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みんかぶプレミアムとは今回は、「つみたてNISA」と同様に、積立投資という「お金の増える仕組み」を活用した税制優遇制度の「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を取り上げてみたいと思う。
この2つの制度については、これまで多くの専門家が比較解説を行ってきている。関連する書籍や雑誌なども数多く出版されているので、目にされたことがある方もいらっしゃることだろう。
「つみたてNISA」と「iDeCo」、この2つの制度は、どちらも定時定額の積立投資、いわゆる「ドルコスト平均法」を基本にしていて、また投資対象となる主な運用商品が、どちらも投資信託であるという点が共通している。さらに、運用期間中の運用益や譲渡益(売却益)が非課税という点も同じなので、確かにかなり類似している制度ということはいえるだろう。
しかし筆者は、この2つの制度については、どちらを選べばいいか、という論点で語るべきではない、と考えている。それぞれ、目的の異なる制度であり、似てはいるが似て非なるもの、として扱うべきなのではないかと思うのだ。
なぜなら、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、あくまでも公的年金制度を補完する私的年金制度の一つであるから、ということだ。
人生100年時代となった今、退職後の長い余生をより豊かで安心して暮らしていくために、老後の自分自身への仕送りという位置づけで、「iDeCo」は考えるべきだろう。
日本の年金制度が3階建てと言われるようになって久しい。
ご存知のように、その1階部分は20歳以上の全ての国民が加入する「国民年金」だ。そして2階部分といわれるものが、「厚生年金保険」である。
そして3階部分だが、それは、かつては全盛だった「税制適格退職年金」が廃止となったことから、代わって、「iDeCo」を含む「確定拠出年金」(DC)が、「確定給付企業年金」(DB)とともにその一角を担っているのである。
廃止となった「税制適格退職年金」は、その名の通り、退職金を分割して支払う「退職年金」であった。それに代わる形で2001年に登場した年金制度が「確定拠出年金」だ。
その「確定拠出年金」の目的は次の通りとされている。
それは、「国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与する」(確定拠出年金法第一条)ことである。
そして「iDeCo」とは、「個人型」の「確定拠出年金」のことである。
これは「企業型」と異なり、まさに加入者自らの努力によって、老後のための資金を確保するための制度なのだ。老後の自分への仕送りという例えは、このことからもお分かりいただけるだろう。
一方、「つみたてNISA」はどうだろうか。
「つみたてNISA」は、2018年にスタートしたが、2017年に公表された金融庁の資料「つみたてNISAについて」によれば、「家計の資産形成の促進の取組み」の中の1つとして創設された。
「家計による少額からの長期・積立・分散投資を税制面から促進」するために生まれた制度なのである。
確かに「つみたてNISA」も、老後のための資産形成のために使うことも可能な制度である。
岸田首相も、9月のニューヨーク証券取引所における講演で、「老後のための長期的な資産形成を可能にするには、恒久化が必須だ」と訴えていた。
しかし、「つみたてNISA」はあくまで「家計の資産形成」が本来の目的であり、自分自身の老後の資金確保に限定した「iDeCo」とは、制度本来の趣旨がやや異なるといえるだろう。
これらに鑑みると、自ずと「つみたてNISA」と「iDeCo」の利用法は違ってくるはずだろう。
運用期間中の非課税という点や、毎月一定額の積立投資という点が同じであっても、さらに主たる投資対象が投資信託という点が同じであっても、両者を同じ土俵で論ずることは適切ではない、と思うのである。
「iDeCo」はあくまで、私的年金制度なのだ。つまり老後のための制度なのである。それは、「iDeCo」が、原則として60歳まで引き出すことができない点からも明白だ。
ここが「つみたてNISA」と大きく異なる点である。
「つみたてNISA」の場合、資産形成の目的は様々だろう。決して老後資金の確保に限定されているわけではない。従って、個々の資金需要に応じて、資金の引出しを行えばいい。
しかし、「iDeCo」の場合、資金を引き出せるのはあくまでも60歳以降である。
このように、換金性に関しては、2つの制度に決定的な違いがある。
これ以外にも、制度目的の違いに応じて、実は大きな違いがある。
まず1つは、運用商品のラインナップである。
「iDeCo」の運用商品は、2018年5月にその義務が撤廃されるまで、商品ラインナップに必ず一つ以上の元本確保型商品を提供する義務が、「iDeCo」の運営管理機関(金融機関)に課せられていた。
この義務はその後、「iDeCo」加入者の分散投資を促すため、提供義務から労使の合意に基づく提供へと、変更された。しかし、制度が始まった当初は、運用益非課税という税制優遇がありながらも、運営管理機関は元本確保型商品を商品ラインナップに必ず含める必要があったのだ。現在も多くの金融機関が、「元本確保型」を商品ラインナップに含めている。
このこと自体も、「iDeCo」という制度の性格を表しているといえるだろう。
また、運用商品である投資信託自体をみても違いがある。
前回まででみてきたように、「つみたてNISA」の対象商品は、必ず株式が含まれている投資信託である。
しかし、「iDeCo」にはそういう条件はなく、債券だけに投資するファンドも多く含まれている。
老後の資金として積み立てている「iDeCo」においては、債券だけで運用するような保守的な運用を行いたいというニーズも当然あるだろう。
