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みんかぶプレミアムとは今回も引き続き、「ひふみプラス」の「投資信託説明書(交付目論見書)」について説明していこう。
このトリセツ(8)では、3ページにある「主な投資制限」と「分配方針」を見ていく。
と言われても、字面を見ただけでは、何か難しそうに感じるかもしれない。確かに「制限」とか「方針」などは堅いイメージがある。
ただ、この3ページも実は、1ページから始まっている「ファンドの特色」の一部分なのである。「ファンドの特色」という大事な部分なので、きちんと読めるようになっておきたいところだ。
以前トリセツ(3)で投資信託協会が定めるガイドライン、「交付目論見書に関する規則」について触れた。その中で、この部分は次のように定められている。
『「投資制限」、「分配方針」等のファンドの特色となる事項を記載するものとする』
つまり、「投資制限」と「分配方針」もファンドの特色の一つであり、それをトリセツできちんと記載するように求められているのである。
なぜ、この2つが特色と言われているのか。
まず「投資制限」だが、「特色1」で見たように、「ひふみプラス」は「国内外の上場株式を主要な投資対象」としている。
こういう特色がありながら、例えば、「上場株式には20%しか投資できない」という投資制限があったとしたらどうだろう。
これでは、「国内外の上場株式を主要な投資対象」とすることはできないだろう。
そのため、「ひふみプラス」の特色に沿った運用を行えるように投資制限を設け、それを明示しているのである。
投資制限と言っているが、中には「制限を設けません」という表現がある。
ややこしいが、これも「制限を設けない」という制限の一つである。
このページの「主な投資制限」を見ると、①は協会の規則に従う、ということであり、②から⑤までが、「ひふみプラス」独自の制限となっている。
ここで確認しておく必要がある制限は、このファンド独自の部分だろう。
ファンド独自ということは、そのファンドの特色ということになる。
ここでは、④に注目しておきたい。
「「外貨建資産」への実質投資割合には制限を設けません。」となっている。
この意味するところは、極端なことを言うと、「ひふみ投信マザーファンド」に組入れる株式が全て海外株式になったとしても、投資制限を逸脱することにはならないという意味である。
「ひふみプラス」が投資している「ひふみ投信マザーファンド」の海外株式比率は、2016年10月時点で0%であったが、2020年3月31日現在では11.5%となっている。
この組入比率が今より高くなることもあり得るし、下がることも考えられる、ということである。
注意しておくことは、トリセツ(4)で説明したように「ひふみプラス」は、「為替ヘッジなし」のファンドであるということだ。
ということは、この海外株式の組入比率が高くなると、その分、外国為替相場の影響を大きく受けることになる、ということである。
組入れている海外株式の比率が高くなり、その国の通貨が日本の「円」に対し弱くなる(交換価値が低くなる)場合、つまり「円高」になる場合は、海外株式に投資している部分は、その影響を受けて目減りする可能性がある、という点は押さえておきたいところだ。
次に「分配方針」である。
投資信託における「分配」はよく話題になるテーマである。
そして、この「分配」によって支払われる「分配金」は、預貯金の「利息」とは根本的に違うものであることを理解しておいていただきたい。
ここでは詳しく触れないが、全く別物であると思っておいてほしい。
投資信託における「分配」については、60年以上の日本の投資信託の歴史の中でも、いろいろな議論が行われてきた。
このテーマだけでレポートが書けるようなものなのである。そのため、簡単な説明にとどめておく。
ここには、「ひふみプラス」は毎年1回決算を行い、その決算時に分配を行う、と書いてある。しかし、重要なのは次の下線の部分である。
つまり、レオス・キャピタルワークス株式会社の判断により分配を行わない場合もある、ということだ。
この「分配方針」は、分配頻度などファンド独自に決めている部分なので、ファンドの特色の1つということになる。
