ・インカム資産としてポートフォリオに組み入れていくことができると思います。
ストリップス債には利払いがありませんが、ETFであれば保有債券の簿価利回り(ストリップス債の購入価格と額面の差分)を分配原資としますので、長いデュレーションによる値上がりに加えて、高配当株の配当よりも比較的高い分配金をご期待いただけます。
長期の資産形成にも有効
最後に投資家へのメッセージをお願いします。
鈴木 デュレーションが長いという特性を前提にして、足元の金利水準に着目した値上がり益を狙う投資、株式市場の下落時に備えたコスパの高い投資、高水準のインカムゲインと値上がり益を狙う投資の3つの投資スタンスをご紹介しましたが、「ウルトラロング米債」は、NISAの成長投資枠の対象ETFですので、長期の資産形成にもご活用いただけます。
資産形成のための運用期間は、20年から30年といった長期に及びます。その間、相対的に高水準の利回りを背景にした分配金を非課税で受け取り、積み上げていく投資スタンスです。
債券投資のリスク要因は、発行体の信用リスクと金利変動リスクになります。
信用リスクについて、「ウルトラロング米債」の投資対象であるストリップス債は、米国政府が発行する債券ですので、長期間安心して保有いただけるかと思います。
金利変動リスクについて、「ウルトラロング米債」はデュレーションが長いので、短期間でみると、金利変動の影響を大きく受けます。しかし長期で見れば、米国の景況感を背景に、金利の上昇と低下が循環することになります。従って、何度か景気循環するような長期投資を前提とするなら、「ウルトラロング米債」の長いデュレーションによる高い金利変動リスクもある程度、平準化するものと考えられます。
長期投資によって価格変動を平準化しつつ、高い利回りを享受するなら、投資を始める時期は、金利水準が高い時期がより効果的です。米国の金利水準を考えると、今がまさにその時期であると言えるのではないでしょうか。
それ以外のETFのデュレーションは、ブラックロック・ジャパンのHPで確認できます。
東証上場 iシェアーズ国債ETFラインアップ
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MKTGH0924A/S-3853877
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