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シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第6回「令和時代の未来は "メイド・ウィズ・ジャパン"」

インタビュー
配信元:NTTデータエービック
著者:渋澤 健
投稿:2020/10/13 15:00
シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第6回「令和時代の未来は "メイド・ウィズ・ジャパン"」

シブサワ・レター ~こぼれ話~
第6回「令和時代の日本の未来は ”メイド・ウィズ・ジャパン”」
 
日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。
 
第6回のテーマは「令和時代の日本の未来は ”メイド・ウィズ・ジャパン”」です。

 

 

 

 

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

令和時代初の新政権が発足し、日本で新しい成功体験が築かれることを私は期待しています。

 

人口動態がピラミッド社会であった昭和時代の成功体験は「メイド・イン・ジャパン」でした。良質な製品を大量生産することで、主に先進国の大量消費の需要を満たし、日本は大成功を遂げました。

一方、この日本の台頭で最大の海外市場であったアメリカから強いバッシングを受けるようにもなりました。

 

平成時代に入った日本は、人口動態がひょうたん型社会に変化。

そして日本は、「ごめんなさい、貴方の国でつくります」と「メイド・バイ・ジャパン」に転じ、一定の成功を収めることができました。

ただ、GDPなどの経済成長は鈍化し、日本は自信喪失に陥り、リスク許容度が著しく低下。気がつくと、日本はバッシングから、パッシング(素通り)されるようになってしまいました。

 

今から10年ほど前に、私は2020年が日本の時代の新たな節目になるのではないかという未来を見込んでいました。

なぜなら、2020年頃から、人口動態がひょうたん型社会から逆ピラミッド型社会へと一気に加速するからです。

 

その結果、今まで日本が体験したこともない規模の社会的課題が生じることは間違いないと考えていました。

一方、過去の成功体験を創った世代から、次の成功体験を創るべき世代へと、バトンタッチが全国規模で生じる時代の節目でもあります。

 

この令和時代の成功体験とは何になるべきか。

私は、「メイド・イン・ジャパン」ではなく、「メイド・バイ・ジャパン」でもなく、「メイド・ウィズ・ジャパン」になることに期待しています。

日本が世界に対して、一緒に持続可能な豊かな経済社会を共創しましょうという強い意思表明の呼びかけです。

 

特に日本からの呼びかけに好感を示してくれるのは、世界で数多い新興国・発展途上国ではないでしょうか。

アジアではインドネシアやインドなど、そしてアフリカ大陸の国々の過半数を占めている国民は若い世代です。これら若手世代が求めているものは何か。

 

仕事に就いて、生計を立て、家族を養う。日本では当たり前だと思われている生活です。

ここに、まだ成長の伸びしろがあると考えています。その成長が持続可能なものとなるよう、支えて関与することで事業展開できる日本企業は、大企業のみならず全国の中小・ベンチャー企業にも多く存在すると思います。

 

お互いにウィン・ウィンの関係を築き、相手国からも不可欠なパートナーとして重視されるような存在になれことができれば、日本国内の人口がこれから減ったとしても、そこには豊かな生活が築けるのではないでしょうか。

 

これが「メイド・ウィズ・ジャパン」という令和時代の成功体験です。

 

「メイド・ウィズ・ジャパン」は壮大な目標であることに間違いありません。ただ、SDGs(持続可能な開発目標)の精神にもしっかりと応えている成功体験であります。

従って、SDGsの達成を世界が目指す2030年までに「メイド・ウィズ・ジャパン」が世界的ブランドにもなっていることを期待したいと考えています。

 

「メイド・ウィズ・ジャパン」の実現に対して、まずは民間企業が自助努力により邁進することは不可欠です。ただ、SDGsと同様、壮大な目標を1社だけで成し遂げることは難しく、共助による他業他社とのコラボレーションが必要となるでしょう。

 

そして、この動きをさらに促す呼び水や前進を後押しするための公助も大事になります。「メイド・ウィズ・ジャパン」を実現させるという文脈で、国家戦略の先行投資としてODA(海外開発援助)をさらに活用するという再構築の議論を進めることが重要だと思われます。

 

国際協力は日本の信用力へとつながり、国の信用力は国民が活用できる資本となります。

 

日本のODA支出が他国と比べ、大きく劣後している訳ではありません。

2018年のデータでは、米国(34,521百万ドル)、ドイツ(28,637百万ドル)、英国(19,656百万ドル)に続いて日本(17,250百万ドル)は世界第四位です。

 

ただ、対GDP比率では、ドイツ(0.72%)、英国(0.69%)と比べると日本(0.35%)のODA支出は約半分です。そして、何より目を引くのは、日本のODAの内訳です。

 

日本のODAは「インフラ」が3割を占めて圧倒的に多く、「水・衛生」、「保健」、「教育」などベーシック・ヒューマン・ニーズ(人間の基本的諸要件)が全体の25%です。これは他国と比べると半分以下の支出配分です。

 

「メイド・ウィズ・ジャパン」という成功体験を実現させるためには、人々の生活の基盤づくりは大変大事だと考えています。

 

遠い国の人もともかく、日本は自国で多くの課題を抱えている。この指摘はその通りです。

ただ、ODA保健分野の支出額は日本の国民一人あたり700円ぐらい。仮に、この金額が倍になっても、それが国内の社会的課題ニーズから貴重な財政財源を横取りしていると言える規模ではないと思います。

 


□ ■ 付録:「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。http://y.bmd.jp/bm/p/aa/fw.php?d=70&i=ken_shibusawa&c=114&n=15234


   『論語と算盤』勇猛心の養成法

   要するに我が国今日の状態は、
     姑息なる考をもって、
   従来の事業を謹直に継承して足れり
     とすべき時代ではない。

     また創設の時代であって、
     先進国の発展に企及し、
   更に凌駕せねばならぬであるから、
     一般に一大覚悟をもって、
   万難を排し勇住猛進すべき時である。

 

昭和時代の成功体験や平成時代のトラウマに囚われることなく、渋沢栄一が提唱するように令和時代の新たな「創設」の実現に我々は取り組むべきです。


  『渋沢栄一 訓言集』道徳と功利

     天より人を視れば、
 みな同じく生みしところのものである。

 ゆえに四海の人々はみな兄弟であるから、
 人々相親しみ、相愛して、衣食住を営むは、
     天に対する務めである。

 

天から見れば、ウチもソトもなく、国境も見えないでしょう。

そういう意味では「メイド・ウィズ・ジャパン」は、それほどの飛躍ではありません。このような当たり前なことをやる当たり前の国を、現在の世の中は求めています。


謹白

 

 
❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。

渋澤 健
 

【著者紹介】

渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

 

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