ETF(上場投資信託)とは?
ETFとは、「Exchange Traded Fund」の頭文字をとったもので、日本語では上場投資信託といいます。つまり投資信託を株式市場へ「上場させたバージョン」がETFです。
ETFは、金融商品としてはまだ歴史が浅いものの、以下の特徴があります。そのため、特に「投資信託以上、個別株式以下の難易度」で投資を始めたい人から人気を集めています。
- 特定の株式指数(日経225やS&P500など)に連動するように設計される※
- 投資資金は1口(数百円〜)
- 信託報酬(手数料)が安い
- 複数の投資先へ間接投資できる(リスク分散効果○)
- 株式と同様に売買が可能
- テーマETFなど、特定の分野に該当する株式のみで構成された指数に連動するETFや、レバレッジ・インバース型などその他種類のETFも存在します。
ただ、ETFという金融商品の中身、仕組みがわからないと「自分のお金」を使って投資しようという気にはなかなかなれないはず。
次は、ETF(上場投資信託)の仕組みについて学んでいきましょう。
ETF(上場投資信託)の仕組み
ETFの仕組みを理解するためにはいくつか聞きなれない用語を覚える必要があります。
まず、ETFが取引される「市場」についてです。ETFは2種類の市場で取引されるという特徴があります。
流通市場(個人投資家向け)
まずは、私たち「一般投資家」がETFを取引する「流通市場」です。流通市場ではわたしたち「個人投資家」と「証券会社」の間で取引が行われます。株式と同じ仕組みなのでイメージがしやすいと思います。
発行市場
一方、少々難解なのが「発行市場」です。実際のETF取引する分には覚えてなくとも問題ない知識ですから、軽く読み流してもらえればOKです。
発行市場では、以下3つのプレイヤーが取引をしています。
プレイヤー |
役割 |
運用会社 |
ETFの構成銘柄の選定、リバランス、運用全般を担当 |
信託銀行 |
ETF資産の保管・管理を行う |
指定参加者(証券会社など) |
大口投資家と運用会社との取引仲介を行う。1つのETFに対し2社以上の指定参加者が必要 |
ETFが個人投資家に流通するまでの流れ
ETFが発行され流通するまでの流れは以下の通りです。
- 運用会社がETFを作る。(銘柄選定、運用方針、信託報酬の決定など)
- 運用会社と信託銀行とで「信託契約」を行う(信託銀行が資産の保管を行う)
- 運用会社が指定参加者に株式などの現物または現金と引き換えにETFを発行する
- 指定参加者が証券市場でETFを売却
- 証券市場で売却されるETFを「投資家」が買う
実際のETF投資には必要のない知識かもしれませんが、どうやって価格が決まるのか、なぜ信託報酬が必要なのかなど、些細な疑問を解決しておくことで、抵抗なくETF投資ができるようになりますよ。
ETFの主な種類はこれらを抑えればOK
続いて、ETFにはどんな種類があるのか見ていきましょう。細かく分ければ無数に種類分けできてしまうため、この記事では「メジャーなETFの種類」を紹介します。
数あるETFの中でも個人投資家から人気なのが「株価指数連動型ETF」と「高配当株ETF」です。
国内ETFと海外ETFの違い
参考程度に、国内ETFと海外ETFの違いを簡単に説明します。海外ETF(VT、VOOなど)が人気ですが、国内ETFにもメリットがあるので覚えておくことをおすすめします。
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国内ETF
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海外ETF
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特徴 |
- 証券取引所が開いている時間に売買可能
- 取引通貨は「円」
- 証券口座があれば取引可能
- 配当金も円払い
- 外国税の二重課税調整が行われる(銘柄による)
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- 上場している国の取引時間に合わせて取引が可能
- 米国ETFの場合取引通貨は「ドル」
- 外国株口座が別途必須
- 為替手数料がかかる
- 配当金はドル払い
- 外国税額控除を受けるためには確定申告が必要
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ETFの具体例【国内ETF】
国内ETFには以下のような銘柄があります。なじみのある名前も多く、海外ETFと比べて投資ハードルが低いのが特徴です。
銘柄コード |
名称 |
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1306 |
NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信 |
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1321 |
NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信 |
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1489 |
NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信 |
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1357 |
NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信 |
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1570 |
NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信 |
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ETFの具体例【海外ETF】
海外ETFは以下のような銘柄があります。米ドルなど「外貨」で取引できるため、円安対策の一貫としても活用できます。
銘柄コード |
名称 |
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VOO |
バンガード・S&P500 ETF |
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VTI |
バンガード・トータル・ストック・マーケットETF |
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VT |
バンガード・トータル・ワールド・ストック |
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VYM |
バンガード・米高配当株式ETF |
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QQQ |
パワーシェアーズ QQQ 信託シリーズ1 |
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ETFと投資信託の違いは?