補足だが、投資信託協会は、投資信託の分配金に関する運用会社の業務運営について、決議を行っている(「正会員の業務運営等に関する委員会決議」)。
その内容は、分配金の検討・決定を行う会議体や役員等の関与などの決定プロセスなどを盛り込んだ運営マニュアル等を整備し、それに基づいた運営の徹底を運用会社に求めるものである。
ここからも、分配方針や分配金は、ファンドにとって重要な部分ということがお分かりいただけるだろう。
では投資信託の「分配」とはどういうものか、その分配方針の内容を見ていこう。
まず①だが、「分配対象額の範囲」とは、ファンドの中のどのお金を分配に充てることができるか、という意味である。
お金には色は付いていないが、投資信託では、投資家から集めたお金を元本として、色を付けている。
そして、そのお金を投資した結果、利益が出たのか、損失となったのかを、追跡している。
また、投資した株式や債券から配当金や利息を受け取ることもある。そして、それらにも色を付けて区別しているのである。
例えば、ファンドに元本10万円があり、その全額でAという会社の株式を購入したとする。
すると、A社の株式を保有することになるが、現金はなくなるので、この瞬間は分配するための原資はないという状態になる。
ここでA社が、株主に10万円あたり1千円の配当をすると、1千円の配当金という現金がこのファンドにも支払われる。
ここで、分配可能な原資として、現金1千円がファンドの口座に入るのだ。
その後10万円で購入した株式が値上がりし11万円で売却できたとする。
すると投資金額10万円に対し、1万円の利益(売買益)を加えた11万円という現金がファンドの口座に入る。配当金1千円も加えて、ファンドの口座残高は11万1千円となる。
①で言うところの「配当等収益と売買益(評価益を含みます。)等の全額」とは、ここでいう1千円の配当金や1万円の売買益の合計、つまり1万1千円のことになる。
そして一般的に、私たちが直接株式投資をする場合、通常これらの配当金や売買益が発生した場合、配当課税や譲渡益課税として、税金が課せられる。
しかし、投資信託の場合、信託銀行の口座で配当金や利息を受け取っても、また、株式や債券の売買によって発生した利益を受取っても、この段階では課税されない。(所得税法176条(「信託財産についての利子等の課税の特例」))
ではいつ課税されるのかというと、投資信託(ファンド)を保有する投資家(受益者)が、投資信託(ファンド)から分配金を受け取る際や、投資信託(ファンド)を売却する際に利益が発生した場合に課税されるのである。
次に②であるが、ここには、分配金額は、レオス・キャピタルワークス株式会社が決めるということが書いてある。
何に基づいて決めるのかというと、「基準価額水準・市況動向等」を勘案する、とある。
ここで「基準価額」という用語が出てきたが、これは「ひふみプラス」という投資信託(ファンド)の毎日一回決まる日々の値段のことと考えておこう。
正確に言うと、値段ではなく信託財産の1万口あたりの価値なのだが、難しくなるので「日々の値段」としておく。
つまり、決算時の「ひふみプラス」の値段や、株式市場や債券市場などの市況動向を考慮して決める、ということである。
そして③では、利益が出ても分配を行わなかった場合は、その利益を「運用の基本方針に基づき運用」すると言っている。
ここで「運用の基本方針」という用語が突然登場したが、これはここまで説明してきた内容で言えば、「ファンドの特色」のこと、と考えていいだろう。
つまり分配しなかった利益も元本と一緒に、「ファンドの特色」に書かれている仕組みで運用します、ということである。
次回は、「投資リスク」を説明していこう。
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《著者紹介》
土ノ江 健人
長年、投信会社で、ファンド運用からファンド企画・管理、マーケティング等の投信業務に携わる。投信会社退職後は、それまで培った知識と経験、豊富な人脈を生かし、ファイナンシャル・プランナーとして今後、資産形成の中核となる投資信託のさらなる普及・拡大を目指して多方面で活躍中。
配信元:NTTデータエービック
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