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シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第42回「日本が世界をリードする”インパクト”」

インタビュー
配信元:NTTデータエービック
投稿:
シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第42回「日本が世界をリードする”インパクト”」

シブサワ・レター ~こぼれ話~

第42回「日本が世界をリードする”インパクト”」

 

日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。

第42回のテーマは「日本が世界をリードする”インパクト”」です。

 

 

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。


9月下旬にニューヨークで開催された国連総会サイドイベントにおいて、岸田総理、ビル・ゲイツ、テドロスWHO事務局長など”ハイレベル“の有識者が次々とご挨拶されるステージで、G7広島サミットの首脳宣言で承認されたTriple I for Global Healthの共同議長としてご挨拶させていただく大変貴重な機会を頂戴しました。

Triple I とは、“Impact Investment Initiative”の省略であり、新しい資本主義の「個別分野の取組」として記載された「グローベルヘルス(国際保健)分野への民間資金の呼び込みに向けた投資インパクトの可視化」への実践で、今回のサイドイベントにより正式に発足いたしました。岸田総理を始め、世界の数多くの有識者から激励のメッセージをいただいたことで、(心臓はバクバクしませんでしたが)まさに背筋が伸び腰痛を感じました。

インパクト投資を通じて、新しい成長産業としてグローベルヘルスの発展を促し、この地球規模課題の解決に新たな民間資金を動員することをTriple Iは目指します。内閣官房の事務局の働きかけにより、内外の投資家・企業を含むステークホルダーとの官民連携として日本から世界へ向けて発足できたことは、総理が当日のスピーチで示されたように新しい資本主義のグローバルな展開であります。

また先週に東京で開催されたPRI in Person 2023の基調講演で内外投資家へ示した「特に重要な日本の政策の4つ」の一つに課題解決型スタートアップ及びインパクトに着目し、Triple Iについても言及していただいたことに大変心強く感じました。

新しい資本主義は、人への投資、労働市場改革など、今日までの資本主義の構造から大転換し、新たな時代の「成長と分配の好循環」を促進する政策であると私は理解しています。四半期速報値など短期的な経済指標では新しい資本主義の真の成果は測定できず、今までの資本主義の枠組みではわかりづらいようです。

一方、GDPのように、ただ大量に造って大量に捨てることを繰り返すこと等が「成長」の尺度であることに、そもそも違和感を覚える層が増えていると思います。世界の人々が、どのような社会環境に生まれ育っているとしても、健康に生活できる可能性を高めることは、まさに人的資本への投資であり、本来あるべき「成長」に近づくと思います。

Triple Iは、Knowledge & Implementation Partnerとして、英国が議長国であった2013年のG8サミットを起源とするGSG(Global Steering Group for Impact Investing)/ITF(Impact Task Force)およびゲイツ財団が参画しており、EY Japanと共に内閣官房の事務局をサポートする体制になっています。

また、発足の時点で国際的な専門団体8社のAdvisory &Advocacy Partnersに加え、37社で構成するFounding Partnerに数多くの日本企業・投資家が参画すべく手を挙げてくださいました。Triple Iを起動に乗せ、2025年のG7議長国になるカナダにTriple I事務局のタスキを渡せる様、政府の更なる支援を引き続きお願いいたします。   

準備体操する期間があまり無いままスタートラインに立っていますが、これからが本番です。事務局案のガイドラインを鑑み、ゴールを定め、どのレーンを走るのかが、私を含む三名の共同議長(htps://tripleiforgh.org/#aboutご参照)の役割になります。明らかに見えてきたことは、やはり、G7というプラットフォームの招集力です。意思決定プロセスは複雑で労力を要しますが、G7のイニシアティブとして立ち上げたことで、参画に関心を示す声が多方面から聞こえてきます。

今まで、投資の分野とグローバルヘルスはかけ離れている存在という認識がほとんどでありましょう。利益を追求する投資であれば、グローバルヘルスの本当に必要なところにお金が届かないという懸念があります。一方、利益を期待できないのであれば投資家として受託者責任を果たせないという声も大きいです。

そこにインパクト、つまり環境社会課題の解決を意図しながらも収益を期待するという考えによって、前例がないと思われているところに世界のベストプラクティスを共有する場をつくり、新たな成長産業を促すことがTriple Iの目指すところです。グローバルヘルスの課題を全てインパクト投資が解決できる訳ありません。ただ、グローバルヘルス解決のバリューチェーンのどこかに、利益を期待する事業として参画できる箇所が多くあるはずです。

グローバルヘルスに事業展開する企業は財務的な価値創造だけでなく、非財務的な価値創造もしており、「見えない価値」への可視化に対する関心がこの1~2年間で急速に高まっていると実感しています。先月、EY Japan主催の「インパクト加重会計(IWA)とPBRモデルによる非財務取組の財務インパクトの可視化」のウェビナーに登壇したところ、800名超が視聴されて、その数の多さに登壇者も主催者も同様に驚きました。

企業が環境社会課題に対して寄付など通じて支援することは企業価値につながると私は確信しています。ただ、その場合、企業にとって財務的に計上されると費用になります。インパクト投資は企業のバランスシートを使いながら社会的課題の解決策を提示する新たなお金の使い方です。

インパクト投資は、元本はもちろんのこと、利益も還元されることが前提です。「リターン」とは還元されること。つまり、資本主義が取り残してきた外部不経済を取り込み、企業バランスシートを活用しながら「成長と分配の好循環」を促すイノベーションです。インパクト投資は新しい資本主義を実現させる主たる手段であることは間違いなく、また、このように日本発で世界をリードしている分野でもあります。


□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。
  https://bit.ly/3uM0qwl


  「論語と算盤」孔夫子の貨殖富貴観

         しからば孔子は
 「富貴の者に仁義王道の心あるものはないから、
 仁者となろうと心掛けるならば富貴の念を捨てよ」
      という意味に説かれたと言うに
     論語二十篇を隈なく捜索しても
 そんな意味のものは一つも発見することはできない。

          むしろ孔子は
  貨殖の道に向かって説をなしておられる。

健康医療で誰一人も取り残さない解決策を求めるグローバルヘルスに人道的な仁義王道は不可欠であることは間違いありません。ただ、利益を求めることが仁義王道を損ねているという考えは浅いと栄一は強く断言します。「貨殖の道」とは何か。時代や表現は異なりますが、その本質は「インパクト」であります。


     「論語講義」里仁第四16

  「子曰く、君子は義に喩り、小人は利に喩る」

 事業を新たに起しまたはこれを盛んならしむるには、
  世間多数の人より資本を寄せ集めねばならず、
    資本を寄せ集むるには、事業より利益の
   あがるようにせねばならぬものなれば、もとより
   利益を度外におくことを許さぬは勿論である。

グローバルヘルスという地球規模的課題を解決するためには莫大な資金が必要となります。政府の予算や財団の支援だけでなく、民から新たな資金の動員が不可欠です。ただ民間企業の寄付などは大事な財源になりますが、「利益を度外におくことを許されない」企業は事業を通じて解決策を提示できれば、より多額な資金がグローバルヘルス分野へと循環することになるでしょう。課題解決の意図と利益追求の両輪。これがインパクトの基本概念です。

謹白

❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。

渋澤 健

 

【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他

 

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渋澤 健 (シブサワ ケン)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。

コモンズ投信株式会社取締役会長。

1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。

JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。

2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。

07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。

経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

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