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100円で資産運用⁉本音の投資信託㉘「つみたてNISA」のタテヨコナナメ(11)

コラム
配信元:NTTデータエービック
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100円で資産運用⁉本音の投資信託㉘「つみたてNISA」のタテヨコナナメ(11)

今回は、「つみたてNISA」対象ファンドを取扱う金融機関についてお伝えしたい。

 

■ 「つみたてNISA」を始める際の金融機関選び

現在、「つみたてNISA」を取り扱っている金融機関は、金融庁NISA特設サイトにある「つみたてNISA取扱金融機関一覧」(2021年2月28日現在)によると、全部で597社もある。

そのうち、170社が、「つみたてNISAナビ」(https://www.tsumitatenisa.jp/)というウェブサイトの「口座比較表」に掲載されている(2022年2月22日現在)。

この「つみたてNISAナビ」には、「つみたてNISA」を取り扱っている信用金庫や信用組合、農業協同組合は掲載されていない。従って、それらの金融機関に関する情報は含まれていないということをご理解いただいた上で、お読みいただきたい。

 

つみたてNISA」を始めるにあたっては、以前にも書いたが、どの金融機関で始めるかという金融機関選びが、実は重要になってくる。

 

なぜ重要なのか。

それは、「つみたてNISA」を散り扱っている金融機関が、201本(2022年2月28日現在、ETF除く)の全ての「つみたてNISA」対象ファンドを取り扱っている訳ではないからだ。

 

いや、全てのファンドを取り扱っている金融機関は、現時点ではおそらくゼロではないだろうか。

それどころか、20ファンド以上の取扱いがある金融機関は、「つみたてNISAナビ」に掲載されている金融機関に限っていうと、12社しかない。

10ファンド以上取り扱っている金融機関で、ようやく50社を超え55社だ。

 

何が問題かというと、「つみたてNISA」対象ファンドの中のAというファンドに投資したい、と思っても、自分が口座を開いている馴染みの金融機関では、そのAというファンドを取り扱っていない場合がある、ということなのだ。

 

たとえば、12月のコラムで紹介した筆者の経験である。

筆者は、「一般NISA」の口座で、あるファンドの積立投資をしていた。

2022年からは、このファンドを「つみたてNISA」で投資したいと思い、「一般NISA」口座を「つみたてNISA」口座に切り替えようとした。

しかし、その金融機関の「つみたてNISA」口座の対象ファンドに、そのファンドは含まれていなかったのだ。対象ファンドの数も20本未満で、極めて限定的であった。

 

その金融機関で取扱いのある他の対象ファンドで「つみたてNISA」を開始することも検討した。

しかし、やはり自分の選んだファンドで「つみたてNISA」を行いたいと思い、仕方なく金融機関を変更することにしたのだ。

 

筆者はその金融機関で「非課税口座廃止通知書」を発行してもらい、そのファンドを取り扱っている他の金融機関で、新たに「つみたてNISA」の口座を開くことにした。

 

このように、金融庁が「つみたてNISA」の対象ファンドに指定しているファンドを、「一般NISA」として購入できたとしても、同じファンドをその金融機関の「つみたてNISA」口座で購入できるとは限らないのだ。

いや、「つみたてNISA」の取扱い対象本数が少ない金融機関が多いので、「一般NISA」で購入できても、「つみたてNISA」では購入できないケースが、現状では圧倒的に多いのではないだろうか。

利用者からすると、これはとても不便で、不都合極まりないことである。

 

■ 2021年の人気ファンドの取扱い状況

筆者は、「つみたてNISA」対象ファンドのうち「指定インデックス投資信託」で、2021年に最も資金流入額(解約額を考慮しない設定額のみ)の多かった「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」と、「指定インデックス投資信託以外の投資信託」で最も資金流入額の多かった「ひふみプラス」について、各金融機関における取り扱い状況を調べてみた。

 

どうやって調べたかというと、前述の「つみたてNISAナビ」掲載の170の金融機関のウェブサイトを片っ端から閲覧し、それぞれの金融機関で取り扱っている「つみたてNISA」対象ファンドをチェックしていったのだ。

 

ここで一つ気づいたことがある。

 

それは、「つみたてNISA」対象ファンドをウェブサイトで見つけやすい金融機関と、とても見つけにくい金融機関があるということである。

結局どうしても、ウェブサイトからたどり着けなかった金融機関もいくつかあった。これは筆者の探した方の問題かもしれない。

しかし、見つけやすい金融機関は、「投資信託」の中に「つみたてNISA」がわかりやすく表示されていて、その金融機関で取り扱っている「つみたてNISA」対象ファンドが、一目で分かるようになっている。

こういう金融機関は、「つみたてNISA」に積極的なのだな、という印象を受けた。

 

それに対し、ウェブサイトで「投資信託」の項目にたどりついても、そこから先で苦労する金融機関も多かった。「投資信託」のページから「つみたてNISA」対象ファンドを特定しようとしても、どこをどう見ればいいのか分からないような、とても探しにくい金融機関は、残念ながら1社や2社ではなかった。

 

確かに「つみたてNISA」は、販売手数料はなく、運営管理費用(信託報酬)も一定の上限が設けられているので、金融機関の収益源としてはあまり期待できるものではないかもしれない。