ここでも「iDeCo」が、老後のための安定的な資金確保を目的とした制度であることが分かる。
また、「つみたてNISA」は、金融庁の定める条件をクリアしている投資信託が対象となっている。
現在、対象商品はETFを除くと208ファンドだ(2022年9月29日現在)。そして金融機関は、この208ファンド全てを取り扱うこともできる。しかし、実際には、取扱いファンドの数は金融機関によって大きく異なっている。
たとえ取り扱い本数は異なっていても、どの金融機関も金融庁が指定する上記208ファンドの中からしか、ファンドを選ぶことはできない。
それに対し「iDeCo」の場合、厳密にいうと、運用商品は投資信託に限定されている訳ではない。
ただし、確定拠出年金法施行規則第19条において、運用方法の選定基準が、「高齢期の所得の確保のため、長期的な観点から」、「資産価格の変動による損失の可能性について、実施事業所に使用される企業型年金加入者の集団の属性等に照らして、許容される範囲内であること。」などと定められている。
これらを受け、長期・積立・分散投資に適している投資信託が選ばれているのだろう。
また各金融機関が投資信託を選ぶ際の条件も細かく設定されているわけでもない。
極端なことをいえば、法令の選定基準に則っていれば、約6,000本近くある投資信託の中から、何を選んでも問題はないということになる。そして2023年には、各金融機関が提示できる「iDeCo」の商品ラインナップの上限数が、元本確保型を含め35商品に制限されることになる。
この結果、各金融機関が提示する「iDeCo」の商品ラインナップには、少なからず差が出てくるのだ。
そのため「iDeCo」の場合は、各金融機関の商品ラインナップについて、その中身をよく調べる必要があるだろう。
そして、金融機関によっては、「運営管理機関手数料」というコストを毎月徴収するところもある。「iDeCo」を始める際は、こういう余計なコストがかからない金融機関を選ぶべきだ。
そして、「つみたてNISA」と「iDeCo」の違いは、出口のところにもある。
出口とは、「つみたてNISA」では、20年間(20年間に限定されないが)運用してきた投資信託を換金するときのことである。
そして「iDeCo」では、積立運用してきた掛金を60歳以降に「老齢給付金」として受取る際のことである。
「つみたてNISA」では、年間投資枠の40万円を20年後に換金する際、その40万円がどれだけ増えていても、その運用益に対して課税されることはない。投資信託を解約し換金した場合、全額が自分の口座に入る。
それに対し、「iDeCo」の場合は少し異なってくる。
たとえば、月2万円の掛金拠出で、ある投資信託に10年間投資したとして。「iDeCo」への加入期間が10年経過し、60歳に到達したとしよう。
その場合、投資元本は総額240万円だが、これがどれだけ増えていたとしても、その投資信託を売却する際に、その運用益には税金はかからない。この点は「つみたてNISA」と同じだ。
しかし、その資金を「老齢給付金」として「一時金」や「年金」で受け取る場合には、注意が必要だ。
税制優遇制度があるとはいえ、非課税ではなく原則として税金がかかるのだ。
「iDeCo」の「老齢給付金」を「一時金」として受け取る場合は、退職所得と同じ扱いになるので、「退職所得控除」が使える場合もある。また「年金」で受け取る場合は、「公的年金等控除」が使える場合もある。いずれも、他の退職所得や他の公的年金の額によって、その控除が使えないこともあるので、注意が必要だろう。
以上のように、「つみたてNISA」と「iDeCo」は、投資信託への積立投資により資産形成を図る、という意味では、とても良く似た制度といえる。
しかし、その制度の目的はそもそも違っていて、制度の仕組み、商品ラインナップ、金融機関の選び方、そして税金の扱いにも違いがある。
そういう意味で、「つみたてNISA」と「iDeCo」を比較することには、あまり意味がないと思うのだ。
筆者は、資金に余裕がある人は、2つの税制優遇制度を有効活用するべく、両方始めることをお薦めしたい。
どちらか一つしかできないという方は、ただ一点、60歳までに資金を引きだす可能性の有無、を基準に判断すればいいだろう。60歳まで、積立てている資金に決して手を付けない、という方は「iDeCo」を始めるべきだろう。
一方で、少ない資金でも資産形成を図りたい、そしてお金が必要となる際には換金したい、とお考えの方は、「つみたてNISA」を始めてみてはどうだろうか。
60歳まで換金できない、という「iDeCo」の特徴は、実は老後の資金確保という点で、最大のメリットだと考えている。
一方で、誰もが少額から始められる「つみたてNISA」は、利便性の高い資産形成のツールとして、より多くの方に利用してもらいたい、とも思うのである。
以上、「つみたてNISA」と「iDeCo」について筆者の考え方を述べてきた。
参考になれば幸いである。
なお、今回をもって『100円で資産運用⁉本音の投資信託』は終了となります。
投資信託という金融商品をもっと知っていただきたい、という想いから、『読んでみよう、投資信託のトリセツ』(全17回)を書かせていただき、また投資初心者の方々に是非初めの一歩を踏み出していただきたく、『「つみたてNISA」のタテヨコナナメ』(全18回)を書かせていただきました。
これらの記事が、皆様の資産形成の実践に少しでもお役立ていただけると幸いです。
長きに亘りご愛読いただき、誠にありがとうございました。
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配信元:NTTデータエービック
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