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シブサワ・レター~こぼれ話~第51回「キャッシュレス化が進む中、新紙幣?」

インタビュー
配信元:NTTデータエービック
投稿:
シブサワ・レター~こぼれ話~第51回「キャッシュレス化が進む中、新紙幣?」

シブサワ・レター ~こぼれ話~

第51回「キャッシュレス化が進む中、新紙幣?」

 

日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。

第51回のテーマは「キャッシュレス化が進む中、新紙幣?」です。

 

 

 

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 

新紙幣が20年ぶりに発行されました。新千円札の肖像である医学者の北里柴三郎はサイエンスを象徴し、新五千円札の教育者である津田梅子は女性の活躍、そして、新一万円札の実業家である渋沢栄一はビジネスです。この組み合わせで、令和という新しい時代へのサステナビリティ(持続可能性)のメッセージが読み取れるのではないでしょうか。

 

ポイントは、一万円札が学問から実業へと入れ替わったことです。実態を学ぶことや問うことは極めて重要ですが、持続可能性には実装が不可欠であるということです。渋沢栄一は「論語と算盤」を提唱しました。論語とは「あるべき姿」や「理想」を示していますが、算盤はその理想を実践、つまり「形」にしたことであります。

 

算盤は、卑しい「カネ儲け」というイメージがあるかもしれませんが、誰かのニーズに応える、何かの課題を解決する、どこかのギャップを埋める、つまり価値を創造しなければお金は生じません。日本政府・日本銀行が刷ることは、お金の本質ではありません。

 

お金は価値、言い換えると「ありがとう」の連鎖によって社会に循環し、経済が成り立ちます。日本の資本主義の父と言われる渋沢栄一は、お金は「よく集め、よく散ぜよ」と主張していました。

 

新紙幣の発行による自動販売機、ATM、セルフレジなどの対応のための新しい機種への入れ替えやシステムの改修から、御祝儀の消費などの経済効果の試算もありますが、大事なのは一時的なお祭りでなく、これからの日本の新しい時代でお金を継続的に「よく散ずる」ことです。

 

対応の維持費用や目先の消費だけでは「よく散ずる」になりません。渋沢栄一が描いていた「よく散ずる」とは、未来を拓くお金の使い方であると思います。

 

新紙幣の御三方の共通点とは、日本が途上国から先進国へ向かっていたタイミングの時代の偉人であったことです。つまり、社会の様々なところで、現状維持や前例主義でなく、よりよい未来に向けて多くの先行投資が行われていたときでした。

 

今の日本の為替水準の割安感は途上国並みで推移しています。紙幣が改刷されたことのみで、為替市場において通貨への信用が高まることは、まずありません。日本が再び「途上」することによって信用を取り戻すしかないのです。令和という新しい時代では日本は途上国であるという意気込みで、よりよい未来への先行投資のため、お金を「よく散ずる」べきです。

 

そして、よりよい未来への先行投資の指針は既に出来上がっています。政府の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」です。報道機関は、全くと言っても過言でないほど注目していませんが、6月21日に閣僚決議されています。

 

今回の2024年改訂版で3年間、15名の民間構成委員の一人として討議に関わる機会をいただきました。それぞれ立場が異なるダイバーシティに富むメンバーですが、同デザインおよび計画については評価は一致していると思います。「この内容を実践できれば、素晴らしい」と。

 

私自身、40年ほど民間の立場から政府の政策方針を眺め、時には苦言を示していましたが、今ほどその内容にワクワクしたことはありません。64ページの本文、設定目標値や基礎資料集を含むと130ページの力作です。https://urldefense.com/v3/__https://tinyurl.com/2c7jydbp__;!!GCTRfqYYOYGmgK_z!8Jprz0JiLvOgFJ31a10eXBPFdQGwrytoz4dDvTdXZCOxOZl523BHKgGOJADiPWhXCo3x9MxfXJ2cB-ZejPSzpUdF8_P8_Q$

 

こんな長い文章を一般国民は、なかなか読まないでしょう。ただ、だからこそ、そこにジャーナリズムの論評の役割があるのではないでしょうか。私が内容の行間から読み取れることは、「昭和時代の繁栄を築いてくれた成功体験、お疲れ様。これから令和時代の繁栄を築いてくれる実行計画、よろしくお願いします」です。

 

言うは易く、行うは難しで、デザインや計画を実現させることは簡単ではありません。だからこそ、一万円札が「学問」から「実践」へと改刷されたことのメッセージの関連性が活きてくると言えるでしょう。また、新紙幣は日本人の細やかなデザインや複雑な計画を実現できることも見事に表しています。

 

日本の新紙幣は西洋と東洋の印刷技術の匠の結晶です。超人的に繊細な手作業のアナログとデジタルの組み合わせでもあります。透かしの肖像は、和紙の厚さを調整する匠で表現しています。それに、今回はホログラムや数字のユニバーサルデザインも取り入れています。他の国々が、「そこまでは無理」ということを日本は成し遂げているのです。そこに、新紙幣の改刷の意味があるのでしょう。

 

これからの20年間、日本の経済社会のキャッシュレス化が更に進むことは間違いなく、現金の役割は激減してくる未来があります。ただ、お金の「機能」だけでなく、そこに含まれている「価値」を持続させることは極めて重要だと思います。


□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。
https://urldefense.com/v3/__https://bit.ly/3uM0qwl__;!!GCTRfqYYOYGmgK_z!8Jprz0JiLvOgFJ31a10eXBPFdQGwrytoz4dDvTdXZCOxOZl523BHKgGOJADiPWhXCo3x9MxfXJ2cB-ZejPSzpUeKGegxtQ$ )


「論語と算盤」よく集め、よく散ぜよ

よく散ずるという意味は、正当に支出するのであって、
すなわちこれを善用することである。
良医が大手術を用いて患者の一命を救った「メス」も、
狂人に持たしめると人を傷つくる道具となる。

 

栄一は「正当に支出」する「善用」が「よく散ずる」と考えていました。つまり、「正当」や「善用」とは、他の人にも役立つということでしょう。一方「狂人」は、自分のことしか眼中にない。


「論語と算盤」よく集め、よく散ぜよ

 

よく集むるを知りて、よく散ずることを知らねば、
その極、守銭奴となるから、
今日の脊年は濫費者とならざらんことを勉むると同時に、
守銭奴とならぬように注意せねばならぬのである。

 

お金をため込むことばかりに執心する「守銭奴」にならないようと栄一は警告を鳴らしていました。もちろん乱費もダメです。ただ、お金を集めるだけでなく、社会に清く循環する原動力によって、一部の階級層だけでなく、社会のみんなが豊かになる。そんな新しい時代の日本を実現させることに尽力しました。今ここに渋沢栄一がいたら、声を上げるでしょう。「頼むからタンスに入れっぱなしにしないでくれ。ワシが暗いところが苦手じゃ」と。

謹白

❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。

渋澤 健

 

【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他

 

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渋澤 健 (シブサワ ケン)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。

コモンズ投信株式会社取締役会長。

1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。

JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。

2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。

07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。

経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

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