ESG投資は賢い資産形成の一手なの?
度々話題になっている「ESG投資」ですが、ESG投資は資産形成の手段として適しているのでしょうか。確固たる答えを今ここで出すことはできませんが、おそらく「資産形成に向いている」と言えるだけの客観的情報ならあります。
それは「GPIF(年金積立金管理運用独立法人)」つまり我々の積み立てた年金資金を運用している法人が「ESG投資」に踏み切っているという事実です。
GPIFは、年金制度を数世代先も維持させるため、年金の財源の一部である積立金を投資によって増やしています。なぜ、GPIFがESG投資をしているかというと、ESG投資をすることで社会貢献するといったことではなく「長きにわたり、より持続的なリターンを得るため」(GPIF HPより)であり、合理的判断の結果なのです。
個人の資産運用、特に将来へ向けた資産形成のための長期投資においても、ESG投資でより良い運用成果を目指すことは、合理的であるといえるでしょう。
インデックス投資の新たな潮流 ESGインデックス
ESG投資はGPIFも実践している将来性のある投資方法だということはお分かりいただけたと思います。しかし、個人単位の投資ではESGを行っている企業に個別投資をして運用益を積み上げていくのはなかなかハードルが高いですよね。
「じゃあ投資信託で高パフォーマンスのものを探そう!」と銘柄を調べてみても比較的リスクの高いアクティブファンドばかりで長期運用に最適とはいえないのが現状です。
そうなってくると、ESG投資ができるインデックス型投資信託があれば一件落着ですよね。
そこで今回は、長期的にESG投資ができる投資信託を例に挙げながら「ESGインデックス投資」はどういった特徴で、どれくらいのパフォーマンスが期待できるのか検証して行きたいと思います。
ESGインデックス投信で長期的な運用が可能に!
今回は、「野村インデックスファンド・先進国ESG株式(Funds-i 先進国ESG株式)」というESG投信の情報を元に、ESG投資の将来性や魅力について紹介していきます。
「野村インデックスファンド・先進国ESG株式(Funds-i 先進国ESG株式)」は、2021年1月21日に設定・運用を開始。ESGに着目し、「FTSE4Good Developed 100 Index」の動きをとらえる投資成果を目指す、インデックスファンドです。
それでは「FTSE4Good Developed 100 Index」は、どんな特性の指数なのか?
「FTSE4Good Developed 100 Index」」を連動対象の指数とした背景やインデックスの特徴を、直接、運用会社である野村アセットマネジメント株式会社様にお伺いし、詳しく取材しました。
その上で、長期運用の投資先として「ESGインデックス投信」を選ぶことは、合理的なのか考えてみたいと思います。
お答えいただいたのは、野村アセットマネジメント株式会社 プロダクト・マネジメント部 シニア・プロダクト・マネージャー 安藤祐介さんです。
「FTSE4Good Developed 100 Index」ってどんな指数?
1. 野村インデックスファンド・先進国ESG株式(Funds-i 先進国ESG株式)の設定経緯
― 注目の集まるESG投資をローコストなインデックス投資で
ESG投資への関心の高まりから、ネット証券中心に取引をしている資産形成層のお客様へ、コストを抑えたESGのインデックスファンドをお届けしたいと考えました。
2. 「FTSE4Good Developed 100 Index」を連動するESGインデックスとした理由
― 信頼とパフォーマンス
資産形成を行うお客様は、積立投資で投資期間が長くなるため、信頼感のある指数を選びたかったからです。そして、もちろんパフォーマンスにも注目しました。
3. 「FTSE4Good Developed 100 Index」の指数の歴史
― SRI(社会的責任投資)の指数として開発され、2001年6月に算出開始 2014年からESGレーディングモデルで運用中
「FTSE4Good Developed 100 Index」は、英国で2000年に制定された、倫理的取組や環境問題への考慮を年金運用方針へ反映する規制を受け2001年6月29日に算出を開始しました。
当初は、SRI(社会的責任投資)の指数として開発され、その後、社会的な要請・規制を含む基準を継続的に組み入れることで、そのテーマ数を7つまで増やしてきました。
その後、全面的な改訂を実施し、現在の14テーマを用いたESGレーティングモデルで2014年9月から運用しています。
指数の名前にESGの文字は入っていませんが、時代の要請に応じ基準となるテーマを増やし、目論見書記載のESG選定基準となっています。
- 上記は、2020年11月末現在のFTSEの資料等に基づいて野村アセットマネジメントが作成したものです。
- 資⾦動向、市況動向等によっては上記のような運用ができない場合があります。
4. 「FTSE4Good Developed 100 Index」の指数の特徴
― 透明性の高いスコアリング
他のインデックスだとアナリストによる評価など独自の判断でスコアリングしている部分があったりしますが、当インデックスは、そういったことはなく、非常に透明性の高いインデックスであるといえます。
構築プロセスにおける特徴として、企業そのものを選ぶことがあります。スコアに応じて配分比率を調整し、多くの企業を対象とするインデックスもありますが、「FTSE4Good Developed 100 Index」は、スコアが低い企業の比率を下げるのではなく、指数に採用しないという判断をします。
より企業を厳選する手法をとり、その上で、時価総額の大きな企業100社程度が採用されるESGのエリート中のエリートインデックスなのです。
― 巨大テック企業のAmazonやfacebookが組入れられていない理由
アマゾンは小売に加え、電気機器の製造・販売などが含まれ、また活動国がリスクの高い地域を含む20カ国と多岐に亘ります。そのため、11個のESGテーマ(E:3つ、S:4つ、G:4つ)が適用され、それぞれのリスクレベルが総じて高いものとなっています。
