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シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第50回「平和構築のために資本主義を取り戻そう!」

インタビュー
配信元:NTTデータ エービック
投稿:
シブサワ・レター ~こぼれ話~ 第50回「平和構築のために資本主義を取り戻そう!」

シブサワ・レター ~こぼれ話~

第50回「平和構築のために資本主義を取り戻そう!」

 

日本資本主義の父 渋沢  栄一 から数えて5代目に当たる渋澤 健が、世界の経済、金融の “今” を独自の目線で解説します。

第50回のテーマは「平和構築のため資本主義を取り戻そう!」です。

 

 

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 

交戦による一般市民の流血が絶えない昨今。地元産官学の共同体であるOYW長崎協議会の呼び掛けで、5月中旬にNagasaki Peace-preneur Forumが開催されました。PeaceとEntrepreneurの組み合わせの造語で、平和をテーマに世の中を変える事業や活動を起こす人たちを後押しする活動です。英国で設立され、世界190カ国以上から若い次世代リーダー達が集まる世界最大級の国際プラットフォームであるOYW(One Young World)とのコラボレーションで実現しました。 

 

前夜祭のオープニングセッションでは、中東から参加した若い女性が登壇。厳しい表情と目線で熱く語り始め、「大人たちは、私たちの世の中、未来を4つのCでめちゃめちゃにしている」と怒りの声を上げました。「Conflict(紛争)、Climate(温暖化)、Corruption(汚職)、そしてCapitalism(資本主義)だ!」と。ビジネスの欲望により、人々は争う、気候変動を引き起こす、不正が生じるという持論を展開しました。

 

いやいや、資本主義が無ければ貴女は飛行機に乗って今ここに立っていないし、企業スポンサーが不在であれば、このフォーラムは開催できていないと反論の言葉が浮かびましたが、彼女のリアルな怒りを実感しました。

 

およそ160年前に、ある青年も怒っていました。もっと良い世の中、もっと良い未来があるはずだ。一部の階級だけでなく、努力すれば誰もがより報われ豊かな生活を実感できるフェアな国を形成すべきであると身を起こしました。現在、「日本の資本主義の父」と言われ、来月から発行される新一万円札の肖像となる渋沢栄一です。

 

栄一は、一滴一滴が大河になって日本の新しい時代を導く「合本主義」の可能性を見出し、およそ500の企業の設立に関与しました。リスクを負う株主や事業を展開する企業の利益や人々の欲望を否定したことはありません。ただ一事業主、一株主の立場から、常に何が国の発展につながるのかを俯瞰しながら自ら事業に邁進しました。

 

栄一の怒りの根源は現状に満足していないこと。日本はもっと良い国になれるはずだ、もっと良い会社、もっと良い経営者、もっと良い市民になれる。言い換えると事なかれに堕ちること無き主体性ある未来志向でした。

 

資本主義に利己的な、近視眼的な問題が様々あることは確かです。ただ、資本主義が存在しているからこそ、見たい未来の価値創造のために先行投資ができるのです。

 

一方、社会主義とは原資や価値を再分配する思想です。分配の原資が足りない場合は未来世代から借りて現代世代にばら撒く愚策に陥りやすく、社会主義は超近視眼的であり新しい価値の創造は後回しです。社会主義は平等性の現状を維持することを主としますが、持続可能性には新たなイノベーションやクリエーションを促進する未来志向が必要。そのためには資本主義というエンジンが不可欠です。

 

資本主義の要となる市場経済は批判を呼びますが、期待と失望を値に織り込む調整機能が市場メカニズムです。市民の期待と失望を票に織り込む民主主義を尊びながらも、資本主義を否定するロジックがわかりません。資本主義の課題を痛烈に批判するのであれば、民主主義の課題へも目を向けるべきです。

 

ただ、民主主義のアップデートが現在では必要のように、資本主義のアップデートが必要であることも確かです。岸田政権の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」の内容は討議と最終調整を経て、今月中に正式に決議される予定です。

 

私は日本政府の政策方針を40年近く、民間の市場参加者として眺めており、90年代終わりの頃の金融危機に対して政府の政策方針(の無さ)に焦りと怒りを感じ、50名の政治家に「市場からの提言」を、毎月送り始めました。本レターの執筆活動の起源です。

 

時代の流れの中、現在ほど包括的に、新しい時代に重要な指針が明確に政策方針に示されているのは初めてであると、潮目の変化を感じています。現在の政権が示している方針の全て実現できれば、日本は新しい時代を導くことができるに違いないとワクワクしているぐらいです。

少なくとも、2年前の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画初版」で明記された内容によって、見たい未来を共有する同志の輪が広まっていることを実感しています。なぜ冒頭に紹介した若い女性が、あれほど怒っているのか。それは、資本主義が取り残した課題があまりにも多いからです。資本主義は、人の尊厳を損なっていると彼女は思っているからです。2022年、文藝春秋の2月号で岸田総理は『私が目指す「新しい資本主義」のグランドデザイン』という題名の寄稿で以下を示されました。

 

