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100円で資産運用⁉本音の投資信託㉚ 「つみたてNISA」のタテヨコナナメ(13)

コラム
配信元:NTTデータエービック
投稿:
100円で資産運用⁉本音の投資信託㉚ 「つみたてNISA」のタテヨコナナメ(13)

今回も前回に続き、「つみたてNISA」対象ファンドの分配金について説明する。
再掲となるが、金融庁「NISA特設ウェブサイト」の「つみたてNISAに関する注意点」には、「つみたてNISA」における分配金に関して、次の通り記載されている。

 

非課税の対象となる分配金
・ETFの分配金は、証券会社を通じて受け取る場合(株式数比例配分方式を選択している場合)のみ
非課税となります。
分配金再投資とスイッチング
・NISA口座で収益分配金の再投資やスイッチングを行う場合、その分の非課税投資枠が必要です。
収益分配金の再投資やスイッチングは、新規購入の場合と同様に非課税投資枠を利用します。そのため、その年の非課税投資枠(つみたてNISAの場合は40万円)を使い切っている場合、NISA口座内での収益分配金の再投資やスイッチングはできません。
特別分配金の取り扱い
・投資信託の分配金のうち、元本払戻金(特別分配金)は元本の払い戻しに相当し、利益として受け
取るものではないことから、課税口座(特定口座や一般口座)においても、そもそも非課税であり、NISAの非課税のメリットを享受できません。』

 

このうち、「非課税の対象となる分配金」については前回説明した。
今回は順序が逆になるが、まず「特別分配金の取り扱い」から説明する。

■特別分配金の取り扱い
前回説明したように、投資信託の分配金には、「普通分配金」と「特別分配金」という2つの分配金がある。そのうち「特別分配金」は、「元本払戻金」とも呼ばれる分配金であり、決して特別な利益を分配するものではなく、投資家(受益者)の元本の一部払い戻しに相当する部分である、と説明した。自分の投資したお金(元本)が戻ってくるだけなので、「特別分配金」は当然、非課税となるのだ。

 

そして「つみたてNISA」では、投資信託の分配金は全て非課税とされている。しかし、この金融庁のサイトでは、わざわざ「特別分配金」の取り扱いを注意点として挙げている。どういうことだろうか。

 

上記の金融庁サイトの説明には、「特別分配金」は元本の払い戻しに相当し、利益として受け取るものではないので、そもそも課税されるべきものではない、ということが書かれている。
つまり、「つみたてNISA」口座で購入した投資信託から「特別分配金」を受取ったとしても、その分配金はそもそも非課税なのだから、「NISA」という非課税制度のメリットを生かしていることにはならない、ということを説明しているのだ。

 

株式の配当金や債券の利息などと違って、投資信託の分配金には2種類あり、投資家一人ひとりの購入価格(個別元本という)によって、課税・非課税の関係がやや分かりづらいため、改めて注意喚起していると思われる。

 

前回ご紹介したが、「つみたてNISA」対象ファンドの中には、2021年に1万口あたり1,900円の分配を行ったファンド(「Aファンド」と呼ぶ)がある。もし、このAファンドの分配金を、全て「普通分配金」として「特定口座」などの課税口座で受け取った場合は、1万口あたり約385円の税金がかかる。それに対し、「つみたてNISA」口座では分配金が非課税なので、この約385円の税金はかからないのだ。

 

しかし、この分配金1,900円が全て「特別分配金」の場合には、それを「特定口座」などの課税口座で受け取っても税金は一切かからない。元本の払い戻しなので当然だ。つまり、そもそも非課税なので、「つみたてNISA」口座で受け取るメリットは活きてこないということだ。

 

繰り返しになるが、「つみたてNISA」において、投資信託の分配金非課税というメリットを享受できるのは、その分配金が「普通分配金」のときである。

 

■ 分配金再投資
次に、「分配金再投資とスイッチング」を説明しよう。
金融庁のサイトでは、「分配金再投資」と「スイッチング」を同じ個所で説明しているが、ここでは一つずつ説明していく。

 

まず、「分配金再投資」だ。これは、「自動継続投資」という言い方もする。
一般的に「分配金再投資」とは、保有している投資信託が分配金を支払う際、税金を控除した後(税金を差し引いた後)の金額を、現金としては受け取らず、投資信託保有口座において、同じ投資信託の購入に充てる、ということである。投資信託の購入時に、「分配金再投資」コースを選択できることが多い。「分配金再投資」コースを選ぶと、決算時に分配金は自動的に再投資に充てられる。

 

分配金非課税の「つみたてNISA」の場合は、「分配金再投資」において、税金は控除されず、分配金全額を再投資(同じ投資信託の購入)に充てることができるということになる。

 

たとえば、仮に「つみたてNISA」口座でAファンドを300,000口保有しているとする。そして決算時に10,000口あたり1,900円の分配を行うと、分配金額は57,000円(1,900円×(300,000口/10,000口))となる。
これが全て普通分配金で、「特定口座」などの課税口座で受け取る場合は、税率を20.315%とすると、税控除後の金額は約45,420円となる。「分配金再投資」コースにおいては、この45,420円を再投資(Aファンドの購入)に回すことになる。

 

しかし「つみたてNISA」の場合は、分配金が全額非課税なので、分配金57,000円全額を再投資(Aファンドの購入)に充てることができるのだ。

そして、ここで重要かつ注意が必要な点は、分配金57,000円を再投資に充てると、その57,000円も「つみたてNISA」の年間非課税投資枠400,000円を利用することになるという点である。

 

どういうことかというと、この分配金57,000円を再投資(Aファンドの購入)に充てると、毎月の積立金額に追加する形で、年間非課税投資枠400,000円のうち57,000円分を使用することになる。そして、その年の残りの非課税投資枠は343,000円になり、毎月の積立ては、この範囲内で行う必要があるということなのだ。

