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シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第47回「未来フロンティアのアフリカに先行投資する日本企業」

インタビュー
配信元:NTTデータエービック
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シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第47回「未来フロンティアのアフリカに先行投資する日本企業」

シブサワ・レター ~こぼれ話~

第47回「未来フロンティアのアフリカに先行投資する日本企業」

 

日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。

第47回のテーマは「未来フロンティアのアフリカに先行投資する日本企業」です。

 

 

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

舗装されていない砂利道を5時間以上の陸路移動。夜ホテルに到着し、翌朝の出発集合時間が午前7:30、帰路は6時間以上かかるかも。これを聞いた私は苛立っていました。行程を企画してくれた事務局の心配そうな顔が気になりましたが、移動は道の凸凹で四方に揺られながら、発酵したような微妙な異臭漂う窮屈なマイクロバスで、4日連続昼食の弁当が膝にこぼれ、私の中で溜まり溜まったものがあったのでしょう。これは1月末に初めて訪れたガーナでのお話です。

入国出国は他のアフリカ諸国と比べるとスムーズでした。また首都アクラの中心部の車道は問題なかったです。ただ、ちょっと街から外れるだけで状態は一変します。乾季だったので、粘土性の道のぬかるみは無く車が前進することには問題ない一方、砂ぼこりが舞い上がり、道端のバナナ樹などが枯れているのかと思いきや、大きな葉の全体に赤い土がこびりついていました。またサハラ砂漠から上空の風によって運ばれて浮遊している砂塵とも混じり、晴れているはずの空が靄で太陽の光を閉ざしてしまいます。

道路は経済社会の開発のために不可欠ですが、このような中途半端な開発の状態で道端の小屋で暮らし、屋台で生計を立てることは、本当に開発が目指す豊かな生活になっているのか考えさせられました。一方、グローバルヘルスの要である健康医療ケアへのアクセスの課題を、会議室やウェブ会議で討議するだけではなく、実際に現場で体感できたことは大事であると痛感しました。

今回のガーナ訪問は、代表を務めている「グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同」の会員企業の活動を報道陣に取材してもらうメディア・ツアー企画に付き添うことで、去年に経済同友会の下で設立したアフリカ向けインパクトファンドの運用会社の”&Capital”の今後の事業展開を推進するという考えがありました。ただ、現地のガーナ人から5日間でアクラだけでなく、他に4つの地域のロケーションに回る強行的な行程なんて信じられないと驚かれました。

アクラの郊外であるグレーターアクラではSORA Technologyという日本のスタートアップがドローンの飛行実験を視察しました。空上から広域的に獲得する地表データのAI分析でマラリアを媒介する蚊のボウフラが生態する水溜まりなどをピンポイントで感知することで、殺虫剤を全てにばらまくことを抑制し、コスト的にも環境的にも負荷を軽減する事業を目指しています。

塩野義製薬と国際協力NGOジョイセフ(JOICFP- Japanese Organization for International Cooperation in Family Planning)の「Mother to Mother」という母子保健の協働プロジェクトを実施しているアカテン地区の漁村を視察しました。コミュニティ保健センターに(薄暗い古びた)分娩室が整備されていますが、妊婦によっては長時間かけて大きな河を渡らなければならないなど様々な課題があり、住まいや移動中に出産してしまうケースが半数ぐらいあるとのこと。

本プロジェクトは保健センターに隣接している“Maternity Waiting House”を建設し、妊婦が出産前から待機できる施設を設けました。野外便所しか無さそうな村に、トイレ付きの衛生的な環境で妊婦は安心して過ごせます。

コンフォリドゥア地区では豊田通商が出資している米ベンチャーで、ドローンを用いて医薬品や血液などの空中宅急便事業に取り組むZipline社の配送センターを視察しました。カタパルトで飛行機型ドローンが飛び立ち、飛行およびパラシュート配送は全てAI自動操縦。ドローンの「着陸」は、高さ10メートルほどのトラス構造体に張られているコードが飛行しているドローンについている数センチのフックを捉えるという驚異的に正確なプログラミングと飛行物体の合わせ技です。飛行、配達、着陸の成功率は99.9%だそうです。

また同社が取り扱うトヨタ・ランドクルーザーを特別整備したワクチン専用冷蔵庫は現地の保険庁から重宝されていて、管轄している全てのロケーションをカバーするために30台ほしいと言っていました。一台いくらですかと現地責任者に聞いたら、(WHO‐世界保健機関‐から無償で提供されているため)「知らない」というオチがありましたが。

そして、旧アシャンティ王国のクマシ地区では、NEC・シスメックス・味の素ファウンデーションの母子保健・栄養管理/改善の日本企業三社のコラボレーションを視察しました。日本のJICAとガーナ政府が協働して開発した母子手帳の配布が制度化されていますが、記入漏れや手帳を無くすケースも多々あります。

NECのテクノロジーによってオンラインで母子の健康状態をデータベース化することによって、ヘルスケア・ワーカーの手元にあるパッドから、それぞれの妊婦の情報にアクセスし、タイムリーな健康栄養管理の促進カウンセリングを可能にしています。