「市場の失敗がもたらす外部不経済を是正する仕組みを、成長戦略と分配戦略の両面から、資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす便益を最大化すべく新しい資本主義を提唱していきます。」

 

「私の新しい資本主義では、その鍵を「人」すなわち人的資本に置くことにします。」

 

この2年間で見たい未来を共有する同志の輪が広まっている理由は、「新しい資本主義のグランドデザイン」で「インパクト」と言う概念が政府の総合的な経済政策の方針で明記されたからです。

 

「従来の「リスク」、「リターン」に加えて「インパクト」を測定し、「課題解決」を資本主義におけるもう一つの評価尺度としていく必要がある。」

【新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2022年6月】

 

我々多くの同志が見たい未来とは、そう、「インパクト・エコノミー」です。外部不経済を取り残すことなく埋め込んで、人の存在を尊ぶ、価値最大化を目指す経済です。

 

Nagasaki Peace-preneur Forumが開催された翌週。東京で金融庁主催の「インパクト・コンソーシアム総会フォーラム」、SIMI(社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ)/SIIF(社会変革推進財団)共催の「Social Impact Day」、東京都主催の「SusHi Tech Tokyo」が立て続けに開催され、まさにインパクト・ウィークでした。

 

国内の横断的な分野から大勢の参加者を動員させただけでなく、世界からインパクト投資や企業価値におけるインパクトを可視化する取り組みの第一人者や大御所たちが訪日・オンラインで登壇しました。インパクトを通じて、世界が日本に一目置いているのです。

 

先ほどの2022年の文藝春秋の寄稿で岸田総理は以下のお考えも示されました。

 

「私は、世界的課題となっている分断や格差を乗り超える資本主義をわが国で実現したいと考えています。かつての福祉国家、新自由主義といった資本主義に対する深化の動きは、いずれも欧米発の動きでしたが、今回の深化については、わが国が世界をリードしたい、そして、できると考えています。」

 

このような志、そして、政策施行の実績もある政権への支持率の低さ。WHY JAPANESE PEOPLE!? メディア各社の皆さん。政局を煽ることよりも、この根本的な問いを促すことがジャーナリズムの責務ではないでしょうか。


□ ■ 付録: 「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
(『論語と算盤』経営塾オンラインのご入会をご検討ください。
https://urldefense.com/v3/__https://bit.ly/3uM0qwl__;!!GCTRfqYYOYGmgK_z!_-SlA6gZqW3KzMMEjeDRrzM0bAIQf5SVDEgOCVHCITqR-SW9p01hAD03QWlv5G89KQ3eYpTJ8B_Kzk7SufIBdWhngs-Lww$ )

 

「渋沢栄一訓言集」実業と経済

信用は実に資本であって
商売繁栄の根底である。

資本主義への怒りとは、要は資本主義によって大勢のより良い明日を実現できるという信用が失われているという実態でありましょう。取り残されれば、当然ながら、そこには怒りが芽生えます。米国ではESGが一部の州で違法になっているという現状も、EとGに比べてSが取り残されていることへの怒りが政治の燃料になっているからだと思います。資本主義の、商売の繁栄の根底には、やはり信用という資本が不可欠です。


「渋沢栄一訓言集」実業と経済

商売人はただ銭儲けさえすればよいと思うのは
大いなる間違いである。
商売人といえども、国家につくすべき程度においては
官吏、軍人その他人びとと差異はないのである。

 

では、なぜ信用を失うのか。端的に言えば、それは自分のことしか考えていないということでありましょう。自分のことは、もちろん大事です。ただ、それだけでは信用創造に繋がらず、価値最大化にもなりえません。

謹白

❑❑❑ シブサワ・レターとは ❑❑❑
1998年の日本の金融危機の混乱時にファンドに勤めていた関係で国会議員や官僚の方々にマーケットの声を直接お届けしたいと思い立ち、50通の手紙を送ったことをきっかけとして始まった執筆活動です。
現在は今まで色々な側面で個人的にお知り合いになった方々、1万名以上に月次ペースにご案内しています。
当初の意見書という性格のものから比べると、最近は「エッセイ化」しており、たわいない内容なものですが、私に素晴らしい出会いのきっかけをたくさん作ってくれた活動であり、現在は政界や役所に留まらず、財界、マスメディア、学界等、大勢の方々から暖かいご声援に勇気づけられながら、現在も筆を執っています。

渋澤 健

 

【著者紹介】
渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。コモンズ投信株式会社取締役会長。1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他

 

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このコラムの著者

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渋澤 健 (シブサワ ケン)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役。

コモンズ投信株式会社取締役会長。

1961年生まれ。69年父の転勤で渡米し、83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。

JPモルガン、ゴールドマンサックスなど米系投資銀行でマーケット業務に携わり、96年米大手ヘッジファンドに入社、97年から東京駐在員事務所の代表を務める。

2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。

07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信㈱に改名し、会長に就任)。

経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact運営委員会委員、等を務める。著書に『渋沢栄一100の訓言』、『人生100年時代のらくちん投資』、『あらすじ 論語と算盤』他。

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