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シブサワ・レター~こぼれ話~第52回「株式市場大暴落でワクワクする心得」

インタビュー
配信元:NTTデータエービック
投稿:
シブサワ・レター~こぼれ話~第52回「株式市場大暴落でワクワクする心得」

シブサワ・レター ~こぼれ話~

第52回「株式市場大暴落でワクワクする心得」

 

日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。

第52回のテーマは「株式市場大暴落でワクワクする心得」です。

 

 

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 

株式市場が大暴落するときには3つのタイプの反応があると思います。A)動揺するタイプ。B)何とも思わないタイプ。C)ワクワクするタイプ。

 

タイプAは、利益に目がくらんで株式投資した人が多いでしょう。周りが株式投資で儲かっていることを聞いた、あるいはNISAという一般個人向けの税優遇の投資枠が拡大されたことで勧められて始めたようなタイプです。ただ、こちらは、まだ健全な動揺の範囲です。株式投資の初心者でなくても、株式市場の想定外の大暴落において信用買い(要は、他からお金を借りて株式を購入すること)の動揺はスケールが違います。レバレッジ(投入額に対する借入比率)によっては、投入した自己資金以上の損失を被る可能性ありますから。

 

タイプAの共通点は株式投資を「価格」というレンズでしか見ていないことにあります。自分が買った価格よりも、将来の価格が上昇していることを期待していたので、現在の価格が大暴落で下がっていたら、安静な気持ちになるわけがありません。

 

一方、タイプBの、何とも思わない理由は、そもそも株式投資をしていないからです。日本全国の大半は、このタイプに属しているでしょう。タイプAを横目で見ながら、「だから、株式投資なんてやるものではない。現預金で資産を貯めるだけで十分」という元本保証志向型です。ただ、これから預金に金利が付く時代に戻ったとしても、物価上昇の方が大きいので、実質上、自分の資産(元本)の価値が目減りしていることに気づいていないタイプです。

 

タイプBの共通点は、実はタイプAの共通点と同じです。目前の価格(金額)しか見えていないのです。もちろんタイプBが好むのは不変の価格であり、タイプAと異なります。ただ、いずれも関心事は目で見えている価格であり、価値ではありません。

 

では、なぜタイプCが株式市場の暴落でワクワク感が高まるのか。それは、価値を見ているからです。それも、目前の価値ではなく、これからの長期的な価値です。価値を感じるものを持ちたいと願うことは人類の本能です。その価値あるものの価格が下がると、もっと購入できることになります。これがタイプCのワクワク感の源泉です。

 

ただ、人それぞれ価値感は異なります。閉店間際の生鮮食品や賞味期限ギリギリの食品の値引きに喜んで購入する人もいれば、逆に避ける人もいます。一方、賞味期限などないブランド服や耐久財のセールが実施されたら、多くが駆けつけるでしょう。企業は「ゴーイング・コンサーン」、つまり継続することが前提とされており、「期限」を設定していません。そう考えると、持続可能な価値を創造している企業の購入価格である株価が、特に金利・為替などマクロ経済的な要素で、大幅に下がった状態にワクワクすることは奇妙なことではありません。

 

ただ、このワクワク感は、インデックス投資(現在にお流行りのオルカン=オール・カントリー=全世界株式指数など)では味わえないでしょう。それは、指数の価格しか見ておらず、価値創造の源泉である企業の姿が見えていないからです。また、決して「オール」ではなく、ごく一部の企業が全体のほとんどの影響を与えている実態も見えていないでしょう。そういう意味では、インデックス投資しかしていない人は市場の大幅下落に動揺が走るかもしれません。

 

16年前に仲間たちとコモンズ投信を設立した理由は、ワクワク感を日本全国の世帯に広めたいと思ったからです。価値あるものを、日本の世帯の資産形成の積み木とするワクワク感です。株式投資の源泉は企業の価値創造です。それぞれの企業には、それぞれの価値創造のストーリーがあります。その優れたワクワクする持続可能な成長ストーリーを厳選投資するのがコモンズ30ファンドです。決して、オールを目指していません。ベスト、あるいはオンリーワンです。

 

二十代~三十代の自分はマーケット部門の仕事に携わっており、市場の乱高下のジェットコースターと共に生計を立てておりました。ただ、2001年に自分が独立したタイミングと、家族のメンバーが増えていたことが重なり、新たな楽しみ、ワクワク感を見つけました。世代を超えられる持続可能な価値創造です。

 

具体的にいうと、妻と共に授かった幼い子たちの未来のチャレンジのための応援資金、加えて歳を重ねながら子供たちに伴走していく自分と妻の未来資金を、毎月コツコツと積み立てる長期投資でした。その長い旅に出航した時に気づいたことがありました。「下がっても、気持ちが良い投資があるんだ!」同じ金額を毎月投入しているので、価値あるものをもっと買えるからです。

 

その後、様々な市場「ショック」に遭遇しました。それでも、毎月、コツコツと積み立て投資を継続しています。今回も、「よしよし」という気持ちしかありません。長い人生と同じように、自然の天候の表情のように、市場も調子が良いときもあれば、悪いときもあります。いずれ再び調子が良くなって晴れたときの喜びは倍増します。改正つみたてNISA等をきっかけに株式投資を始めた方、長年、つみたて投資を実施している方であっても、本レターをお読みいただいているのであれば、是非とも、この気持ちを抱き続いていてほしいと願っています。


□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。
https://urldefense.com/v3/__https://bit.ly/3uM0qwl__;!!GCTRfqYYOYGmgK_z!733_nO6yxW15jaEtOFAvmw77NmKtkk8NJmAkeEy4Xt_h4TjdloWlIY-1OHCi_YBp4_WQEmPwwnqsgwzjiK7V9KW4eOERqA$ )


        「論語と算盤」大丈夫の試金石

               足るを知りて分を守り、
            これはいかに焦慮すればとて、
 天命であるから仕方がないとあきらめるならば、
             いかに処し難き逆境にいても、
          心は平かなるを得るに相違いない。

 

自然的な逆境は大丈夫の試金石であると栄一は考えていました。市場は人為的な存在ですが、その市場を形成するのは理屈や感情、欲望や恐怖という人の自然的な現象と言えるでしょう。「心が平かなる」とは、大丈夫、大丈夫と思うことです。自然的な逆境であれば、豪雨はいずれ止んでお日様が見えてきます。酷暑もいずれ和らいで爽やかな風が吹いてきます。そんなときへと備える心構えがワクワク感です。


     「渋沢栄一・訓言集」処事と接物

           逆境に処するにあたりては、
  まず天命と諦め、勉強忍耐もって
おもむろに来るべき運命を待つがよい。

 

勉強とは、つまり価値の本質の追求することだと思います。点数は勉強の成果を示しますが、点数を獲得することが勉強ではありません。忍耐力も逆境に接する際には大事ですが、ただただ我慢するという側面だけでなく、「おおむろに来るべき」にワクワクすることが忍耐力につながり、忍耐力が良き運命へとつながるということでありましょう。

                                   謹白

❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。

渋澤 健

 

【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他

 

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渋澤 健 (シブサワ ケン)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。

コモンズ投信株式会社取締役会長。

1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。

JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。

2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。

07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。

経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

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