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シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第39回「南仏のアツイ会議で問う新しい経済」

インタビュー
配信元:NTTデータエービック
投稿:
シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第39回「南仏のアツイ会議で問う新しい経済」

シブサワ・レター ~こぼれ話~

第39回「南仏のアツイ会議で問う新しい経済」

 

日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。

 

第39回のテーマは「南仏のアツイ会議で問う新しい経済」です。

 

 

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 

7月初旬、フランスに出張しました。小学二年から大学卒業まで米国で育った自分は、国外では英語圏仕様であります。しかし、コロナ禍で遠ざかっていた海外出張を去年の5月から解禁してから、米国は1回のみ。一方、アフリカは6ヵ国渡航しており、乗り継ぎを含むとフランスは今回で4回目です。

 

今回はLes Rencontres Economiques d'Aix-en-Provence (エクサン・プロヴァンス経済会議)というフォーラムに登壇する機会をいただきました。これは(フランス人曰く)フランス版のダボス会議と言われているようですが、2000年から継続している国際会議でありながらも日本での知名度はまだ低く、例年日本人があまり参加しないことから、在仏日本大使館からご推薦をいただきました。およそ1,000名の参加者で約8割がフランス人、2割が国外、そして日本人は5名程度という希少な存在でした。

 

登壇したセッションでは、ディスカッションのテーマのキーワードがまさに「希少性」でした。大量消費ではなく、また資源などの搾取ではなく、社会的常識を希少性による新しい経済に向けるという、少し小難しい内容でした。

 

フォーラムの開催地である南仏のエクサン・プロヴァンスの優雅な環境で希少性による経済を討議する一方で、事前の行程で訪問したパリやマルセイユでは数日前に大暴動が起こり、日本でもニュースになりました。ただ、滞在中に危険性を感じることはなく、街は大勢の観光客などで賑わっていました。

 

しかしながら、空港からパリ市内に向かうルートで高速道路から降りた地区は、まるで途上国で見慣れているようなシーンでした。念のため、車内で作業中のPCやスマホが窓越しに見られないようにしまいました。そして、数日後にエクサン・プロヴァンスに向かうため、マルセイユの市内から郊外へ向かう街の中心部には、丸焦げになっているバスなど数日前の暴動の傷跡が残っていることも車窓から見えました。

 

フランスの豊富な文化資源に感心感動する一方で、生活における希少性から生じているフランス国民の格差問題は、国の安全安心という豊かさの根源を脅かしていることを実感しました。

 

資本主義によって格差社会が生じ、資本主義では豊かな生活や未来を期待することができないという痛烈な叫びが聞こえてきます。このような社会情勢と比べるとぬるま湯に浸かっているような日本社会でも痛ましい事件の報道が最近増えているように思います。

 

ただ、私を含む数えきれないほど多くの人々が、資本主義の経済社会で豊かな生活を送れていることもまた確かです。資本主義を否定するのでなく、希少性を前提とした資本主義の進化が新しい時代を導くという、思考のトランジションが求められる時代にもなっているのではないでしょうか。

 

日本の、懐かしい資本主義の成功体験は昭和時代に築かれた、主に先進国の大量消費に応えた大量生産です。先進国の人口が増えることで富み、富んだ先進国の人口が増えることで成長する経済モデルであり、生産の量だけでなく質にも拘ったことが、昭和日本の好循環を産みました。しかし平成日本ではこの好循環の潮目が変わります。

 

まず量産を追求すると価格が下落することは経済論の基本です。また、日本の硬直的な労働市場では、有能な日本の人材が経験値と共にアジア隣国へ流れるという現象もあり、質と価格対比の側面で彼らの競争力が高まり、分野によっては日本を追い越すようになりました。平成から新しい世紀に入った頃には日本が工業生産の量と質でアジア隣国に負ける事もあるという、それほど遠くなかった未来をほとんどの日本人が見落としていました。

 

そう考えると、令和日本という新しい時代には新たな成功体験へのモデルチェンジが急務です。生産量を増やすことだけの経済成長の常識から、質の向上による経済成長、つまり、希少性の価値について思考を深化させることです。

 