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ETF |
投資信託 |
仕組み |
上場している |
非上場 |
取引価格 |
リアルタイムで変動 |
1日1回算出される基準価額のみ |
手数料 |
割安 |
ETFと比べ割高 |
必要資金量 |
数百円〜 |
100円〜 |
次は、ETFと非常に似た金融商品「投資信託」との違いを明確にしていきます。
ETFと投資信託には以下4つの違いがあります。
- 金融商品としての仕組み
- 取引価格の決まり方
- 手数料(信託報酬の違い)
- 投資の必要資金
一番大きな違いは「上場しているか否か」です。4つの違いはこの「上場 / 非上場」によって生まれていると考えると理解がスムーズにできます。
ポイント: 上場 / 非上場で何が変わる?
上場している |
非上場 |
証券取引所(株式市場)でリアルタイム取引ができる。
自分の買いたい価格で売買できる。 |
リアルタイムで取引ができず、販売会社を通して売買される。
1日1回算出される基準価額で取引する。 |
上場の有無
ETFと投資信託における大きな違いは「上場しているか非上場か」です。
ETFの場合、証券取引所へ上場しているため「市場内」で売買が可能です。
一方、投資信託の場合は上場していないため「販売会社(運用会社)」で買うことになります。リアルタイムでの取引ではないため、購入時点で価格は分かりません。
取引価格の決まり方の違い
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ETF |
投資信託 |
取引価格の決まり方 |
リアルタイムで変動
取引中の価格は投資家の売値・買値を元に決定される |
1日に1回市場の終値に基づき算出される(基準価額) |
ETFは、上場しているため「リアルタイム」で価格変動が起こります。株式と同じような値動きをすると考えてもらえればOKです。
一方、投資信託は上場していないため、リアルタイムで価格変動はありません。「投資信託の純資産総額÷総口数」で求められる「基準価額」が1日1回決められるようになっています。
つまり、ETFは自由度の高い取引が可能で、投資信託はある程度制限があるなかで取引することになります。
ですから、デイトレードをはじめとする「短期売買」では投資信託より「ETF」の方が適していると考えられます。
コストの違い
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ETF |
投資信託 |
手数料(取引時) |
取引手数料…証券会社ごとに指定 |
販売手数料…販売会社ごとに指定 |
手数料(運用中) |
信託報酬…0.1~0.5%程度 |
信託報酬…0.5~3.0%程度 |
ETFと投資信託で、共通している手数料が「信託報酬」です。しかし、ETFの方が投資信託と比較して信託報酬が安くなる傾向にあります。
投資信託の場合は信託報酬を以下3つに支払う必要があります。
一方、ETFの場合、信託報酬の支払い先は後者2つのみ。販売会社への支払いが必要ありません。
そのためETFのほうがこの販売会社への信託報酬を抑えやすくなっているのです。
投資に必要な資金量の違い
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ETF |
投資信託 |
取引単位 |
口数指定(数百円〜) |
口数指定or金額指定(100円〜) |
最後は投資するのに必要な資金量の違いです。ETFは上場しているため、取引所価格×売買口数が最低取引金額になります。
- 例:NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信:2058.5円(2023年2月1日時点の終値)
投資信託の場合は「金額指定」で取引ができるため100円以上1円単位で取引が可能です。必要資金の少なさ・はじめやすさでは投資信託に軍配があがりそうですね。
ETFと投資信託のメリット・デメリット比較
ETFと投資信託の違いを理解したところで、次は掘り下げて「それぞれのメリット・デメリット」を理解していきましょう。
ETF・投資信託の主なメリット・デメリットは以下の通りです。
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ETF |
投資信託 |
メリット |
- リアルタイムで売買が可能
- 投資先を分散できる
- 信託報酬が割安
- 外貨のまま取引もできる(海外ETF)
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- 少額(100円〜)から取引が可能
- 投資先を分散できる
- 種類が豊富
- 分配金の再投資が自動でできる銘柄もある
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デメリット |
- 必要資金が投資信託より高い
- 商品数が少ない
- 分配金の自動再投資は不可
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- 短期売買には不向き
- 取引成立価格が購入時点で分からない
- 約定まで時間がかかるため利益予想も難しい
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ざっくりまとめると、
- 手間がかからず超少額から投資できる分、手数料や取引の自由度に弱みがあるのが投資信託
- 売買の自由度や手数料の安さが魅力的な分、必要資金や手間の多さに弱みがあるのがETF
ということができます。どちらのメリットの方が惹かれるか、デメリットが許容できるかを考えつつ、それぞれ確認していきましょう。
ETFと投資信託それぞれのメリットは何がある?
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ETF |
投資信託 |
メリット |
- リアルタイムで売買が可能
- 投資先を分散できる
- 信託報酬が割安
- 外貨での取引もできる(海外ETF)
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- 少額(100円〜)から取引が可能
- 投資先を分散できる
- 種類が豊富
- 分配金の再投資が自動でできる銘柄もある
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ETF、投資信託では共通するメリットがありますが、それぞれ特有のメリットもあります。
例えば、ETFの場合、海外ETFを保有することで「外貨」での取引が可能となり、分散投資をしながら「自由度の高い売買」も可能です。
信用取引の対象でもあるので、高リスク高リターン狙いの投資にも活用することができます。
一方で投資信託はETFよりも再投資、細かな情報収集などの手間がかからず、豊富な種類の中から気軽に投資できるメリットがあります。
特に、分配金を自動で再投資してくれる投資信託の場合「複利効果」を最大化することができますね。
【ひとこと解説】複利効果とは?
