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シブサワ・レター ~こぼれ話~第59回「混沌とした世界の中で日本の可能性を生かす」

インタビュー
配信元: NTTデータエービック
著者: 渋澤 健
投稿:2025/03/13 09:45
シブサワ・レター ~こぼれ話~第59回「混沌とした世界の中で日本の可能性を生かす」

シブサワ・レター ~こぼれ話~

第59回「混沌とした世界の中で日本の可能性を生かす」

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日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。

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第59回のテーマは「混沌とした世界の中で日本の可能性を生かす」です。

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謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

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私が小学二年の幼少期から大学卒業まで育った地であるアメリカが、自分の人生と重なるこの半世紀以上の中で最も酷い状態に陥っていると嘆いています。自由、寛容、公平などアメリカを「グレート」にしていた建国精神が、谷底へと墜落してしまっていると感じます。

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トランプ1.0のときは、いずれ振り子が戻るだろうと思っていましたし、トランプ2.0もある程度は我慢しなければならないと覚悟していたつもりでした。しかしその楽観が脆くも打ち砕かれてしまいました。

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ウクライナとロシアの停戦の交渉に向けてのトランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談をご覧になったでしょうか。ホワイトハウスで報道陣の目の前で破局するという前代未聞の事態の衝撃が世界を一気に駆け回りました。

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この類のニュースは編集の意図で場面が切り取りされると思ったので、会談の最初から最後までをYouTubeで見つけて視聴しました。会談は平穏な外交ムードで始まりましたが、中盤ぐらいにトランプが指名した記者がゼレンスキー大統領に対して「なぜスーツを着ないんだ」という低レベルの質問をしたのに対し、(バンス副大統領と思われる)笑い声が聞こえ、ゼレンスキーは動揺を抑えながら答えました。

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その後、トランプ大統領の「ディールが優先だ、セキュリティ(安全保障)は後から解決する」という暴言でゼレンスキー大統領の顔や姿勢の様子に明らかに変化が生じ始めます。

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終盤にかかってくるとバンス副大統領との言葉の応戦にトランプ大統領が乗っかり、二国の首脳会談が報道陣の前で空中分解するというショックが世界に一気に広まりました。トランプとバンスが、わざとゼレンスキーに罠をしかけたのではないかというコメンタリーもあり、確かにそうかもしれません。いずれにしても、後世に残る歴史的な瞬間になることでしょう。

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罠を仕掛けたか否かは別にして、厄介なことにトランプ・バンス側は自分たちが「正義」だと信じ切っているのでしょう。アメリカは莫大な援助資金をウクライナにつぎ込んだ。その担保としてレアメタルなど鉱物資源権の獲得の「ディール」は理がかなっていると。

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しかし、これでは植民地時代へと退化した弱肉強食の関係性を正当化していることであり、現在の文明の「正義」とは言えません。米国と欧州の分断は深まり、今後は欧州内の分断も米国と同様に深まるかもしれません。このように世界戦争が始まるのだと、自分の生涯では未経験の可能性が頭をよぎり、気持ち悪くなります。

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そのような最悪な状況になることを世界は阻止しなければならない。ただそれでも、これから展開する新しい時代において、欧米の価値観や思想だけでは世界観を収めることはできない、数百年ぶりの巨大なパラダイムシフトが起こっているかもしれません。

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中国は既に大きな存在ですが、民主主義社会においてはインドが、これから人口が増え続けるグローバル・サウスの代表格としての存在感および発言力が高まっています。また、小国でありながらも、お金と実行力でものを言う中東諸国の存在もますます高まるでしょう。そして、まだ国々が分断していますが、人口が倍増するアフリカ大陸の存在感も高まることは間違いありません。

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150年間に亘り欧米に追いつけ追い越せで発展してきた日本は、このような新しい時代の世界秩序においてどうするか。実は、立ち位置はそれほど悪くなく、面白い展開になる可能性があると考えています。

