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第55回「日本が世界に出遅れている‼デジタル決済」
日本資本主義の父 渋沢 栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。
第55回のテーマは「日本が世界に出遅れている‼デジタル決済」です。
謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
この一カ月は国内外出張で飛び回っておりました。国内は、大阪、熊本、直島/大島、高松、福山、広島。国外は、インド、オランダ、英国、マレーシア。数多くの地域に足を運びながら、感じることが多々ありました。
まず、平和が一番。やはり、どこでも自由に移動できるのは良いことです。ウクライナとロシアの紛争が続いているせいで、日本からの欧州出張は未だにロシア上空を飛行できず、行きはカナダ北極圏周り、帰りは中央アジアの上空を飛びます。イスラエルと近国との争いがさらに拡大して情勢が悪化すれば、この帰国ルートもいずれ塞がるかもしれません。
機内で鑑賞した“Civil War”という映画では、アメリカで再び内戦が勃発し、州の境も超えるのも命がけという内戦の恐怖が描かれていました。また、今の日本の日常生活では考えもしませんが、日本で人の移動が基本的に自由になったのは明治2年。それ以前は移動制限がありました。
そう考えると、「平和」を憲法で明記する国の世界における責任は重大です。自国の国民の自由を「守る」ためには、世界を平和に導くことが不可欠であり、政権が変わっても決して変わるべきではない政策の鉄則です。
ただ、この一カ月で国内外の日常生活を眺めながら最も危機感を覚えたのは、実は日本の出遅れ感でした。本レターを定期的にお読みいただいている方は、私が日本は新しい時代に入ったということを言い続けていることはおわかりだと思います。ただ日常生活のデジタル決済について、日本は本当に取り残されていると痛感しています。
え?でも、日本はIC交通系から、QRコードから、地域マネーから、色々なデジタル決済の選択肢があるじゃないですか、という反論があるかと思います。ただ、地方に出張してタクシーを乗ると未だに、「あ~現金だけなんです」というケースが少なくなく、また、受け付けているデジタル決済のプラットフォームが異なるケースが如何に多いか。誠に嘆かわしいことです。
また、同じ「JR」でも、オンラインで購買されるチケットの発券が地域によって異なることが「当たり前」という状態に、我々日本国民(消費者)は慣らされています。日本人でもかなりハードルが高いですが、世界からのビジターにはなおのこと。
これほどインバウンドが増えているにもかかわらずデジタル「おもてなし」が乏しいことを、我々日本人は認識すべきです。特に、関西方面の皆さま。来年は関西・大阪万博です。関西圏内の移動はもちろん大事ですが、東京や他の地域から関西へと移動する外国の皆さんの目線から移動のデジタル障壁についても考えてみてください。
デジタル決済で特に交通系に注目している理由は今回の欧州出張からの体験です。初めてオランダを訪れ、アムステルダム市内の初日は、美しい街並みなので徒歩で楽しみましたが、ミーティングなどへ移動する際に公共交通機関の利用には当初心理的な壁がありました。
しかし、実際に使うと無用な心配だとわかります。自分のクレジットカードの「タッチ決済」あるいは「タッピング」(英語的には「コンタクトレスと言います)機能を使って自由に利用できます。乗車券の発行など全く不要で、すごく便利。特に市内の移動の場合、タッチレス機能あるクレジットカードさえあれば、外国からの来客者は、別に何か特別のことをすることなく自由に移動できるのです。これがグローバル・スタンダードになっているんだと実感しました。
ただ、いい加減さはあります。アムステルダムから郊外へ向かうときの列車はネットで一等席(日本でいえば、グリーン)を確保しましたが、そもそも、どこが一等席であるかがわからず。無事に座った後に車掌の確認もありませんでした。また市街の路上電車の運行が急にキャンセルになってアポに遅れるなどのハプニングもありました。しかし、我々日本人は消費者として、「必ず」のために支払っている見えないコストの認識を持つべきではないでしょうか。
インドのバンガロールでは公共交通機関を利用しませんでしたが、別の意味でのグローバル・スタンダードを体験しました。野外カフェでチャイ・ティーを現地の方にご馳走になり、決済はQRコードで車の駐車場料金も同様。ただ、車内の手元に現金がありました。その理由は、赤信号で勝手に車窓を洗浄して「料金」を要望する貧困層に、小金を渡すためです。
「定期収入が無い人しか現金を使いません」と教えてもらいました。ただ、オチがありました。時々、ホームレスでもQRコード決済を受け付けているようです。
日本の日常生活の現金依存は、いかに世界から後れを取っているのか。コロナ禍が明けてから海外出張が増えましたが、現金を現地通貨に両替したことはほぼありません。クレジットカードだけで全く問題なく現地で過ごすことができるからです。
確かに、この一年間で、国内のクレジットカードのタッチレス決済に対応する店舗が増えてきています。しかしタッチレスの波マークが付いていながらも、店員からの「使えないんです」という反応が決して少なくありません。また、使えても、1万円という限度額が付いています。誰が、どのような基準で、この限度に決めたかわかりませんが、恐らく海外に出たことが無い方でしょう。世界では1万円が決して高額ではない、ということを知らないようなので。
日本で世界の先進国・途上国と同じようにクレジットカード一枚やQRコードなどで日常生活のデジタル決済する当たり前の障壁は何か。明らかにテクノロジーではありません。マインドセットだけです。新一万札の「顔」となった日本の資本主義の父は怒ると思います。「世界の時代の潮流に乗り遅れるな、デジタル決済に目覚めよ!日本」と。政府が守るべきは既得権益者でなく、あくまでも国民の自由と利便性です。
□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。
https://urldefense.com/v3/__https://bit.ly/3uM0qwl__;!!GCTRfqYYOYGmgK_z!-UDVPDn_NjO6kcbJwd8aVON4bo4kWo7Z_F2G8gBXpnDCnKAEij4EL0fMllmiT2sRA_AYu1F4l49hGn0iQYxZd1ti6VaKwA$ )
「論語と算盤」天然の抵抗を征服せよ
世界文明の進歩に伴い、
人智をもって天然の抵抗を征服し、
海にも陸にも種々交通の便利を加えて、
その距離を短縮することは実に驚くばかりである。
栄一の時代では日本の交通網の発展により、様々なパラダイムシフトが加速しました。種々交通の便利や各地の距離が短縮するということに関しては、日本は世界一のインフラを誇っているでしょう。ただ、その交通網の利用の支払いが時代に遅れているということを栄一が知ったら、実に驚くばかりでありましょう。
「論語と算盤」この熟誠を要す
しかし興味を持って事物を処するというのは、
我が心から持ち出して、
この仕事はかくして見たい、
こうやって見たい、
こうなったら、
これをこうやったならば、
かくなるであろうというように
いろいろの理想欲望をそこに加えてやっていく。
自社の規格の維持のために、いろいろの理想欲望を自ら束縛しているのが現在の日本社会におけるデジタル決済の課題かもしれません。10年程前までは、日本の交通系決済は世界一と思っていました。技術に関しては、今でもそうなのかもしれません。ただ、ゼロ・エラーに少々妥協しながらも、利便性あるシステムに世界では追い越されている現状が見えてきています。
謹白
❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。
渋澤 健
【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他
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配信元:NTTデータエービック
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