 

そこで、皆さんにご注意いただきたい点は、毎月の積立額の設定についてである。
よく紹介されるケースは、毎月の積立額を33,333円にして1年間の積立総額を399,996円にするというケースだ。こうすることで、年間400,000円の非課税投資枠を有効に活用できる、とされている。

 

しかし、このケースでは非課税投資枠の残りは4円しかない。すると、もしも投資している投資信託が分配を行い、その分配金が4円を超えてしまうと、分配金再投資を含めた年間投資額は「つみたてNISA」の年間非課税投資枠400,000円を超過してしまうことになるのだ。

 

そして、さらにややこしいことに「つみたてNISA」における分配金再投資の取り扱いは、金融機関によって異なっているのだ。
以下にまとめてみたが、ここはしっかり確認しておく必要があるだろう。なぜかというと、「つみたてNISA」口座を開設しても、その口座では再投資そのものが不可となっている金融機関もあるのだ。また、再投資によって非課税枠を超過する場合の扱いも金融機関によって異なっている。

金融機関

分配金再投資の

取り扱い

留意事項
A社 非課税口座で再投資可能 ただし分配金を加えた年間積立予定金額が上限(40万円)を超える場合、分配金は特定口座もしくは一般口座で再投資。
B社 非課税口座で再投資可能 ただし上限(40万円)までの金額が再投資額(分配金の額)に満たない場合、分配金は特定口座もしくは一般口座で再投資。
C社 非課税口座では再投資不可 分配金は特定口座もしくは一般口座で再投資可能。
D社 非課税口座で再投資可能 再投資額が上限(40万円)を超える場合、分配金は特定口座もしくは一般口座で再投資。また年の途中に分配金を非課税口座で再投資した場合で、12月の積立で上限(40万円)を超える場合、12月の積立がエラーとなる。
E社 非課税口座では再投資不可 分配金は特定口座もしくは一般口座で再投資可能。
F社 非課税口座で再投資可能 上限(40万円)を超える場合は再投資できず、分配金受取となる。

 

今回は、「つみたてNISA」対象ファンドの取り扱いの多い6社を調べてみた。他の金融機関では、上記と違う取り扱いとなっているかもしれないので、その都度確認する必要があるだろう。

 

つみたてNISA」対象ファンドでも、きちんと「分配金」を支払っているファンドは複数ある。
だからこそ、金融機関における「分配金再投資」の取り扱い毎月の積立金額の設定には、注意が必要だ。

 

■スイッチング
次にスイッチングについて説明する。
投資信託でスイッチングという場合、一般的には、保有している投資信託を売却・換金して、その代金で別の投資信託を購入することをいう。

 

たとえば、ある年の年初に、毎月33,000円でXファンドの積立て購入を開始したとしよう。
しかし、いろいろ考えて、XファンドではなくYファンドに投資したいと思い直し、4月からは積立対象ファンドをYファンドに切り替えた。
ここで終われば、何の問題もない。これは単なる「つみたてNISA」対象ファンドの変更だからだ。

 

問題となるのは、毎月の積立対象ファンドをYファンドに変更したことに加え、1月から3月まで積立購入した99,000円分のXファンドもYファンドに変更しようとする場合である。
スイッチングとは、このように、積立ててきたXファンドを解約(換金)し、その解約代金でYファンドを購入することをいう。

 

では、このスイッチングの何が問題なのか。
この例でいうと、3月までのXファンドの積立てで、年間非課税上限枠400,000円のうち99,000円を既に使ってしまっている。残りの非課税枠は301,000円だ。ここで注意が必要なのだ。
どういうことかというと、3月まで積立てたXファンドを4月に売却し、その売却代金が99,000円だったとしよう。それをYファンドの購入に充てたとする。購入した時点でその年の非課税投資枠の使用額は、3月までの積立て分99,000円に、スイッチングで購入した99,000円を加え、合計で198,000円になってしまうのだ。すると、年間非課税投資枠の残りは202,000円となってしまう。

 

しかし4月以降12月までの積立予定額は、33,000円×9カ月分=297,000円で、残りの枠を上回ってしまう。つまり10月以降は年間の上限枠を超えてしまうため、積立はできず翌年1月まで待つしかないことになるのだ。

 

以上のように、分配金再投資とスイッチングは、その年の非課税投資枠を使用することになるので、十分気を付けていただきたい。

 

以上、2回にわたり、「つみたてNISA」の分配金について書いてみた。読者の参考になれば幸いである。

 

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配信元:NTTデータエービック

このコラムの著者

Original original oochi kouichirou
大地 恒一郎 (オオチ コウイチロウ)

株式会社アセットデザインラボ 代表 

 

1979年 電源開発株式会社(Jパワー)入社

1986年 外資系ITメーカーを経て

1987年 日興証券投資信託委託株式会社 入社 (現 日興アセットマネジメント株式会社)

           31年超の在職中 2002年~2005年執行役員、その他、商品企画部長、マーケティング部長、人事総務部長、監査部長などを歴任)

             主に、投資信託の運用、トレーディング、新規投資信託の企画・開発、既存投資信託の管理、マーケ  ティング・営業、人事、内部監査等に携わる

 

2019年 FP事務所 株式会社アセットデザインラボ設立

 

現在   投資初心者向けの投資信託、資産運用、つみたてNISA・iDeCoなどのセミナー、地方自治体向けライフプランセミナーなど各種研修・セミナー、企業型確定拠出年金新人研修などで講師を務める。

     「東証マネ部!」への取材協力の他、コラム執筆などを行っている。

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