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長年参加している勉強会でご一緒している有識者が、トランプ大統領を「棍棒外交」を実施したセオドア・ルーズベルト大統領(1901年~1904年)と類似すると指摘されました。(厳密にいうと、「でっかい棒を持って穏やかに話せば、それでうまくいく」とルーズベルトは唱えたので、ビックマウスのトランプとは異なりますが。)

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ただ、あの時代は、日本が世界の先進国に仲間入りし、日本の歴史において一般市民が最も豊かな生活ができた時代と重なりました。また、第二次世界大戦後~1989年の約40年間も続いた米露などの冷戦時代は日本の高度成長時代と重なります。

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このように、自分の性に合っている能天気な楽観的視点から見ると、現在の極めて厳しい世界情勢において日本が上手に立ち位置を定めれば、実はかなり面白い時代が展開すると思っています。日本は、不侵略的な平和主義です。他国に対し自分たちの政治的・思想的・宗教的なイデオロギーを押し付けることもしない、中立的な存在です。過去に比べると衰えているかもしれませんが、現実として今でもまだ技術的にも、経済的にも、大国です。

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日本は、過去150年間の東西関係において、「東」に地理的に身を置きながらも、「西」に属するという曖昧なポジションで、総合的には良い調子で繁栄できました。また、「北」に地理的に身を置きながらも、「南」に対しては負の歴史は概ね無く、特に戦後では様々な国々の経済発展を支援してきました。

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これからの時代の世界秩序は「西」「北」だけでなく、グローバル・サウスの存在感や発言力が高まることは必至です。日本は「西」でもない、「南」でもない。けれども、両方とも良好な関係を築ける可能性がある国です。ただ、課題があります。日本の先進国や近隣アジア諸国の経験値と比べると、グローバル・サウスの新興国の経験値を持つ人的資本の層が薄いことであります。

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だからこそ、今日よりも良い明日に向けて、世代を超える長期投資をコモンズ投信で推していた私が、あえて「遠い」アフリカに注目し、現在は&Capitalというアフリカ向けインパクトファンドの立ち上げに同志らと奔走しているのです。新興国の事業および投資の担い手となるには、新興に挑む日本人若手世代が不可欠です。ぜひ、日本人が潜めている可能性を拓いて、世界に応えましょう。

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□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □

(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。

https://urldefense.com/v3/__https://tinyurl.com/23d3sg3q__;!!GCTRfqYYOYGmgK_z!6u5utl4E4fN5VA7cDg3aOdCzc8sBmuywhV-V5_MC_TGJOeh0Q8q-_Z06iGWFNIdyNb4Tk2sFzB0qPDqTDu9xprSoirwdIA$

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「論語講義」子路第十三 13 子曰苟正其身矣章

        子曰く、苟くも其の身を正しくせば、

            政とに従うに於て何か有らん。

          其の身を正しくする能わずんば、

              人を正しくするを如何せん。

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論語からの引用ですが、渋沢栄一は「政は正なり。多衆結合して社会を成す」と、もしも自分を正しくすることができるのであれば政治に当って何も困難にないが、自分すら正しくすることができないで、どうして人を正しくすることができるのかという孔子の教えを解釈しています。今だからこそ、トランプ・バンスを含む世界の政治のリーダー層にも、読んで、実践してほしい訓ですね。

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                「論語と算盤」国家と社会

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                外交上世論に訴えるばあいは、

                        両国政府はもちろん、

  国民相互に感情の融和に努力するのが肝要であり、

                        またその責任である。

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つまり、政治やメディア(既存とSNS含む)のポピュリズムに国民が踊らされることなく、しっかりと現状を判断して、民意を表す責任が大事ということです。でなければ、民主主義という社会的制度では、良いことが起こる訳がありません。

                                                            謹白

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❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。

渋澤 健

スペ―ス

【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他

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配信元:NTTデータエービック

このコラムの著者

渋澤 健 (シブサワ ケン)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。

コモンズ投信株式会社取締役会長。

1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。

JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。

2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。

07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。

経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

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