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みんかぶプレミアムとは前回、前々回は、「つみたてNISA」の以下の要件①と②を説明する中で、投資信託の信託期間や分配金などについて触れてきた。
今回も引続き要件の説明となるが、要件③の説明は、投資信託や「つみたてNISA」そのものとは少し離れてしまうかもしれない。
しかし、投資の知識として知っておいてもよいものだと思うので、お付き合い願いたい。
「つみたてNISA」の基本的な共通要件は、以下の通りである。
① 信託契約期間が無期限又は20年以上であること
② 分配頻度が毎月でないこと
③ ヘッジ目的の場合等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと
④ 告示で定める要件を満たしていること
さて、今回のこの③には、普段あまり馴染みのない単語が出てきている。
「ヘッジ」とか、「デリバティブ取引」という用語である。今回はこれを説明していく。
まず「デリバティブ取引」だが、これは、金融広報中央委員会のウェブサイト「知るぽると」によると、次のように説明されている。
「(前略)デリバティブの取引には、基本的なものとして、その元になる金融商品について、将来売買を行なうことをあらかじめ約束する取引(これを先物取引といいます)や将来売買する権利をあらかじめ売買する取引(これをオプション取引といいます)などが(中略)あります。デリバティブはそれぞれの元となっている金融商品と強い関係があるため、デリバティブ(derivative)という言葉は、日本語では一般に「金融派生商品」とか「派生商品」などと訳されています。」(下線部は筆者)
デリバティブ(derivative)という単語は、「派生的な」とか「派生」という意味である。
カタカナにすると、「配送」や「配達する」を意味するデリバリー(delivery)やデリバー(deliver)に似ているが、そもそも英語のスペルが違う(「r」と「l」)し、全く関係はない。
このデリバティブという金融派生商品には、元になっている金融商品があるというのだが、それは何かというと、例えば日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの株価指標が代表的なものといえるだろう。
そして、デリバティブ取引の特徴的なことは、先物取引であれば、「売り建て」ができる、ということだ。
どういうことかというと、通常、モノを売買する場合は、自分が持っていないモノを買い、持っているモノを売る、ということになる。
ところが、デリバティブ取引では、例えば先物取引であれば、自分が持っていないモノ、ここでは「株価指数先物」という商品になるが、それを売ることができるのだ。
またオプション取引であれば、「権利の売買」、つまり「買う権利(コールオプション)」や「売る権利(プットオプション)」の売買もできるのである。
そして、原則として、先物取引もオプション取引も新規に取引をした場合は、決められた期日までに反対の売買をして決済をする必要がある、という特徴があるのだ。
普段の生活からはイメージしにくいので、すぐ理解することは難しいかもしれない。
そこで今回は、この「デリバティブ取引」の特徴や利用方法の中から、先ほど出てきた「ヘッジ」に関係する、先物取引の「ヘッジ目的」の利用、というものに限定して説明してみることにする。
まず、要件の③では、「ヘッジ目的等の場合を除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと」とある。これは、どういうことなのか。
これは、「つみたてNISA」の対象となるファンドでは、先物取引やオプション取引などの「デリバティブ取引」を「ヘッジ目的」以外の目的で使用してはいけない、ということである。逆に言えば、「ヘッジ目的」であれば、デリバティブを使用してもいい、ということになる。
では「ヘッジ」とは何か。
「ヘッジ」という用語について簡単に説明してみよう。
「ヘッジ」とは、本来「防御」、「保険」、「押さえ」というような意味である。ただ、金融・投資用語として使う場合は、「回避」という意味で使うことが一般的だ。
つまり、「ヘッジ目的」ということは、(何かを)「回避する目的」という意味になる。
では、「何を」回避するのだろうか。
投資で「ヘッジ目的」という場合、一般的には「価格変動を回避する目的」という意味になる。この場合の「価格変動」は、下落する場合だけではなく、上昇する場合も該当する。
例を挙げて説明しよう。
例えば、日経平均株価に連動するインデックスファンドで考えてみる。そのファンドの資産の一部を、株式には投資しないで、現金のまま保有していたとしよう。すると、その現金部分は、株式ではないのでほとんど値動きはしないし、株価指標である日経平均株価にも連動しない部分である。
つまり、ファンド全体で日経平均株価に連動しなければならないファンドが、資産の一部が現金であるために、連動率が低下してしまうのである。
現金の部分がファンド全体の10%あるとしたら、ファンドとしては9割しか日経平均株価に連動しない。日経平均株価が10%上下する際、ファンドは9%しか上下しない、ということになる。
そこで、ファンド全体を日経平均株価に連動させるために、ファンドにある現金の一部を使って「日経平均株価先物」を買い、あたかも現物の株式を保有しているかのように、株式の代替として使うのである。それによって、ファンド全体の日経平均株価への連動率を高めようとするのだ。
この場合の「日経平均株価先物」の使い方は、先物の買付を行う「買い建て」という方法であり、「買いヘッジ」という言い方をする。
