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第32回「広島G7サミットで日本が果たすべき役割」
日本資本主義の父 渋沢 栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。
第32回のテーマは「広島G7サミットで日本が果たすべき役割」です。
謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
世界において日本は有数の先進国です。それも、非西洋文化圏の先進国という意味での存在は特別です。そのような立場の日本が、来年の広島G7サミット議長国として世界に責任を果たす役割はとりわけ重要だと思います。
その重要事項に、開発途上地域であり且つ人口が多いグローバルサウスの持続可能な経済社会の発展を支える責任があります。ロシアによる侵攻は、原料価格高騰などの連鎖でグローバルサウスの多くの人々の生活も苦しめています。
途上国地域の平和、人権や人道を含む経済社会の発展を支援する資金・技術提供である開発協力(ODA)の根幹となる「大綱」が8年ぶりに改定されるため、年内に有識者懇談会の報告書が取りまとめられ、日本の重要な国家戦略の骨格が定められます。
4回も有識者懇談会が開催されていますが、本件について報道、ニュースのコメンタリーは目立ちません。視聴者や読者(国民)の関心が無い分野であるという判断だとしたら、それは極めて残念な事です。
改正の討議も少々急いで進行している感があります。開発援助の領域は軍事・安全保障との密接な関係もありますので、政府が予定している国家安全保障戦略(NSS)の改定に伴う防衛費の検討と関係しているのかもしれません。開発協力大綱の改定には当然ながら予算要望も含みますので年内に新たな大綱の骨子を示したいのでしょう。その上で、市民社会や経済界などとの様々な意見交換を経て、来年前半を目処に、新たな開発協力大綱が策定されるようです。
その意見交換に先駆け、11月中旬に大企業・スタートアップの経営者らと共に林芳正大臣を訪問しました。「世界の人々の健康な生活を共同で支えている日本」をビジョンとして掲げている、グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志会である我々は、日本は同分野において高い価値創造力を世界にアピールすべきと考えています。
貧困層も含む世界の多くの人々の生命と健康な生活を実現させるための様々な課題に、日本企業が持つ技術やアイデアが有効な解決策や価値を提供することは、「取り残さない」包摂性ある世の中への前進です。
また、早い段階から途上国地域に日本が誇る製品・サービスを展開することは、日本の新たな産業を振興する成長政策にもなります。まさに、岸田政権が掲げる新しい資本主義の「成長と分配の好循環」のグローバル展開です。したがって、我々ビジネスリーダー有志会は以下の3つの要点を林大臣に要望いたしました。
1. 日本の外交・経済安全保障政策の優先事項として、グローバルヘルスを開発協力大綱の中で大きな柱と位置付けていただきたい。また、グローバルな「分配」により、民間企業によるグローバルヘルス分野への更なる貢献という「成長」に繋がる「好循環」を促すため、日本の保健分野のODA 拠出額を、2020 年度(COVID-19 対策費の緊急支援を除く)比で、2025 年までに倍増し(他のG7国との全体の援助におけるグローバルヘルスの拠出配分率の平均値と並ぶことで)、国際的なリーダーシップを発揮いただきたい。
2. グローバルヘルス分野により多くの多様なセクターの民間企業が参入し、人々の健康に更なる貢献ができるよう、開発協力大綱に基づいた政策を実行する上で、策定後も継続的に議論を行う政府・企業の連携体制を構築することを要望し、一時的な支援に留まらず、ソリューションを提供するなどの新しい開発協力の形を目指していただきたい。また、資金協力だけに留まらず、民間企業のサービスや製品を供給する仕組の実現を要望する。(国際開発機関の製品等の調達において日本のプレゼンスは極めて低いです。)
3. 日本の産業育成、経済安全保障を確保するためにも、グローバルヘルス分野の国際協調の枠組において更なるリーダーシップを発揮し、G7 広島サミットなどの国際会議の場でも、規制調和などの議論をリードしていただきたい。また、パンデミックへの備えに向けて、世界における公衆衛生のさらなる向上の観点から、低・中所得国における人材育成も同様に推進いただきたい。
グローバルサウスの発展において必要な道路、橋、港湾など質の高い社会的インフラの整備にあたり日本の役割は大きいです。ただ入札価格の側面では、他の国々の方が勝る現実があります。
もちろん日本がハードな社会的インフラ整備で活躍していない訳ではなく、例えば、バングラデシュの首都ダッカでは公共交通網として大量高速輸送システム(MRT)の大規模工事が円借款のODAによって行われています。ただ、ハードを提供しても、その運営やメンテナンスに人材育成が必要です。また青年海外協力隊は人的リソースから途上国に地域密着型で伝える長年の実績があります。
このようなPeople Centric(人中心)な開発援助が日本の特長ではないでしょうか。かつて途上国であった日本が当時の先進国に仲間入りできた理由は「人」という資源を活用できたからです。
人を中心に置くことは、長年の日本の外交戦略である「人間の安全保障」の精神であり、岸田政権の新しい資本主義の実現の柱に「人的資本の向上」「人への投資」が建てられています。G7において、日本がスローガンに自己陶酔することなく、きちんと実現可能な具体策の提示によって、世界の人中心アジェンダを実現してほしいと切に願っています。
□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。https://bit.ly/3uM0qwl)
「渋沢栄一 訓言集」国家と社会
国交をして、道理正しく安全を保ちて、
いやしくも危険なからしむるは、
これ国を愛する者の当然の義務である。
国内に目を配ることは民主義社会における政府として当たりまえのことです。ただ、道理正しい民主主義の政府の義務は国民本意の最大化だと思います。その本意を最大化には国境の中の事項に留まることなく、世界に置いて国のプレゼンスを、その国の特長を活かしながら、高めることでありましょう。
「論語と算盤」模倣時代に別れよ
我々は今日ただいま、
心酔の時代と袂別せぬばならぬ。
模倣の時代から去って、
自発自得の域に入らねばならぬ。
渋沢栄一は、多くの気づきを西洋社会から学び、日本の発展のために尽くした人生を送った人物です。ただ、あくまでも日本人は日本の特長を活かすべきであるという信念も貫いていました。日本の国家戦力を、気持ち良い言葉だけではなく、謙虚さを維持しながらも、自発自得の精神で世界に存在感を示していただきたいです。
謹 白
❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。
渋澤 健
【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他
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配信元:NTTデータエービック
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