アセットアロケーションとは?
アセットアロケーションという金融の専門用語は、「資産配分」という日本語に置き換えられることが多いです。これは間違いではないのですが、投資対象資産の資産クラス(資産の種類や分類)の配分を定めたものと言った方が適切でしょう。
アセットアロケーションの例
仮にアロケーションを先進国債券50%、先進国株式50%の資産クラス(アセットクラスということもあります)と定めるのであれば、次のようになります。
・先進国債券50%
・先進国株式50%
おすすめのアセットアロケーション
アセットアロケーションとは、運用資金をどの資産で運用するか、その比率を決めることです。複数の資産を分散して保有するポートフォリオは、時間の経過と共に株式や債券の価格が変動し、当初の資産配分比率が崩れてしまいます。
この資産配分比率を変更することをリバランスといいます。リバランスの方法には、定期的リバランス(全部)・定期的リバランス(一部)・乖離許容範囲内でのリバランス(全部)・乖離許容範囲内でのリバランス(一部)・ドリフト戦略(変更なし)があります。
さて、日本において広くおすすめできるアセットアロケーションとはどのような内容でしょうか。個々人によって様々な制約条件があるため、一概には言えませんが、私たち日本人の年金は世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用していますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
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国内債券 |
外国債券 |
国内株式 |
外国株式 |
資産構成割合 |
25% |
25% |
25% |
25% |
乖離許容幅 |
各資産 |
±7% |
±6% |
±8% |
±7% |
債券・株式 |
±11% |
±11% |
出所:「基本ポートフォリオの変更について」年金積立金管理運用独立行政法人
ポートフォリオとは?
ポートフォリオは英語で Portfolio と綴りますが、これはイタリア語の Portafoglio を語源としています。port は「運ぶ」という意味のラテン語で、 foglio は設計図や地図などのシートを意味します。
ポートフォリオとは、本来、設計図や地図など複数の書面をひとまとめにしたものを指します。これが転じて、金融の分野では「投資対象商品の組み合わせ」を意味するようになりました。
投資におけるポートフォリオとは、株式や債券と言った商品分類だけでなく、投資信託の運用報告書の「組入有価証券明細表」にあるように、組入れ銘柄や保有数量などを含んだ情報を指します。言い換えると「資産クラスごとの具体的な金融商品」です。
ポートフォリオの例
仮に上述のアセットアロケーションが先進国債券50%、先進国株式50%の資産クラスであるとすれば、次のようなポートフォリオが考えられます。
・A国債30%、B国債20%
・A株式30%、B株式10%、C株式10%
※A,B,Cは全て先進国の債券・株式であるとの前提
ポートフォリオは投資の具体的な対象商品を把握するために必要ですが、投資プランを立てる時にはまずアセットアロケーションを確定した後にポートフォリオを決めるのがセオリーです。
分散投資とは?
投資にはリスクがつきものですが、投資におけるリスクとは「価格の変動率(幅)」ということができます。そのため価格の変動率が小さければ低リスク、逆にこれが大きければ高リスクといえます。
一方、投資におけるリターンは「期待される収益率」と言い換えることができます。
一般的に価格の変動率(リスク)が大きければ、高い収益率が期待でき、この変動率が小さければ、収益率は低いものの多大な損失が発生する可能性は小さいといえます。
このことから、投資にはリスクコントロールが重要であることをご理解いただけると思います。
リスクをコントロールするために行う手段が分散投資で、投資対象資産を複数保有することを指します。
分散投資で心がけるべきこと
分散投資で心がけるべきことは次の2点と言われています。
・価格変動の相関度合いの低い資産や逆相関の資産を選定すること
・資産の価格変動率の水準を考慮したうえで、資産配分の比率を設定すること
株式を50%、債券を50%などと資産配分から考えるのではなく、アセットアロケーションを行う時に投資対象となる各資産クラスの価格変動率(リスク)を把握しましょう。
そして、投資家が容認できるリスクレベルを設定した後に、株式や債券などの組み合わせを決めることで分散投資によるさらなる効果が期待できます。
例として、「卵を一つのカゴに盛るな」という相場格言があります。
アメリカに昔からあることわざの「Don’t put all your eggs in one basket.」を日本語訳したものです。
「卵を一つのカゴに入れると、そのカゴを落とした場合に全部の卵が割れてしまう可能性がある。複数のカゴに分けて卵を入れておけば、そのうちの一つのカゴを落としたとしても、他のカゴの卵は影響を受けずにすむ」という意味です。
この話のように、特定の商品だけに投資をするのではなく、性質や値動きの異なる複数の資産に分散してリスクをコントロールしましょう。
投資プラン策定とリバランスの手順
アセットアロケーションとポートフォリオの決定のフローは次のとおりです。
1.投資プランを策定する前に、投資の目的や資金運用の期間を定める
2.許容できるリスク量を設定する
3.価格変動率と期待収益率に見合った資産クラスを選定する
4.リスクコントロールが必要な場合には、さらなる分散投資を検討する
5.各資産クラスのポートフォリオ(具体的な金融商品)を決定する
年に1度はリバランスの検討を
リバランスとは、保有しているポートフォリオの割合を、当初設定した割合に修正することを指します。
保有する株式や債券は価格が変動しますので、当初設定した保有割合がその値動きによって変化してしまうことがあります。
仮にある投資家が投資信託でポートフォリオを形成しているとすると、保有割合が多い投資信託を一部解約し、この解約資金を保有割合が少ない投資信託を追加購入することになります。
アセットクラスのリスク値とリターン値は月次データを積み上げた年間データを見るのが一般的であることから、少なくとも年1回のチェックをお勧めします。
なお、リバランスを行う時には費用が発生することもあるので、事前確認を怠らないようにしましょう。
また、運用資産は年々増えるに越したことがないのですが、当初目的達成後やリタイア後には徐々にリスク資産(価格変動率の高い資産)を減らしていくのがベターと言われています。