しかし、「つみたてNISA」は、税制優遇制度であり、ある意味、国策の一つではないだろうか。

年間40万円という非課税枠の上限から考えてみても、比較的若い世代の資産形成に役立つはずの制度である。生まれたときからインターネットに接している、ディジタルネイティブ世代が「つみたてNISA」を始めたいと思い、金融機関のウェブサイトにアクセスしても、全く使い勝手の悪いサイトしか提供できていない、という状況はいかがなものか、と考えてしまうのだ。

 

ファンドの取り扱い状況に話を戻そう。

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」と「ひふみプラス」を「つみたてNISA」の対象ファンドとして取扱う金融機関は、筆者が確認できた161社(170社のうち)のうち、前者が14社、後者が46社であった。この数字をみて、皆さんはどのように感じるだろうか。

 

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の2021年の設定額は、実に5,635億円である。このうち、「つみたてNISA」として、どの程度の買付があったかは不明だ。しかし、「つみたてNISA」対象ファンドの中で一番人気のファンドを購入できる金融機関が、161社中14社しかないというのは驚きである。

確かに「eMAXIS Slim」シリーズは、オンライン専用の商品という位置づけではある。しかし今や、オンラインの利用はディジタルネイティブ世代に限らず、筆者のような60代以上の高齢者にも広がっている。

 

つみたてNISA」を金融機関のオンラインで行いたいという利用者は多いだろう。しかし、一番人気のファンドは、たった14の金融機関でしか購入することができない、という現状があるのだ。

 

ひふみプラス」は、46社と比較的多くの金融機関で取り扱っていた(「ひふみプラス」のサイトで確認できる金融機関の数は50社)。

これは「ひふみプラス」が、直接販売専用である「ひふみ投信」を全国の金融機関でも販売できるように作られたファンドであり、取扱い金融機関の数がとても多いこと(80社以上)も影響しているのだろう。しかし、それでも161社中46社と3割程度の金融機関でしか取り扱っていないのだ。

 

■ 運用会社や金融機関への期待

金融庁が指定している「つみたてNISA」対象ファンドは、要件を満たしたファンドが指定されているので、それほど金融機関選びに神経質になる必要はない、と思われるかもしれない。

 

しかし、国民の資産形成に資するために設けられた、税制優遇のある「つみたてNISA」という制度であるのだから、どの金融機関であってもETFを除く「つみたてNISA」の全ての対象ファンドを購入できるようになっていることが望ましいのではないだろうか。

 

もちろん金融機関には、それぞれの事情があることは理解できるし、取扱いファンドが限定的になることが想定されるので、199本もの多くのファンドを指定している、と考えることができるのかもしれない。

 

ただ利用者からすると、馴染みの金融機関で「つみたてNISA」を始めようと思っても、希望のファンドを取り扱っていない、という状況には、何か釈然としないものがある。

上場株式の場合は、証券会社に口座を開設すれば、どこの証券会社でもどの企業の株式でも購入することができるはずだ。

 

また、一つの運用会社が、「つみたてNISA」の対象ファンドとして、複数の同一指数に連動するインデックスファンド(例えば複数のTOPIX型ファンド)を提供していて、その運用管理費用(信託報酬)の水準に差がある、という現状がある。

インデックスファンドの運用管理費用(信託報酬)については、ミリオン型を筆頭に一物多価の是正が始まっていることは承知している。

しかし、取扱う「つみたてNISA」対象ファンドの数が限定的な金融機関が多い以上、また、フィデュシャリーデューティーを標榜する以上、運用管理費用(信託報酬)についても、より誠実な取組みを求めたいところである。

 

2月25日に速報値が発表された「つみたてNISA」の口座開設数は、昨年1年間で200万口座以上増加し、12月末時点では518万口座を超えていた。1年でなんと70%以上の増加である。また、「つみたてNISA」口座における買付額も、2020年の2倍以上になっていた。

 

2022年4月には高校の学習指導要領が改正されるが、家庭科で投資信託が登場し、資産形成についても学ぶことになる、と聞いている。資産形成への関心は今後益々高まると考えられ、「つみたてNISA」の口座数や残高の増加傾向は今後も続くだろう。

 

そうであれば、より使い勝手のよい「つみたてNISA」制度にするよう、運用会社のみならず、販売する金融機関の側でも、取扱いファンドを増やすなど、力を注いでもらいたいと思うのである。

 

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配信元:NTTデータエービック

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このコラムの著者

Original original oochi kouichirou
大地 恒一郎 (オオチ コウイチロウ)

株式会社アセットデザインラボ 代表 

 

1979年 電源開発株式会社(Jパワー)入社

1986年 外資系ITメーカーを経て

1987年 日興証券投資信託委託株式会社 入社 (現 日興アセットマネジメント株式会社)

           31年超の在職中 2002年~2005年執行役員、その他、商品企画部長、マーケティング部長、人事総務部長、監査部長などを歴任)

             主に、投資信託の運用、トレーディング、新規投資信託の企画・開発、既存投資信託の管理、マーケ  ティング・営業、人事、内部監査等に携わる

 

2019年 FP事務所 株式会社アセットデザインラボ設立

 

現在   投資初心者向けの投資信託、資産運用、つみたてNISA・iDeCoなどのセミナー、地方自治体向けライフプランセミナーなど各種研修・セミナー、企業型確定拠出年金新人研修などで講師を務める。

     「東証マネ部!」への取材協力の他、コラム執筆などを行っている。

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