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シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第23回「1人ひとりの未来を信じる力で世界はきっと動く」

インタビュー
配信元:NTTデータエービック
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シブサワ・レター  ~こぼれ話~ 第23回「1人ひとりの未来を信じる力で世界はきっと動く」

シブサワ・レター ~こぼれ話~

第23回「1人ひとりの未来を信じる力で世界はきっと動く 」

 

日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。

 

第23回のテーマは「1人ひとりの未来を信じる力で世界はきっと動く」です。

 

 

 

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 

散策中に樹木の芽吹きがうかがえる季節になりました。コロナ禍も、そろそろ明ける兆しを感じています。ただ、直近の10日間の自分自身の無力感、陰鬱な心の状態を正確に表現する言葉がなかなか見つかりません。

 

地球は、古代から常に新たな季節への喜びを我々に与えてくれますが、人類は愚かなのか。ロシアがウクライナを軍事的に侵攻し、数か月前には平穏無事な日常生活を送っていたウクライナ市民、そして世界が想像すらできなかったことが、悲痛な現実となっています。

 

幸せで平凡な人生を送るべき多くの尊い人命が既に失われ、これから更に増えることが避けられないようです。また、見えないところでは地上戦以上にサイバーの熾烈なゲリラ戦争が起きているに違いありません。

 

異常な状態をお互いが招くことは回避するはずという共通認識から、長年封印されていた核戦争の悪夢シナリオすら頭をよぎります。過去に葬り去って忘れられていた歴史を人類は繰り返すのでしょうか。ウクライナ情勢を受けて、自国防衛の強化は当然とのスタンスから、日本でも「敵」の侵攻を未然に防ぐために核兵器の共同運営を議論すべきという声が上がっています。

 

一方、他の声も上がっていることも確かです。遠い国の戦争に、自分一人じゃ何もできないという無力感に陥ることなく、上がっている声です。たった一声かもしれません。あるいはたった一口の寄付。でも、このような一人ひとりの想いや行動は、繋がっている。それが、独裁に覆されることのない民主主義の「武器」であること。そんなことを表明したい声です。一日も早く、ウクライナの、そしてロシアの、一般の生活者の人々の笑顔が戻るように。

 

ロシアに対する経済制裁も一つの手段でしょう。しかし、その制裁で最も打撃を受けるのは、普通に生活をしたいと思っていて、戦争なんかしたくない、一般市民です。他にも、日本ができることはあると思います。少なくとも日本国内で生活しているウクライナ人の方々が愛する家族と一緒に過ごせること。日本で日本人と暮らしたいと思うウクライナ人に我々は門戸を開いて「ようこそ」と笑顔でお迎えすべきではないでしょうか。

 

反対意見も多いでしょう。ただ、賛同していただける方々も多いです。そのような日本人の一人ひとりがコモンズ投信の社会起業家フォーラムのOGである渡部カンコロンゴ清花さんが立ち上げた署名キャンペーンに署名しています。この合唱を日本政府へ、ウクライナへ、世界へ送ることは、とても大切だと思います。

https://www.change.org/voice4ukrainian_refugees

 

このような良識的な国民の声が多く上がっていることに気づかれたのか、岸田総理はウクライナから国外に避難する人について「日本への受け入れを今後進めていく」、また新型コロナウイルスの水際対策の枠とは別に柔軟に対応することを検討すると表明されました。このご英断に対し、私、そして署名キャンペーンで示されているように多くの日本人が歓迎し、支持しています。

 

Imagine all the people, sharing all the world. You…

「想像してごらん、全ての人々が世界を分かち合ってる。貴方が」

ジョン・レノンの名曲「イマジン」を聴くたびに、心が揺さぶられて涙が込み上がってきます。孤独な歌詞とメロディーに、I am not the only one「自分だけじゃないさ」という微かな希望も感じるからでしょう。ただ現在ほど、イマジネーションが必要とされている時代はないかもしれません。これが、人類の最大な「武器」です。

 

もちろんマウンティングという行為は人類だけではなく、他の動物でも自分の優位性を表す本能です。ただ10年以上前に、ある生物学者からお伺いして印象に残った話があります。地球に存在している多数多様の生物種数(国連環境計画UNEPによると約870万)の内、人類しか持っていない特別な才能があるようです。これはチンパンジーやゴリラなど霊長類という賢い動物でも持っていない能力です。

 

実は、ゴリラとチンパンジーには、イマジネーション、想像力が無いようなのです。つまり、彼らが所属しているところは、たった一つしかない。イマ・ココという所属です。生物学者からお伺いしたこの観察は元々、ゴリラ研究の第一人者である京都大学前総長の山極壽一先生の研究から解明したとのことで、去年、勉強会で山極先生のお話をお伺いする機会があり、ご本人に確認しました。先生によるとゴリラが所属しているところは一つしかなく、それは「家族」だそうです。一方で、チンパンジーは家族に所属しておらず、「集団」だそうです。

 

我々人間は、当然ながら、自分の家族に所属しています。同時に、自分が勤めている会社組織にも所属し、様々な団体にも所属しています。また、自分が暮らす地域に所属していますし、自分の国にも所属し、そして、地球にも所属しています。我々が存在しているところは、イマ・ココだけなのに、色々なところに同時に所属できることは、人間だけに与えられている能力です。

 

つまり、我々は物理的にはイマ・ココに属していますが、頭の中では、どこでも、いつでも自由に動き回れるということです。我々人間は愚かかもしれない。ただ、我々には想像力がある。我々の一人ひとり「未来を信じる力」というイマジネーションを活かせば、世界はきっと動きます。我々は、無力ではない。

 

 

□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □

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 https://bit.ly/3uM0qwl

 

 

   「渋沢栄一 訓言集」国家と社会

 

    戦争は、洪水や噴火と異なって、

    人心より発生するものである。

 

戦争は自然災害ではなく、人災です。我々の目の前に見えるのは一つの現実しかありません。人心にイマジネーションを活かすことを忘れてしまうと。主体性を「自分」ではなく、「相手」に置く思いやりである「仁」は儒教では最も難しい五徳(仁・義・礼・智・信)と云われています。それは、人類しか与えられていないイマジネーションを活かすことを人は忘れてしまうからでしょう。せっかく与えられているのに、それを活用しない人類は愚かです。

 

 

    「渋沢栄一 訓言集」国家と社会

 

   平和の破れた暁に、わが国はあくまでも

   平和を希望したなれど、かの国が云々ゆえ、

 勢い止むを得ぬなどと、ただ己れを善くせんとするが

 ごとき責任転嫁の弁解は、これすでに平和の敵である。

 

   真正の王道、真正の文明を主義とするならば、

    決して平和の破れるはずはないのである。

 

どの時代でも、戦争を仕掛けるときには、脅威に対する「防衛」と言うのでしょう。大国を目指すならば、大国らしきの真正の王道、真正の文明を見せるべきです。

謹白

❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。

渋澤 健

【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

 

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配信元:NTTデータエービック

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渋澤 健 (シブサワ ケン)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。

コモンズ投信株式会社取締役会長。

1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。

JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。

2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。

07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。

経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

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