多くのインデックスファンドは、日経平均株価や東証株価指数などへの連動率を100%に近づけるために、現物株式を組入れることで株価指標の動きを再現しようとする。
しかし、どうしてもファンド内には一部現金が残ってしまうことがある。また、顧客の換金(解約)に対応するために現金を用意しておくこともある。
この現金部分は株価指標に連動しない部分となるので、先物の「買い建て」を行い、より連動率を高めようとするのだ。言い換えれば、現金部分があるために連動率が悪くなるという、「価格変動」の鈍さを「回避する」目的ということになる。
また、先物取引には、「売りヘッジ」という使い方がある。
これは、今後、株式市場全体の波乱(下落)が予想される場合に、売買手数料などのコストをかけて現物株式を売却して、株式の組入率を引き下げて値下がりを回避する代わりに、例えば東証株価指数(TOPIX)先物の売付を行うことで、値下がりを部分的にでも回避しようとする方法である。
これにより、株式の組入率を引き下げたことと同じ効果となるのだが、これを先物の「売り建て」という。先物の「売り建て」は、保有株式の価格下落という価格変動を、部分的に回避する目的で使うケースが多い。
このように、先物取引の場合は、最初の取引を「買付」からではなく、「売付」から始めること(「売り建て」)ができるのである。
この「売り建て」は、決められた期日までに、反対売買を行う(「売り建て」の場合の反対売買は「買い」になるが、これを「買い埋め」という)か、最終決済期日に決定される清算価格によって最終決済を行うか、のどちらかの方法によって決済することになる。
「つみたてNISA」の対象となる投資信託では、このような「ヘッジ目的等の場合」に限り、先物などのデリバティブ取引を利用することができるのだ。
しかし、それ以外の目的では、デリバティブ取引は行えない、ということになっている。
「つみたてNISA」では、多くのインデックスファンドが対象商品に指定されているが、インデックスファンドでは株価指標への連動率を高めるために、上記のような「買いヘッジ」を行うことがある、ということは覚えておこう。
(アセットマネジメントOne 「たわらノーロード日経225」交付目論見書より抜粋)
さて、最後の④に移ろう。④は「告示で定める要件」となっている。
この「告示」とは、平成29年3月31日付の「内閣府告示第五百四十号」のことをいっている。内容はやや難しくなるので割愛するが、その中で、「つみたてNISA」の対象となる投資信託を更に3つのカテゴリーに分けて、細かい要件を定めている。
その3つのカテゴリーの1つは、「指定するインデックスに連動する一定の投資信託」で、「指定インデックス投資信託」といわれている。令和3年6月18日現在、173ファンドが指定されている。
そして、2つめは、「マーケットから継続的に選択・支持されている一定の投資信託」で、「指定インデックス投資信託以外の投資信託」とされている。同じく19ファンドが指定されている。
最後のカテゴリーは、「指定されたインデックスに連動する一定のETF」であり、7ファンドが指定されている。
これら3つのカテゴリーの対象となる商品には、①~③の基本的な要件に加えて、それぞれ独自の要件が定められているのである。
「つみたてNISA」のこの3つのカテゴリーの具体的な要件については、次回以降に詳しく説明していく。
ポイントとしては、3つ目の「ETF」以外は、販売手数料が「ノーロード」(手数料がゼロ)とされていること、そして、3つのカテゴリーとも、信託報酬がそれぞれ一定の料率以下でなければならないこと、つまり信託報酬が低く設定されていること、である。
金融庁は、コストの観点から、長期投資を行う投資家に負担の少ない投資信託を指定している、といっても過言ではないだろう。但し、コストが相対的に低く、金融庁が指定している投資信託だからといって、リスクが低いということを意味するものではない点には注意が必要だ。
今回は、「つみたてNISA」に直接関係する内容ではなかったが、投資に関する基礎知識としては知っておいていいものだと思う。
次回は、3つのカテゴリーのうち、一番ファンド数の多い「指定インデックス投資信託」について説明していく予定だ。
【著者紹介】
大地 恒一郎(おおち こういちろう) (コラムネーム「土ノ江健人」)
株式会社アセットデザインラボ 代表
1979年 慶應義塾大学卒業
1979年 電源開発株式会社 入社
1986年 日本DEC株式会社 入社
1987年 日興証券投資信託委託株式会社 入社 (現 日興アセットマネジメント株式会社)
(31年間の在職中 2002年~2005年執行役員、その他、商品企画部長、 マーケティング部長、人事総務部長、監査部長などを歴任)主に、投資信託の運用、トレーディング、新規投資信託の企画・開発、既存投資信託の管理、マーケティング・営業、人事、内部監査等に携わる
2019年 FP事務所 株式会社アセットデザインラボ設立
現在 投資初心者向けの投資信託、資産運用、つみたてNISA・iDeCoなどのセミナー、地方自治体向けライフプランセミナーなど各種研修・セミナー、企業型確定拠出年金新人研修などで講師を務める。
「東証マネ部!」への取材協力の他、コラム執筆などを行っている。
<資格> AFP、2級FP技能士、証券アナリスト(CMA)、証券外務員、1級DCプランナー、企業年金管理士、住宅ローンアドバイザー、賃貸不動産経営管理士、土地活用プランナー、マンション投資アナリスト 等
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