複利効果とは、元本から生じた利益から「さらなる利益」が生まれることで、雪だるま式に資産が増える効果のことです。
ETFと投資信託それぞれのデメリットは何がある?
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ETF |
投資信託 |
デメリット |
- 必要資金が投資信託より高い
- 商品数が少ない
- 分配金の再投資は自分でする必要がある
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- 短期売買には不向き
- 取引成立価格を読みづらい
- 約定まで時間がかかるため利益予想も難しい
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次はそれぞれのデメリットを確認していきましょう。デメリットを知ることは、メリットを知ること以上に重要ですからしっかりと「自分が許容できるデメリットかどうか」を判断していきましょう。
まず、ETF最大のデメリットは必要資金が、投資信託と比べて必要資金が多く必要なため、毎日、毎週の買い付けがしづらい点です。
投資信託であれば、100円から投資可能なため「毎週や毎日」などタイミングを細かく分散させることができます。(リスクの時間分散)
しかし、ETFは数百円〜数万円ずつしか買えないため、リスクの時間分散がしづらくなってしまいます。(投資資金が豊富な場合はこの限りではありません)
続いて、投資信託最大のデメリットは「リアルタイムで取引ができない点」です。リアルタイムで取引ができず、価格も当日夜になるまで分かりません。購入や売却が確定する日も商品によって異なります。
- 例:基準価額10,000円で10万円分買った場合、国内へ投資するファンドの場合当日夜(海外へ投資するファンドの場合翌日夜)まで基準価額がいくらになるかわからない(9,900円になって損する可能性もある)
では、ここまで説明したメリット・デメリットを考えるとETF、投資信託はそれぞれどんな人におすすめなのでしょうか。
ETFと投資信託-投資するならどっちがおすすめ?
以下はそれぞれの金融商品がおすすめの人、おすすめしない / 向いていない人の特徴をまとめたものです。
表を使って自分はどちらのほうがおすすめなのかチェックすれば、理想や性格、考え方にマッチした方を選ぶことができるはずですよ。
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ETF |
投資信託 |
おすすめの人 |
- ある程度まとまった資金を投資したい人
- 配当金を受け取りたい人
- 短期〜長期の幅広い時間軸で投資したい人
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- お試し感覚で投資を始めたい人
- 手間をできるだけ少なく済ませたい人
- 少額でこつこつ積立投資をしたい人
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おすすめしない / 向いていない人 |
- 少額から積立投資したい人
- 売買判断などが面倒に感じる人
- リアルタイムの値動きが気になりすぎる人
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- 短期利益を狙いたい人
- 手数料をなるべく抑えたい人
- 取引価格がリアルタイムで分からないことが大きなデメリットに感じる人
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ある程度まとまったお金を投資したい、短期、中期利益も狙いたい場合は「ETF」、長期投資を少額から始めたい場合は投資信託がおすすめです。
ETFの投資方法【国内ETF・海外ETF】
最後に「ETFに投資してみよう」と思った人向けにETFの投資方法を簡単に解説して終わります。
国内ETF、海外ETF、自分の興味がある方の投資方法をチェックしてみましょう。
国内ETFの投資方法
国内ETFに投資をする場合は以下5ステップで完了します。
- 証券口座の開設
- 投資必要資金を入金する
- 投資先の銘柄を決める
- 注文を出す
- 約定したら買い付け完了!
証券口座選びやETF選びで迷っている方は以下のページを参考にしてみてください。
証券口座選び ETF選び
海外ETFの投資方法
海外ETFへ投資する場合は、国内ETFより少々手間が増えます。
- 証券口座&外国株口座の開設
- 投資必要資金を入金する(円貨決済/外貨決済)
- 投資先の銘柄を決める
- 注文を出す
- 約定したら買い付け完了!
具体的には「外国株口座の開設」と「外貨の用意」が追加で必要になります。特に円貨決済を選ぶと「為替手数料」がかかるので注意が必要です。
為替手数料をなるべく安く抑えるためには、「外貨」を自分で調達してから入金するようにしましょう。
【外貨の調達方法】
- 証券口座内で外貨両替をする
- 外貨預金で外貨を用意して入金する
- FXで外貨を現引する
ただ、SBI証券の「ETF積立」のようなサービスを活用すれば外貨両替の手間もなく、自動で買い付けてくれるのでめんどくさがりやな人にもぴったりです。
まとめ
今回はETFの基礎〜実践知識まで解説しました。気になっていたポイントは解消できましたか?
ETFは、投資初心者から上級者まで幅広い投資家層に人気の金融商品です。あなたもお気に入りのETF銘柄を見つけてみませんか?