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みんかぶプレミアムとは今回は「ファンドの費用」のうち、「運用管理費用(信託報酬)」の続きからとなる。
前回は、「運用管理費用(信託報酬)」は費用の中で最も重要な費用であり、毎日間接的に負担、つまり信託財産から控除されている、と説明した。
今回はもう少し詳しくみていこう。
まず、「運用管理費用(信託報酬)」という表記について、説明する。
「投資信託及び投資法人に関する法律」では、その第四条(投資信託契約の締結)において、「投資信託約款」(投資信託契約の各条項の内容)に記載すべき事項として、第四条二項十一号に「受託者及び委託者の受ける信託報酬その他の手数料の計算方法並びにその支払の方法及び時期に関する事項」が挙げられている。
ここでは「信託報酬」という用語が登場する。
しかし、法律には「運用管理費用」という用語は見当たらない。どういうことかというと、この「運用管理費用」という用語が登場してから、実はまだそれほど経っていないのだ。
「運用管理費用」という用語は、2012年に金融庁の「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキンググループ」が出した最終報告を受け、よりわかりやすい表記に見直すことになり、投信協会において検討され採用されたものである。
投資家(受益者)が負担するものであるから、「報酬」ではなく「費用」と表記した方が、読み手の投資家(受益者)にとってはしっくりくるだろう。
そして、その「運用管理費用(信託報酬)の欄には、次の通り、書かれている。
「信託報酬とは、投資信託の運用・管理にかかる費用のことです。日々計算されて、投資信託の基準価額に反映されます。なお、毎計算期間の最初の6ヵ月終了日および毎計算期末または信託終了のとき「ひふみプラス」の信託財産から支払われます。」
この部分では、「なお」以降が分りにくいかもしれない。ただしこれは、投資家(受益者)には直接関係することではない。
どういうことかというと、その直前の文章にあるように、信託報酬は投資信託の会計上、「日々計算されて、投資信託の基準価額に反映」しているのだが、実際に信託財産から委託会社や受託会社に支払いが行われるのは、最初の6か月終了日以外は、毎計算期末、つまり決算の時、或いは信託終了のとき、つまり償還の時であるという説明なのである。
これはあくまで投資信託の会計上の話であり、投資家(受益者)にとっては、日々計算され公表される基準価額は、信託報酬控除後のものであるということを押さえておきたい。
次に、「また、ひふみプラスは、純資産総額が一定金額に達すると、一定金額を超えた部分に対して信託報酬が逓減される仕組みとなっています。」について説明しよう。
これは、「ひふみプラス」のファンドの規模を表す純資産総額が、500億円を超えると、超えた部分の運用管理費用(信託報酬)の料率(税抜)が低くなる仕組みである、ということの説明である。
これは、投資家(受益者)にとってはプラス、つまり負担が少なくなる話である。1月末現在の「ひふみプラス」の純資産総額は、下記の通り、約4,455億円である。
2021年1月末現在(ひふみプラス「月次運用レポート」より抜粋)
ということは、純資産総額約4,455億円のうち、500億円相当分には0.98%の運用管理費用が、そして500億円超1,000億円以下の500億円相当の部分には0.88%が、1,000億円超4,455億円までの3,455億円相当の部分には0.78%の運用管理費用が適用されていることになる。
1月末時点の純資産総額をもとに、運用管理費用(信託報酬)をざっくり計算してみると、平均で約0.814%程度と考えられる。税込でも約0.90%程度なので、最近のアクティブ運用ファンドの運用管理費用(信託報酬)水準としては、リーズナブルな水準と言えるかもしれない。
運用管理費用(信託報酬)の欄の中にある表には、委託会社、販売会社、受託会社がそれぞれ受け取る料率、いわゆる運用管理費用(信託報酬)の配分が掲載されている。そして、各会社の役務内容も記載されている。
これらは、何度も引用している投資信託協会の「交付目論見書の作成に関する規則」や「同細則」に規定、もしくは例示されている内容である。
このうち、私がやや説明不足だと感じるのは、委託会社の「委託した資産の運用の対価」という部分である。この表現は、投資信託協会の「細則」に例示されているものであるが、委託会社によっては、別の説明をしている会社もある。
例えば、業界最大手の投資信託運用会社である野村アセットマネジメント株式会社(以下、野村AM)では、委託会社の役務について、次のような説明をしている。
「ファンドの運用とそれに伴う調査、受託会社への指図、法定書面等の作成、基準価額の算出等」(「グローバルESGバランスファンド」交付目論見書より抜粋)
どうだろう。この説明の方が、委託会社の役務をより分かりやすく詳細に書いていると言えないだろうか。
「ひふみプラス」では、投資信託協会の「細則」の例示を使用して説明しているので、その点、何ら問題はない。
ただ、野村AMの説明に出てくるような役務の対価は、「ひふみプラス」の説明の「委託した資産の運用の対価」の中に含まれているのだろうか。気になるところだ。運用管理費用(信託報酬)ではなく、別の項目でそれらの費用を徴収している可能性はないのだろうか。
結論から言えば、「ひふみプラス」の委託会社の役務の内容も、実は野村AMと同じ内容ではないかと考えていいだろう。
その理由は、この「運用管理費用(信託報酬)」の説明の下にある、「監査費用」や「その他費用・手数料」を見てみると、そこには、「法定書面等の作成、基準価額の算出等」という費用の説明が明示されていないからである。
「法定書面の作成」や「基準価額の算出等」について、野村AMでは委託会社の役務として説明されているが、実は、それらを「その他費用・手数料」の部分に別途記載して、追加の費用としている委託会社もあるのだ。
つまり、「運用管理費用(信託報酬)」とは別に、「法定書面の作成」や「基準価額の算出等」の費用を、投資家(受益者)に負担させている委託会社があるということなので、注意が必要だ。これについては後述しよう。
次の欄は、「監査費用」となっている。
「監査費用」とは、投資信託に目論見書制度が導入されたことに伴い、投資信託の財務諸表について監査証明が必要になったことから、金融ビッグバンのときに新たに設けられた費用である。投資信託説明書(交付目論見書)には付いていないが、より詳細な請求目論見書には、監査法人により行われた監査の「監査報告書」が添付されている。
「ひふみプラス」では、その「監査費用」に関して、一つの項目として説明している。
実は、こういう表記の仕方は珍しい。多くの委託会社は、次の「その他の費用」の中で「監査法人に支払うファンドの監査の費用」などと説明しているからだ。
しかも、年間の監査費用の上限額(88万円)を明示している。監査費用の料率でさえ明示していない委託会社が多い中で、「ひふみプラス」では、料率に加え、金額の上限額を示しているのである。
料率は年間0.0055%であり、2021年1月末の純資産額で計算すると2,000万円以上の金額になるところを、上限額88万円としているのである。
考えてみると、とても合理的なことのように思う。この88万円という金額は、純資産総額160億円に相当する額となっている。
確かに純資産総額が大きくなったからといって、財務諸表の分量が何十倍、何百倍になる訳ではないだろう。
この金額は変更になる可能性もあると、断り書きが書いてあるが、今後、どうなっていくのかには注目しておきたい。
少し長くなったので、次の「その他費用・手数料」については、次回としよう。
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土ノ江 健人
長年、投信会社で、ファンド運用からファンド企画・管理、マーケティング等の投信業務に携わる。投信会社退職後は、それまで培った知識と経験、豊富な人脈を生かし、ファイナンシャル・プランナーとして今後、資産形成の中核となる投資信託のさらなる普及・拡大を目指して多方面で活躍中。
配信元:NTTデータエービック
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