調査される項目数が多いことに加え、税の透明性に関するスコアが0になるなど、情報開示がそれほど進んでいないことが低スコアになる要因です。
フェイスブックは売上高割合を考慮しインターネットのみが業種適用され、活動国もアマゾンと比べ2カ国(シンガポール、アイルランド)と少なく、適用されるESGテーマは6個(E、S、G:それぞれ2つ)、リスクレベルも概ね低いものとなっています。
調査される項目数はアマゾンと比べ少ないものの、Sの分野での労働基準や人権に関する開示が低く、ESGレーティングが未達の要因となっています。
― ESGに完全特化した算出
他のESGインデックスは、市場全体を表す親指数に合わせる形で、業種配分を調整するのが一般的です。一方、「FTSE4Good Developed 100 Index」は、業種ごとのウェイト調整はしません。
結果、ESGに特化したインデックスとなっています。
5. 市場全体を表す指数や他のESGインデックスとのパフォーマンス比較
― MSCIワールドを上回るパフォーマンス
先進国株式の代表的な指数であるMSCIワールドと比較したのが下のチャートです。
- 出所:Bloombergデータを基に野村アセットマネジメント作成。いずれも税引き前配当込み・円ベース。
- 上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、ファンドの運用実績ではありません。ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
グローバルのESG関連の投信、ETFへの資金流入は、2010年から2018年までは年間、1兆円から2兆円程度でしたが、2018年頃から増加し始め、2018年は6兆円、2019年は、18兆円、そして2020年37兆円と加速しています。
要因はいくつかあると思いますが、グローバルな規制機関や政治の動向がESG寄りになったことを受け、企業の経営体制にも変化が出てきたことがあります。
実際の運用でもESGを重視しているかどうかでパフォーマンスが違ってきており、以前のSRI(社会的責任投資)と異なり、ESGは、投資には不可欠なもの、投資に必要なものとなっている状況です。
― 他のESG関連インデックスも上回るパフォーマンス
「MSCI Word ESG Leaders」、「S&P Global 1200 ESG」と比較したのが下の表です。「FTSE4Good Developed 100 Index」のパフォーマンスの良さがお分かり頂けると思います。
- 出所:Bloombergより野村アセットマネジメント作成、2021年3月基準、いずれも税引き前配当込み・円ベース・年率
採用企業を厳選していることや、業種ごとのウェイト調整をしないなどのインデックスの特性が、パフォーマンスに反映しているのですね。
「信頼性」と「パフォーマンス」。「FTSE4Good Developed 100 Index」を、ファンドの対象インデックスに選んだ理由が良く分かりました。
ESGインデックスへの投資はアリ?ナシ?
「野村インデックスファンド・先進国ESG株式(Funds-i 先進国ESG株式)」が連動を目指している「FTSE4Good Developed 100 Index」は、市場全体を表す指数を上回るパフォーマンスとなっており、特に直近、3年間はその傾向が顕著です。
- 出所:Bloombergデータを基に野村アセットマネジメント作成。いずれも税引き前配当込み・円ベース。
- 上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、ファンドの運用実績ではありません。ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
背景には世界的なESGへの関心の高まりがあり、この傾向は今後も続くものと思われます。その意味で、資産形成において自身の資産を世界の経済成長と合わせて増やしていこうと考えるに基づくならESGインデックスを選択することが、より合理的であるといえるでしょう。
また、他のESGとの比較においても優位性が確認されます。その要因は、インデックス採用企業の選定基準や構築のプロセスにあると考えられることから、優位性の継続が見込まれます。
資産形成にESGの視点を取り入れるか否か・・・短期間では、大きな違いはないと思われますが、長期間の投資となる資産形成においては、ESGの観点を取り入れるのとそうでないのとでは、将来、大きな差となる可能性があるでしょう。
【当資料で使用した市場指数について】
野村インデックスファンド・先進国ESG株式は、FTSE International Limited(以下「FTSE」)、ロンドン証券取引所(以下「取引所」)、(以下総称して「ライセンス供与者」と呼ぶ)のいずれによっても、後援、推薦、販売または販売促進されるものではありません。ライセンス供与者は、FTSE4Good Developed 100 Index(以下、本指数)の使⽤およびいかなる時点における本指数値の利⽤から⽣じるいかなる結果に対しても、明⽰的か黙⽰的かを問わず、何ら表明や保証を⾏うものではありません。本指数はFTSEにより編集、算出されます。ライセンス供与者は本指数の誤差脱漏について何⼈に対しても責任を負わず(過失の有無を問わず)、かつ本指数の誤差脱漏に関して通知する義務を負いません。FTSE®は、取引所の登録商標であり、ライセンスに基づいてFTSEが使⽤しています。
MSCI World指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他⼀切の権利はMSCIに帰属します。また MSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停⽌する権利を有しています。
以上、今回は、ESGインデックスファンド「野村インデックスファンド・先進国ESG株式(Funds-i 先進国ESG株式)」についてご紹介しました。中長期的な資産形成の選択肢の1つとして、ぜひチェックしてみてください。