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第54回「新政権に国民を”守る”政策を求める」
日本資本主義の父 渋沢 栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。
第54回のテーマは「新政権に国民を”守る”政策を求める」です。
謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
先月下旬、1年ぶりにニューヨークを訪れました。国連総会のタイミングと重なり、数多くのサイドイベントが開催され、世界から大勢の参加者が一堂に会する週です。共同チェアを務めているTriple I (Impact Investment Initiative)for Global Healthの1周年イベント、日本における委員長を務めているGSG Impact、またボードメンバーを務めているIFVI (International Foundation for Valuing Impact)共催のイベントに登壇し、大勢の参加者で賑わう会場で、「日本」の取り組みをアピールすることができました。
ただ、ニューヨークを訪れるには1年で最も避けるべき週かもしれません。まず、既に円換算では高いホテル代が高騰します。そしてVIPの移動のために道路が封鎖され、大渋滞が市内各所で起こります。近場なら日中はタクシーを利用するより徒歩の方が、移動時間がかかりません。
Triple Iのイベントを終えて、E42 Streetという東西に伸びる幅広い道の歩道を歩いてマンハッタンのミッドタウン中央まで徒歩で向かったら、案の定、南北に走る3rd Avenueにバリケードが張ってありました。車だけでなく、歩行者も進めません。体格がごつい警察官から、”ここは通れない。戻って迂回しろ。“とぶっきらぼうに言われました。
次々に足止めを食う大勢の歩行者が”何故だ、通してくれ“と口論すると、”デモ行進が通るから駄目だ。ニューヨークへようこそ。“と、全く耳を貸してくれません。確かに、交差点の反対側に大勢の親パレスチナ派のデモ隊が声を上げて行進して角を曲がっています。
ただ、どんどんと歩行者がバリケード前に溜まってきたので、もう一人の警察官が“オイ、通してやれ。”と吠えると、あれほど頑固に譲らなかった警察官がすんなりとバリケードをちょっと開いて、私を含む大勢の歩行者が解放されました。
E37Streetまで南方へ下り、東方へと横切り、南北を走るMadison Avenueにたどり着いた頃、先ほどのデモ隊の行進の長蛇の列がまだ続いていました。これほどの大群の人々が、これほど怒って行動しているんだと、逆に感心してしまいました。
これほどの大勢が何故、これほど怒って行進しているのか。それは、「守りたい」大切なものがあるからです。だから、彼らは現状に対して「挑んで」デモ行進をしていたのです。
やや話が飛躍しますが、10月6日(日)に第16回コモンズ社会起業家フォーラムが開催されます。今年の登壇者にお願いしているテーマは、「あなたは今、何を守りたいですか?そのために何に挑みますか?」です。
念のため誤解を招かないように。デモ行進を推進している訳では決してありません。しかし「守りたい」大切なものに大勢が共感すると、それを脅かす現実に対して「挑み」が生じることが注目すべきポイントです。デモ行進は一人ではできません。同じように、「守りたい」大切なもの、つまり社会的課題の解決も一人ではできません。大勢が共に「守りたい」と思うから、「挑み」が生じるのです。
ただ、その「挑み」には留意点があります。イスラエルは「守りたい」大切なものがある。パレスチナも「守りたい」大切なものがあり、レバノンやイランも同様です。しかしながら、「守る」ための「挑み」の過ちにより、大勢の一般市民の最も「守りたい」尊いものを奪ってしまう悲劇が生じます。
国のリーダーの最も重要な役割とは国民を「守る」ことです。ただ、「守る」ための「挑み」が「奪う」ことになってはならないことは、幼い子供でもわかる道理です。ただ、「守りたい」ものを理由にしながらも、非道理的な「挑み」で世界はどんどん危険な状態に陥っています。
このような危険性が増す世の中にいながら、日本社会の多くの声は政治的な安定を求めることを優先せずに、総理大臣を交代させる政局を煽りました。そして、「日本を守る」ことを長年の政治指針として掲げていた石破茂さんが自民党総裁になり、総理大臣として新しい内閣を発足されました。石破総理が、今後の「守りたい」ために、どのような「挑み」に取り組むのかが、注目されます。
国防により、国民を守ることは当然であります。ただ、それだけの「挑み」では全く足りず、より多くの国民の生活を向上させる「挑み」が不可欠です。また、これからの日本人の生活向上は地方の創生だけでも足りません。140円台前半に戻しただけで「円高」という感覚に陥った論調を見るにつけ、政府は円安で日本人の購買力を奪い生活水準を「守れなかった」現実に目をそらしてはならないと痛感します。
デフレは克服したけれども、賃金が上がらなければ、国民の生活水準を「守る」ことはできず、むしろ生活は苦しくなります。賃金が構造的に上がるには、日本の昭和時代に定着した労働の常識や慣習を変えるしかありません。雇用を「守る」だけで「挑み」がなければ、国民の生活水準が上がるようなことはもはやありません。
賃金が上がらなければ低所得者に給付金をばらまく。財政規律を堅持することなく金融緩和が継続される。これでは全く、政策方針の「挑み」を感じません。今まで3年間に築いてきた、日本に新しい時代を導く数多くの政策方針のモメンタムが失せることが無いことを切望します。
ただ現時点の観測では、派閥がほぼ解消されても、自民党は新しい時代を導くどころか過去に逆戻りしている「守り」が目立つ総裁選でした。自民党に属する国会議員と党員が自分たちの総裁を決めることは当然のことです。ただ、党員になるには国会議員の推薦が必要です。要は、国会議員が支援者を募ってお願いして入党してもらうという関係性もありえます。
党員の数の確保により総裁選の行方=総理大臣の選出の方向性が決まる。一般国民を有権者とする民主主義において、透明性が高くとはいえない制度を守る勢力が健在であることを残念に思いました。裏金よりも、根深い問題ではないでしょうか。
私たち現役世代の日本人が「守るべき」は、これからの日本の新しい時代です。その時代を導く政策のモメンタムを維持できない政治に信頼性は高まることないと思います。
□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。
https://urldefense.com/v3/__https://bit.ly/3uM0qwl__;!!GCTRfqYYOYGmgK_z!8HRi7lkpr0e5-B71qMndCKEXnwuCZfV1rXHbizNp6_kFstCIxy1iWjRPdpjSjV_zTcvbWB5Vdw_FBFocTv2WDZGPdn8-pA$ )
「論語と算盤」勇猛心の養成法
一般に一大覚悟をもって、
万難を排し勇往猛進すべき時である。
「守りたい」大切なものがあるから「挑む」。そして、その「挑み」は社会の一部だけでなく、一般にも。これが、渋沢栄一の基本スタンスであります。特に、今まで日本社会が、いや、今まで世界が観たこと無かったほどの、スピードと規模で人口動態が激変している昨今で現状を「守る」というスタンスでは、新しい時代に相応しい価値が生まれてこないです。やはり「挑み」が必須です。
「論語と算盤」勇猛心の養成法
品性の劣等なるものは勇気にあらずして、
自然野卑狂暴となり、かえって社会に害毒を流し、
遂には一身を滅亡するに到るものである。
一方で、道理なき「挑み」とは狂暴に陥る害にしかならない。これを決して我々は忘れてはならないですね。
謹白
❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。
渋澤 健
【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他
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配信元:NTTデータエービック
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