希少性には希少価値がある。これも経済理論の基本です。これは資本主義や成長の否定ではなく、価値の対象を量から質へと展開する経済社会の可能性へのチャレンジです。

 

先進国で最も早く高齢化少子化社会で人口が減少する日本の、これからの繁栄の価値の定義を量から質へと転換することができれば、人口減少でも豊かな社会を築けるという世界の先進国のロールモデルになれるでしょう。量を消費し続ける経済社会には人口を増やす必要がありますが、人口の量が増えても一人ひとりの「人的資本」の質が劣化するような状態が生じることは、深刻な社会課題を招きます。

 

本来のあるべき「異次元な少子化対策」とは、人口を増やすために財源を異次元化することではないと痛感いたします。子どもが増えても、子どもに対する痛ましい事件が絶えないならば、それは豊かな社会とはいえません。

 

今までの人口減を食い止める「量」を前提とする少子化対策ではなく、生まれてくる一人ひとりの子どもたちの成長環境を向上させる「人への投資」を通じて、「質」を向上させる少子化対策に知恵を絞るべきです。人口が減少しても、希少性を価値とする国民の豊かな生活が実現することができれば、まさに異次元であり、人類史上に類がない「新しい資本主義」になります。

 

今回のセッションのアイスブレイクとして登壇者に「貴方は未来に楽観的ですか」という問いが投げかけられました。私の答えは「はい」でした。我々の世の中、社会や生活に様々な課題や苦悩が存在している現実があることに間違いありません。ただ、楽観や悲観とは現実に直面したときの人間の認知の状態です。

 

未来に対して楽観(悲観)を認知できる生物は地球上に確認されているおよそ175万種の内、たった1種である人間しかできないことです。地球上のデータを全てかけ集めたとしても、AIは未来に楽観することもできません。人間は楽観できるから希望を掲げ、実行に移し、時に飛躍している認知の状態を現実と結び付けることができる、地球上の唯一の存在です。希少性には価値があります。


□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。
https://bit.ly/3uM0qwl


「論語と算盤」ただ王道あるのみ

富の分配平均などとは思いも寄らぬ空想である。

 

およそ500の会社の設立に関与したと知られている「日本の資本主義の父」の渋沢栄一は、600ほどの社会的事業の設立にも関わった実績から、インクルージョン(包摂性)によって新しい時代が拓けると考えていたことは明らかです。

 

ただ、それは「みんなが同じになる」という結果平等でなく、どのような身分の生まれや立場であったとしても、自分が与えられて能力や才能をフルに活かして参画できる機会平等の社会を目指していました。

 

この話に、フランス人の女性経営者から感動したとお声がけいただいたことが印象に残りました。先進国として当たり前のことだと思っていたのですが、そうでは無いのかもしれません。


「論語と算盤」大丈夫の試金石

自然的逆境に立った場合には、
第一にその場合に自己の本分であると覚悟するのが
唯一の策であろうと思う。
足るを知りて分を守り、
これは如何に焦慮すればとて、
天命であるから仕方がない。

 

今回のエックス・プロヴァンス経済会議では、渋沢栄一が資本主義を学んだのがフランスであり、栄一の思想とは道徳と経済の一致、つまり人間力(人的資本)の向上による持続可能性であると解釈できるという紹介から始めました。

 

また岸田政権の新しい資本主義の本質であると私が考える(ただ報道機関等が焦点を当ててくれない)ことは「外部不経済を取り込む」包摂性ある資本主義であり、その具体策として人的資本向上に取り組んでいるという説明に展開しました。

 

そして日本人が昔から尊んだ感性があり、それは自然の支配ではなく「自然との共生」であり、また「足るを知る」ことであると締めくくりました。

 

5人の登壇者の発言で主にフランス人の聴講者がセッション中に拍手してくれたのは私と(多くの支援者と思われる聴講者が駆け付けていた)環境活動系政治家だけでした。フランス語音痴でも、以外と通じたようです。

謹白

 

❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。

渋澤 健

 

【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他

 

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渋澤 健 (シブサワ ケン)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。

コモンズ投信株式会社取締役会長。

1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。

JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。

2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。

07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。

経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

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