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シブサワ・レター こぼれ話~ 第14回「日銀ETF問題の出口が大学ファンド」

インタビュー
配信元:NTTデータエービック
投稿:
シブサワ・レター こぼれ話~ 第14回「日銀ETF問題の出口が大学ファンド」

シブサワ・レター ~こぼれ話~
第14回「日銀ETF問題の出口が大学ファンド」


日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。

 

第14回のテーマは「日銀ETF問題の出口が大学ファンド」です。

 

 

 


謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 

最近、「日本型資本主義」や「新しい資本主義」への関心が政界でも高まっていて、国会議員の勉強会などの講師としてお招きいただいています。

様々な側面で時代が激変する現代において、150年程前の激動の時代に資本主義を通じて未来を拓いた渋沢栄一の思想を勉強したいという考えが経済界だけでなく、政界でも広まっていることに時代の潮流を感じます。

 

しかし現在、資本主義は「格差を生む」「環境を破壊する」悪であるという考えを抱く若者世代が少なくありません。

特に感化されやすい若い時期に2011年3月11日の東日本大震災および福島原発事故を体験し、「日本の社会システムが壊れている」と感じた世代が、今は30代になってきています。

 

どの世代も豊かな生活や社会を望んでいますが、資本主義でそのような未来を描くことへの失望が特に多い世代なのかもしれません。

 

「日本資本主義の父」は「一滴一滴が大河になる」ことで日本の豊かな社会が実現する未来を描きました。それぞれが未来に希望を抱き、一滴一滴の金銭的資本、人的資本を合わせる「合本」によって、より良い明日をみんなでつくること。

これが、「日本型資本主義」の原点であり、そこに回帰し「日本発資本主義」として世界に提示することで、失望を希望へと再び転換するためには、まず「壊れている」ところから直すべきでしょう。

 

日本型資本主義が最も顕著に「壊れている」ところは日本銀行の株式ETF(上場投資信託)買いではないでしょうか。

先進国の中央銀行が間接的にも株式を保有することに2013年から違和感を抱いていましたが、当時の一般的な意識は「株が上がれば良いんじゃない」というものでした。アベノミクスへの期待が高く、その主たる「矢」であった日銀の「バズーカ砲」に異議を問いかけることすらタブーであったかもしれません。

 

GPIFは株式市場の「クジラ」かもしれませんが、日銀のETF買いは異質です。2016年に公開された映画にかけて、人為的に生まれた異次元な「シン・ゴジラ」とでも呼びましょうか。

けれども「出口なき」状態が長年続き現在に至り、日本銀行はGPIFを超えて、(間接的に)日本企業の最大な株主になっています。

株主は企業へガバナンスを行使することが必然ですが、その最大株主が「国」になる日本型資本主義では問題となります。

 

また、国の中央銀行のバランスシートに莫大なリスク資産を抱えている状態で予期せぬ大ショックが起こり、歯止めが効かない市場の大暴落が起こった時、どのようなリスク・シナリオが考えられるのか。

 

日本銀行の純資産(2020年9月末)は4.2兆円です。

一方、株式ETFだけでも(同)簿価ベースで34.2兆円を保有していて、現在の時価総額ベースでは45兆円から50兆円程度で推移していると思います。

自己資本と比べて8倍?12倍の超高レバレッジです。私は90年代後半に大手のヘッジファンドに勤めていましたが、株式というリスク資産をヘッジ無しで、これほどレバレッジをかけているファンド(で破綻していないところ)は聞いたことがありません。

 

もちろん政府機関である日銀はヘッジファンドや企業とは異なります。資産が痛んでも政府が借金を増やして資本注入すればすみます。

 

ただ、通貨の番人であるはずの中央銀行に資本注入が必要となるシナリオにおいて、通貨の価値はどうなるのか。著しく価値を棄損するはずです。

エネルギーや食糧を輸入している国の通貨が大暴落したら、物価急上昇に賃金上昇が全くついていけず、国民生活が困窮に陥ることは明らかです。

 

「出口がない」日銀ETF問題に、友人のファンドマネージャーが妙案を提唱しています。

ETFを日本銀行のバランスシートから外して特別基金に移管し、現物株式へと交換します。現物株式のアセットオーナーになりますので、企業へのガバナンスもきちんと行使できます。

そして、仮に50兆円の株式ポートフォリオの配当利回りが1%だった場合、年5000億円の財源が生じます。

 

この財源を、去年から浮上している「大学ファンド」に活用すれば一石二鳥です。

「大学ファンド」構想への反対は、日本政府の財投(借金)を財源としていることとリスク資産を増やすことです。ETF残高を日本銀行のバランスシートから外して特別基金に移管することで、大学基金の財源は既に確保できることになります。

 

また、日本政府(国民)が新たなリスクを抱えることもありません。

日本銀行が既に抱えているリスクですから。

 

前例のない考えなので、多くの「出来ない」理由が挙がることでしょう。

ただ、異次元の金融政策の「出口」は、異次元であってもよいのではないでしょうか。日銀だけで決定できることではなく、政治主導が必至です。

 

福島原子力発電所において非常用電源を浸水しかねない場所に設計し、かつ放置してあったことは、明らかに日本のシステムが「壊れている」状態でした。

日銀ETF問題も、明らかに日本型資本主義が「壊れている」状態です。

でも、今ならば、直せます。株式市場が大きく下落して、大問題として表面した時では、致命的に遅すぎます。


□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。https://bit.ly/3uM0qwl)


        『渋沢栄一 訓言集』一言集

   一般市民の困らぬよう国運の進歩を
        つとめて行くのが善政である。

日銀のETF残高が増えても、一般市民が困らないじゃないかという意見があるかもしれません。

むしろ、株式市場の底上げになっているので、喜んでいるかもしれない。

しかし、短期的にそう見えても、長期的に過剰なリスクが積み重なっている状態が国運の進歩を導く善策とは思えません。


              『論語と算盤』動機と結果

         志が善でも行為が悪になることもあり、
 また行為が善でも志が悪なることおるように思われる。

     単に志が善ならその行為も善という説よりも、
       その志と行為をくらべあわせて考えた上に
        善悪を定めるという説のほうが確かである。

 

間違いなく、志は善です。ただ、異次元の金融政策であったはずのETF買いが長年続いている行為が善と思えません。最近、日銀のETF買いが減少していることから、志と行為が比べ合わせて考え始められているようです。

                                                           謹白

❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。

渋澤 健
 

 【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

 

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配信元:NTTデータエービック

このコラムの著者

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渋澤 健 (シブサワ ケン)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。

コモンズ投信株式会社取締役会長。

1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。

JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。

2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。

07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。

経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

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