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シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第38回「G7でも見えたインパクト投資のこれからの展開」

インタビュー
配信元:NTTデータエービック
投稿:
シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第38回「G7でも見えたインパクト投資のこれからの展開」

シブサワ・レター ~こぼれ話~

第38回「G7でも見えたインパクト投資のこれからの展開」

 

日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。

 

第38回のテーマは「G7でも見えたインパクト投資のこれからの展開」です。

 

 

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 

抱いている期待が応えられないと失望する。これは、人と人とが交り合いながら形成される人間社会では当然なことでしょう。G7広島サミットの成果に失望したという一部の声が報道され、その方々から見える範囲の視点でそのような思いに至ることはわかるような気がします。

 

ただ私の視点では、日本が見事に議長国の役割を果たして成功したG7サミットという実感がありました。世界における新しい日本の姿が見えてきたからです。

 

現在の混沌とした世界情勢において、広島平和公園慰霊碑の前に岸田総理と並ぶG7各国の首脳、グローバルサウス等各国の首脳、ゼレンスキー大統領、それぞれの姿に感動いたしました。このシーンを写真に収めることだけに、いかに数多くの関係者が長い時間をかけてご尽力された姿も背景に見えてきて、首脳コミュニケ(宣言)の公文には現れない成果、そして難題もあったことが想像でき、拍手喝采です。

 

余程の外交政策オタクでなければ首脳コミュニケを全て読み込むことはないでしょう。ただ、全ての一行一行は各国の立場の意思を反映しながら調整して作成する、英語本文で40ページ、仮訳で39ページという大作業です。私が座長を務めた「インパクト投資とグローバルヘルス研究会」の提言も内閣官房健康医療戦略室の事務局が果敢に各国との調整・説得に取り込まれたご尽力のおかげで、コミュニケにおいて数行が明記されました。

 

「我々は、インパクト投資も通じたものを含む、国際保健における持続可能な資金調達に向けた民間セクターの重要な役割を強調し、「グローバルヘルスのためのトリプル I(インパクト投資イニシアティブ)」を承認する。」(仮訳)

 

長年の日本が世界に推しているグローバルヘルス(国際保健)は、これから人口が急増するが医療アクセスなど重大な課題を抱えるグローバルサウス等の国々の課題解決の実現です。今回のG7首脳から承認された内容とは、政府の公的資金の助成に加え、民間から新たな資金を導入することにインパクト投資に対する認識を高め、好事例を共有するためのイニシアティブ(先駆的な計画)です。

 

この承認を受け、9月の国連総会ハイレベル会合に向けて同分野におけるインパクト投資の促進を呼び掛けるイニシアティブの設立への羅針盤が設置されました。ただ「悪魔は細部に宿る」と言われるように、これから好事例としてのグッド・プラクティスの収集、想定参加者(国際開発金融機関、財団、ファミリーオフィス、機関投資家、そして、スタートアップを含む企業)へのアウトリーチ、グローバルヘルスにおけるインパクト投資の測定やロジックモデルのフレームワークづくり等、イニシアティブの設立の発表に至るまで膨大な作業を成し遂げなければなりません。

 

ただ、この日本発のイニシアティブは世界のために大変意義あると、GSG (Global Steering Group for Impact Investment)/ITF (Impact Taskforce)及びビル&メリンダ・ゲイツ財団という強力な賛同者たちが協働していただけるという大変心強いスタートを切ることができました。

 

恐らく最も高い障壁は、そもそも「インパクト投資」とは何かという納得です。投資とはリスク(不確実性)対するリターン(収益性)という二次元的な価値判断が一般常識であり、それと同時に「課題解決を意図とする」インパクトという三次元的な軸を求めると、リスクが高まり、リターンが下がるという次元から俯瞰できないトレード・オフに陥ることが少なくありません。よって、多くにとって「インパクト投資」とは、「ふわっと」した概念になっているでしょう。

 

しかし、インパクトという概念は、まさに「ふわっと」した、良いことをしているという状態に甘んずることなく、的確なKPI数値を定めて設定された目標と成果を測定による企業価値の可視化です。言うは易し行うは難しでありますが、もともと課題解決に社運をかけて起業したベンチャースタートアップへの投資概念が、起業したメンバーの想いが社訓にしか残っていない上場大企業の価値にも近年、関心を寄せています。

 

そして、この1年において、日本の存在感が世界のインパクト・コミュニティで急上昇していることも実感しています。

 

その理由は「インパクト」という概念が、「新しい資本主義」の実現の下で去年の6月に閣議決定された骨太方針に掲載され、その後の様々なファローアップがあったことに間違いありません。インパクトを通じて、日本が世界に新たな存在感を示しているのです。

 

自分自身の投資界のキャリアは、外資系金融機関でデリバティブのトレーディングから始まり、利益最大化型資本主義の権化である大手米ヘッジファンドへと転身して、そこからオルタナティブ投資を促進するために独立。そして、独立したことでたどり着いたオルタナティブ(代替)とは、一般個人向けの積み立てで世代を超える長期投資を促す投資信託会社、コモンズ投信の設立でした。そして現在はアフリカ向けのインパクト投資の運用会社。&Capitalを日本企業界に支えられながら設立しています。

 

長い年月をかけて肌の感覚として痛感していることがあります。売上・利益を否定すべきではない。しかし、我々が後世に残せることは利益最大化ではなく、価値最大化であると。

 

価値とは利益でも表現できますが、課題解決も不可欠な価値であることに間違いありません。その課題解決の価値の可視化を求めているのがインパクト投資です。このような考え、世の中で普及することに我々は努めるべきではないでしょうか。


□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。
https://bit.ly/3uM0qwl

 

「論語と算盤」論語と算盤は甚だ遠くして甚だ近いもの

私は不断にこの算盤は論語によってできている、
論語はまた算盤によって
本当の富が活動されるものである

 

「論語と算盤」とは、算盤に論語を表現すべきだという解釈が一般的ですが、「と」には上位関係がなく、論語にも算盤を表現すべきだという解釈も含まれていると思います。まさに「インパクト」の概念です。「論語と算盤」など綺麗ごとで非現実的と考えるのであれば、インパクトなんて無理と考えるのは当然です。一方、「論語と算盤」は近代化日本が尊ぶべき思想と考えているのであれば、インパクトという価値判断の深化に勤めることは必然だと考えます。


「論語と算盤」この熱誠を要す

心をもって世に立つ者であったら、
すなわちそれは生命の存在である
という言葉があった、
人間は生命の存在たり得たい、
肉魂の存在たり得たくないと思う。

 

なぜ人間は自分のことを肉魂の存在だけでなく、心をもった生命であると思うのか。それは、人間しかない特長であるImagination(想像力)を活かしているからでしょう。「論語と算盤」のエッセンスとは人間力。そして、想像力とはまさに人間力の核心です。インパクトという概念を実現させるには想像力が不可欠です。SDGs達成のために必要なムーンショットとは想像力を実現させることです。最近、同じようにSDGs達成に想像力が大事であると主張する書籍を読みました。熱誠ある著者の良書でお勧めです。「脱開発と超SDGs」(著:戸田隆夫)

謹白

 

❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。

渋澤 健

 

【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他

 

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渋澤 健 (シブサワ ケン)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。

コモンズ投信株式会社取締役会長。

1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。

JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。

2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。

07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。

経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

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