また、シスメックスの多項目自動血球分析装置によって、従来の顕微鏡を用いるマラリア検査では測定に1サンプル40分以上かかるところを所要時間1分に短縮され、待たされることがなくなったおかげでより多くの検査が可能になっています。マラリア患者の約95%、死亡者の約96%がサブサハラアフリカで、死亡者の約80%は5歳未満の子どもたち。おおよそ1分に1人、世界のどこかで、子どもたちがマラリアで命を落としている計算になります。

そして、タンパク質等の不足で子どもの成長の遅れを引き起こす様々な現象を改善するために、味の素はアミノ酸と大豆などの粉末サプリメント“KoKo Plus” (要は、きな粉のイメージ)を開発して、栄養素が乏しい離乳食に混ぜるだけで美味しく改善する事業を行っています。価格は日本円で1袋=約10円で貧しい家庭でも購入できる単価に設定し、地道ながらも重要な社会課題解決に取り組んでいます。

同行した記者の皆さんが見て聞いた内容がさっそく記事化されていますので、ご参照ください。

共同通信
『ガーナで薬、空から配送 感染症対策ドローン活用』
https://www.47news.jp/10505280.html

日本経済新聞
『アフリカ・ガーナの医療改革、豊田通商や新興が挑戦』
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1372X0T10C24A2000000/

読売新聞
『[国際女性デー 母子の命を守る]ガーナで〈上〉遠方の妊婦に「待機所」』
https://www.yomiuri.co.jp/life/20240227-OYT8T50088/

『[国際女性デー 母子の命を守る]ガーナで〈中〉日本発アプリ 栄養指導』
https://www.yomiuri.co.jp/shimen/20240228-OYT9T50148/

『国際女性デー 母子の命を守る]ガーナで<下>ドローンで医薬品配送』
https://www.yomiuri.co.jp/life/20240229-OYT8T50058/

今回は自分だけでは絶対に足を踏み入れることない過疎地を視察する貴重な機会をいただきました。日本人など外国人をほとんど見たことない村人たち、固い表情で目を合わないようにしていた場面も多々ありました。ただ、そこで、こちらから笑顔で手を振ると、必ず笑顔で手を振って挨拶を返してくれます。

保健センターに集まってきているお母さんたち(といっても、多くは日本では女子高・大学生の年齢)に自撮りをしようと動作すると、言葉が通じなくても、笑顔でイエ~イ♪と一緒にポーズしてくれます。村の学校を視察で通り過ぎたときに、教室の窓から我々の動向に注意を向けていた子供たちに手を振ったら、大きな笑い声で応えくれました。

日本から本当に遠い地で、我々が想像できないほどの逆境の生活がある過疎地でも通じるものがあると、ほっこりしました。また、この弾けるような笑顔が一瞬ではなく持続的な状態にすることが、開発協力が目指すべき豊かさの本質であると実感しました。

過疎地の地区の絶対的な権力者である族長から、会見したガーナ大統領や保険庁幹部に至るまで、日本への感謝の意を真摯に示してくださいました。明らかにグローバルヘルス関連でガーナにおける日本の存在感があることを確認できました。ただ、必ず「もっと支援をお願いします」という一言もあり、ここに開発協力援助の課題を感じました。

今月1日に外務省で「開発のための新しい資金動員に関する有識者会議」の第一会合に出席しました。去年開発協力大綱が8年ぶりに改定され、日本がODA(政府開発援助)を開始してから70年という節目に立っている今、設置された本会議の冒頭で、上川陽子外務大臣から前例に捕らわれることなき提言を期待するとの心強いメッセージを頂戴しました。

今年6月の骨太方針へ入れ込むことが前提の短期勝負でありますが、なかなか良い議論ができそうな有識者メンバーとご一緒することに恵まれ、面白い展開になることを期待しています。改めてご報告いたします。

ODAは「時代遅れ」「税金の無駄」「外のことを心配するより国内を優先せよ」という、あきれるほど視野が狭く近視眼的な声が少なくない中、日本のこどもの未来の豊かさは、世界のこどもの豊かさに繋がっているという揺るがない姿勢を岸田政権下の日本政府に示していただきたいと切に願っています。


□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。
  https://bit.ly/3uM0qwl


     「論語と算盤」それただ忠恕のみ

  忠恕はすなわち人の歩みべき道にして立身の基礎
 つまりはその人の幸運を把持することになるのである

他人に思いやりがある良心に忠実であることは、自分の身を立てる基礎であり、また自分の幸運に主体性を持つことと、栄一は考えました。これから国民の豊かな生活を目指す国の開発に協力し援助することは、日本自国の基礎づくりであり、幸運への主体性を持つということでもありましょう。


   「論語と算盤」防貧の第一要義

      富の度を増せば増すほど
    社会の助力を受けている訳だから、
 この恩恵に酬ゆる救済事業をもってするがごときは
       むしろ当然の義務で、
  できる限り社会の為に助力しなければならぬ

ここで「社会」を「世界」と置き換えた場合、これからの日本が豊かになる条件は世界から助力を受けているといえます。日本の官民が連携して世界の持続可能な開発協力に取り組むことは、当然の義務であり、自国繁栄の長期投資でもあります。


謹白
 

❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。

渋澤 健

 

【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他

 

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配信元:NTTデータエービック

このコラムの著者

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渋澤 健 (シブサワ ケン)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。

コモンズ投信株式会社取締役会長。

1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。

JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。

2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。

07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。

経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

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